産業医には常勤の産業医である専属産業医と、非常勤の産業医である嘱託産業医の2種類があります。
そのうち、多くの事業場で選任されているのが非常勤の産業医である嘱託産業医です。
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この記事では、嘱託産業医について、業務内容、選任義務、報酬相場、専属産業医との違い、選び方のポイントまで、2026年最新の情報をもとに保健師が詳しく解説します。
目次
嘱託産業医とは?非常勤産業医の基本を解説
嘱託産業医とは月に1回~数回事業場に訪れる非常勤の産業医です。
一般的に50人~999人までの事業場で嘱託産業医は選任され、1,000人を超える事業場になると専属産業医の選任が義務となります。
ただし、例外として有害業務を取り扱う事業場では、500人以上から専属産業医を選任する必要があります。
産業医は医師の資格を持っているため、多くの嘱託産業医は病院などで働きながら、企業と業務委託契約を結び産業医活動をしています。
嘱託産業医の選任義務|常時50人以上の事業場が対象
労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を使用する事業場には、産業医の選任義務があります。
事業場の規模によって、選任すべき産業医の種類が変わります。
| 事業場の規模 | 必要な産業医 |
| 50人以上999人以下 | 嘱託産業医(非常勤)でOK |
| 1,000人以上 | 専属産業医(常勤)が必要 |
| 有害業務を扱う500人以上の事業場 | 専属産業医(常勤)が必要 |
選任義務に違反した場合、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金が科される可能性があります。
また、産業医を選任した後は、選任から14日以内に労働基準監督署へ「産業医選任報告書」を提出する必要があります。
嘱託産業医の業務内容とは?
嘱託産業医の業務内容は労働安全衛生規則にて以下のように定められています。
(産業医及び産業歯科医の職務等)
第14条 法第13条第1項の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げる事項で医学に関する専門的知識を必要とするものとする。
1 健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
2 法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項及び第66条の8の4第1項に規定する面接指導並びに法第66条の9に規定する必要な措置の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
3 法第66条の10第1項に規定する心理的な負担の程度を把握するための検査の実施並びに同条第3項に規定する面接指導の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
4 作業環境の維持管理に関すること。
5 作業の管理に関すること。
6 前各号に掲げるもののほか、労働者の健康管理に関すること。
7 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。
8 衛生教育に関すること。
9 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。
出所:労働安全衛生規則
具体的には以下の業務を実施します。
・健康診断の事後措置
・保健指導
・(安全)衛生委員会への参加
・ストレスチェックの実施
・高ストレス者への面談
・長時間労働者への面談
・健康教育・労働衛生教育
・情報収集と勧告 など
これらの業務を嘱託産業医は月に数回の訪問中に実施しなくてはいけません。
業務内容が多岐にわたるため、限られた訪問時間では実施できない業務が出てくる場合は、追加訪問や訪問時間の延長などをする必要があります。
嘱託産業医を選任するメリット・デメリット
非常勤の産業医である嘱託産業医にはどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
それぞれ解説します。
嘱託産業医を選任するメリット
嘱託産業医を選任するメリットとしては、コストの低さが挙げられるでしょう。
嘱託産業医は契約によって訪問回数に抑えることが可能なため、コストの調整が容易です。
しかし、産業医の実施すべき業務が行われていないにもかかわらず訪問回数や時間を抑えてしまうと、労災につながる可能性があるため注意が必要です。
もうひとつのメリットとして、選任の自由度があがる点があります。
嘱託産業医と専属産業医を比べると、嘱託産業医の数が圧倒的に多いため、自社にあった産業医を選任しやすくなります。
嘱託産業医を選任するデメリット
嘱託産業医を選任する最大のデメリットは急な対応ができない点にあるでしょう。
労働者の急な不調が起こっても、嘱託産業医は病院などに勤務している場合が多いため、急に対応することはできません。
産業医にもよりますが、事前に決められた訪問日以外に追加訪問をお願いする場合、スケジュールを合わせるのに苦労することが多いかもしれません。
また、最初に契約を結ぶ際にも、現在勤務している病院の休みなどの関係で、訪問日が限定される場合が多いでしょう。
嘱託産業医と専属産業医の違い
非常勤の産業医である嘱託産業医と異なり、事業場に常勤しているのが専属産業医です。
まず大きな違いとして常勤と非常勤の違いがあるのですが、そのほかにはどんな違いがあるのでしょうか
企業に常勤する「専属産業医」とは?
