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【保健師監修】2023年4月から開始!船員向けの産業医制度とは?義務なの?船員の働き方改革

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2023年4月1日より、船員の健康確保を図るため、①船員向け産業医制度、②健康検査結果に基づく健康管理、③過重労働対策、④メンタルヘルス対策に関する新たな制度が始まりました
常時50人以上の船員を使用する船舶所有者は、産業医の選任、年1回の産業医による船内巡視などが義務づけられます。

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この記事では、船員向け産業医制度や義務の対象などを中心に、2023年4月1日以降の新たな船員の健康確保制度をわかりやすく解説します。

船員向けの産業医制度とは?義務なの?

まず、船員向け産業医制度の内容や義務の対象を解説します。

船員向けの産業医制度の内容

2023年4月から、船員労働安全衛生規則や船員法施行規則の改正により、以下の4制度が新たに導入されます。

① 船員向け産業医制度

・ 船内巡視による作業環境・衛生状態の把握(→健康障害の防止措置)
・ 健康検査結果に基づく指導
・ 長時間労働者への面接指導
・ 高ストレス者への面接指導 など

② 健康検査結果に基づく健康管理

・ 健康検査にかかる診断結果の提出
・ 診断結果などの記録・保存(5年間)
・ 健康検査結果の医師からの意見聴取・事後措置(就業場所の変更や乗船機関の短縮) など

③ 過重労働対策

・ 長時間労働の船員に対する医師による面接指導
・ 面接指導の結果の記録・保存
・ 面接指導結果の医師からの意見聴取・事後措置(就業場所の変更や乗船機関の短縮) など

④ メンタルヘルス対策

・ ストレスチェック検査の実施
・ 検査結果の記録・保存
・ 検査結果の分析など
・ 高ストレス者への面接指導
・ 事後措置 など

船員向けの産業医制度が義務づけられる対象は?

上記4制度のうち、「②健康検査結果に基づく健康管理」はすべての船舶所有者に義務づけられます。
また、「①船員向け産業医制度」、「③過重労働対策」、「④メンタルヘルス対策」は、常時50人以上の船員を使用する船舶所有者に義務づけられ、それ以外は努力義務となります。

ここでいう「船員」は、常用雇用であるか、基幹雇用など臨時雇いであるかを問いません。
派遣船員については、派遣先である船舶所有者と、派遣元事業主である船舶所有者の双方において「船員」の数に含まれています。
さらに「常時50人以上の船員を使用する」とは、常態として使用している船員の数が50人であることを指します。
そのため、急な船員の下船があった場合に、当人の雇用を維持しつつ、代替要員の補充のために採用をした場合の船員については、該当しません。

また、「②健康検査結果に基づく健康管理」、「④メンタルヘルス対策の措置」の対象となるのは、以下のいずれかに当てはまる船員(常時使用する船員)です。

・ 期間の定めのない契約により使用される船員
・ 期間の定めのある契約により使用される者であって、1年以上使用されることが予定されている船員
・ 期間の定めのある契約により使用される者であって、契約の更新(当該期間の延長)により1年以上使用されている船員

ここでの「期間」には、雇入契約の期間だけでなく、下船時の雇用契約の期間(予備船員としての期間等)も含まれます。

産業医選任が義務づけられる船舶所有者の対応事項

常時50人以上の船員を使用する船舶所有者は、産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に産業医を選任し、地方運輸局等へ報告書を提出しなくてはいけません。
また、このほか以下にも対応する必要があります。

<船舶所有者の対応事項>
・ 産業医の業務に関する船員への周知
・ 産業医への情報提供(長時間労働を行った船員の氏名や超過労働時間数など)
・ 産業医に対する勧告・助言等の権限の付与 など

船員向け産業医の役割

船員向け産業医は、次の①~⑨の役割を担います。

<船員向け産業医の職務>
① 健康検査の結果に基づく船員の健康の保持
② 長時間労働の船員への面接指導の実施
③ ストレスチェックおよび高ストレス者への面接指導
④ 作業環境の維持管理
⑤ 作業の管理
⑥ ①~⑤以外の船員の健康管理
⑦ 健康教育・健康相談
⑧ 衛生教育
⑨ 船員の健康障害の原因調査および再発防止措置

上記のうち「⑥ ①~⑤以外の船員の健康管理」は、次のような職務が想定されています。

・ 健康に関する計画の企画・立案への参画
・ 化学物質等の有害性の調査およびその結果に基づく措置
・ 疾病管理および救急措置に関すること

なお、産業医は病気の診断や治療といった診療行為は行いません。

以下では、船員向け産業の職務のうち、代表的な役割について詳しく解説します。

健康検査の結果に基づく健康管理

船員向け産業医は、健康検査の結果に基づき、船員の健康保持のために必要な措置について、船舶所有者に意見の提示を行います。
また、健康の保持に努める必要があると認める船員に対しては、保健指導を実施します。

過重労働対策

船員向け産業医は、過重労働対策において、長時間労働をしている船員に対して、面接指導の申出を勧奨します。
また、面接指導の申出があった場合には、勤務状況や疲労の蓄積状況、そのほか心身の状況などを確認のうえ、健康保持のために必要な措置を船舶所有者に意見していくことになります

メンタルヘルス対策

船員向け産業医は、ストレスチェックにおいて、船員に調査票を配布し、受検を依頼します。受検後は、調査票を回収し、各受検者のストレスの程度等を確認、結果の通知を行います。
また受検者の同意が得られたときは、船舶所有者へのストレスチェック結果を提供します。
さらに高ストレス者であり、面接指導の申出のあった船員に対しては、の勤務状況、心理的負担の状況、その他心身の状況等を確認し、健康保持のために必要な措置について、船舶所有者に意見等を提示します。
加えて、ストレスチェックの結果について、船員が乗り組む船舶など一定規模の集団ごとに集計・分析し、その結果を船舶所有者に通知することが、努力義務とされています。

船員向け産業医などによる船内巡視

船員向け産業医は、船内の作業環境や衛生状態を把握して、有害のおそれがある場合には健康障害を阻止するための措置を講じます。
そのため、常時50人以上の船員を使用する船舶所有者は、月に1回は衛生管理者へ巡視結果を産業医へ提供しなければいけません。また、少なくとも年に1回は船員向け産業医による船内巡視を行う必要があります。

安全衛生委員会との連携

船員向け産業医と安全衛生委員会の連携は、船員の健康を守るためには必要不可欠です。
そのため、船員向け産業医は安全衛生委員会へ出世し、医学的な立場から調査審議に参加するのが望ましいでしょう。
制度上は船員向け産業医は安全衛生委員会の委員ではありませんが、産業保健活動の円滑な進行のためにも、安全衛生委員会に出席して船員の就労実態や健康課題についておくことが必要です。

なぜ、船員の健康確保が必要なのか?

船員の健康確保が求められ、働き方改革に着手した背景には、以下のような健康課題があります。

<船員の健康課題の特徴>
・ 疾病の約半数は生活習慣病
・ 疾病による死亡者のおよそ9割は生活習慣病に関連する疾患によるもの
・ 陸上労働者とくらべて、メタボリックシンドロームの割合が10%以上高い
・ 陸上労働者とくらべて、喫煙者の割合が10%以上高い
・ 高ストレス者の割合は、陸上の労働者と合わせたなかでも、製造業に次いで高い
・