企業に常勤する専属産業医は、事業場の人数が1,000人を超えると選任の義務が発生します。
例外として、有害業務に従事する事業場では500人を超えた時点で専属産業医の選任が必要です。
専属産業医は、一般的に平均して週3.5日~4日事業場に出勤して、健康管理室などで産業保健業務に従事します。
また、専属産業医の条件として選任されている事業場が「主なる勤務先であること」が定められています。
専属産業医については以下の記事で詳しく解説しています。
嘱託産業医と専属産業医の報酬相場
嘱託産業医と専属産業医では大きく報酬が異なります。
嘱託産業医の平均的な報酬は、月1回の訪問で60,000円~200,000円です。
しかしこれはあくまでも平均であり、嘱託産業医の報酬は訪問時間や訪問回数、業務内容、地域、産業医の経験、実績などによって大きく変動します。
詳しい料金については、一度問い合わせをしてみるのが確実でしょう。
一方で、専属産業医の報酬は、週3.5~4日の出勤で年1,000~1,500万円となっています。
嘱託産業医と比べて圧倒的に高額です。
専属産業医についても嘱託産業医と同様に、選任する際の条件によって大きく報酬が変動します。
契約方法の違いについて
嘱託産業医と専属産業医の大きな違いのひとつに契約方法があげられます。
嘱託産業医との契約ではほとんどの場合、間に産業医紹介サービスが入るため、業務委託契約を結ぶことになります。
そのため、訪問回数や訪問時間などによって、報酬もある程度は形態化しています。
しかし、専属産業医は企業と産業医との間で直接雇用契約を結ぶ場合がほとんどです。
正社員として雇用されることはほぼないものの、契約社員として雇用契約や顧問契約を結び産業医の業務を行います。
そのため、報酬も企業と産業医の話し合いによって決定されます。
嘱託産業医の選び方|失敗しない5つのポイント
自社にあった嘱託産業医を選ぶために、以下の5つのポイントを確認しましょう。
1. 業種・規模との相性
自社の業種や規模に対応した経験があるかを確認します。
2. 専門分野
メンタルヘルス、復職支援、健康経営など、自社の課題に強い専門領域を持っているかも重要です。
3. 訪問頻度・対応時間の柔軟性
急な対応や追加訪問にどこまで応じてもらえるかは、いざというときに大きな差になります。
4. 保健師など産業保健スタッフとの連携体制
産業医単独ではなく、保健師など産業保健スタッフとチームで支援してくれる体制があるかを確認しましょう。
5. 紹介後のフォロー体制
選任後のサポートや、産業医交代時の対応がどうなっているかも事前に確認しておくと安心です。
自社で5つのポイントをすべて確認しながら嘱託産業医を探すのは大変です。
そのため、嘱託産業医を選任する際は、産業医紹介サービスを利用するのがおすすめです。
産業医紹介サービスでは、登録された多くの嘱託産業医のなかから、企業にあった産業医を選任できます。
また、間に入って契約を行ってもらえるため、特別な知識も必要ありません。
多くの産業医紹介サービスでは、選任後のフォローまで行っているため、もしトラブルがあった際にも安心です。
「さんぽみち」運営元であるドクタートラストは業界トップクラスの産業医登録者数を誇り、産業保健に精通したスタッフが企業の要望を丁寧にヒアリングすることで、企業にあった産業医の選任をアシストします。
嘱託産業医を探す際にはお気軽にお問合せください。
嘱託産業医の契約から選任までの流れ
嘱託産業医を契約する流れは、以下のステップで進みます。
1. 産業医紹介サービスへの問い合わせ・要望ヒアリング
業種・規模・希望する産業医像などを共有します。
2. 産業医候補者の紹介
紹介サービス側が複数の候補者を提示します。
3. 面談・条件のすり合わせ
訪問頻度・業務内容・報酬などを確認します。
4. 業務委託契約の締結
紹介サービスを介して契約を結びます。
5. 労働基準監督署への選任報告
選任から14日以内に「産業医選任報告書」を提出します。
問い合わせから選任完了までは、おおむね1〜2カ月が目安です。
急ぎの場合は、即日対応可能な紹介サービスを選ぶとよいでしょう。
よくある質問(Q&A)
Q1. 嘱託産業医とは何ですか?
嘱託産業医とは、月に1回~数回事業場に訪れる非常勤の産業医です。多くの嘱託産業医は病院などで働きながら、企業と業務委託契約を結び産業医活動をしています。一般的に50人~999人までの事業場で選任され、1,000人を超える事業場になると専属産業医の選任が義務となります。
Q2. 嘱託産業医の選任義務は何人からですか?
労働安全衛生法により、常時50人以上の労働者を使用する事業場には、産業医の選任義務があります。50人以上999人以下の事業場では嘱託産業医(非常勤)でOKですが、1,000人以上の事業場では専属産業医(常勤)が必要です。なお、有害業務を扱う事業場では500人以上から専属産業医の選任が必要となります。
Q3. 産業医の選任義務に違反するとどうなりますか?
選任義務に違反した場合、労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金が科される可能性があります。また、産業医を選任した後は、選任から14日以内に労働基準監督署へ「産業医選任報告書」を提出する必要があります。
Q4. 嘱託産業医の業務内容は何ですか?
嘱託産業医の業務は労働安全衛生規則で定められており、具体的には、職場巡視、健康診断の事後措置、保健指導、(安全)衛生委員会への参加、ストレスチェックの実施、高ストレス者への面談、長時間労働者への面談、健康教育・労働衛生教育、情報収集と勧告などが含まれます。これらの業務を月数回の訪問中に実施するため、限られた時間では実施できない業務が出てくる場合は、追加訪問や訪問時間の延長が必要になります。
Q5. 嘱託産業医を選任するメリットは何ですか?
最大のメリットはコストの低さです。契約によって訪問回数を抑えることが可能なため、コストの調整が容易です。また、嘱託産業医は専属産業医に比べて数が圧倒的に多いため、自社にあった産業医を選任しやすいというメリットもあります。ただし、産業医が実施すべき業務が行われていないにもかかわらず訪問回数や時間を抑えてしまうと、労災につながる可能性があるため注意が必要です。
Q6. 嘱託産業医を選任するデメリットは何ですか?
最大のデメリットは、急な対応ができない点です。労働者の急な不調が起きても、嘱託産業医は病院などに勤務している場合が多いため、すぐに対応することはできません。また、追加訪問を依頼する場合もスケジュール調整に苦労することがあります。最初の契約時にも、現在勤務している病院の休みなどの関係で訪問日が限定される場合が多くあります。
Q7. 嘱託産業医と専属産業医の違いは何ですか?
嘱託産業医は非常勤で月1回~数回の訪問、専属産業医は事業場に常勤して週3.5~4日出勤するという勤務形態の違いがあります。選任義務の発生条件も異なり、嘱託産業医は50人以上999人以下の事業場、専属産業医は1,000人以上(または有害業務を扱う500人以上)の事業場で選任義務が発生します。また、契約方法も異なり、嘱託産業医は業務委託契約、専属産業医は直接雇用契約(契約社員や顧問契約)を結ぶのが一般的です。
Q8. 嘱託産業医と専属産業医の報酬相場はどのくらいですか?
嘱託産業医の平均的な報酬は、月1回の訪問で60,000円~200,000円です。一方、専属産業医の報酬は週3.5~4日の出勤で年1,000~1,500万円となっています。ただし、報酬は訪問時間、訪問回数、業務内容、地域、産業医の経験や実績などによって大きく変動するため、詳しい料金は一度問い合わせをして確認するのが確実です。
Q9. 嘱託産業医を選ぶときに確認すべきポイントは何ですか?
確認したいのは、①業種・規模との相性、②専門分野(メンタルヘルス、復職支援、健康経営など)、③訪問頻度・対応時間の柔軟性、④保健師など産業保健スタッフとの連携体制、⑤紹介後のフォロー体制、という5つのポイントです。自社で5つすべてを確認しながら探すのは大変なため、産業医紹介サービスを利用するのがおすすめです。
Q10. 嘱託産業医の契約から選任までどのくらいかかりますか?
問い合わせから選任完了までは、おおむね1~2カ月が目安です。流れとしては、①産業医紹介サービスへの問い合わせ・要望ヒアリング、②産業医候補者の紹介、③面談・条件のすり合わせ、④業務委託契約の締結、⑤労働基準監督署への選任報告の5ステップで進みます。急ぎの場合は、即日対応可能な紹介サービスを選ぶとよいでしょう。






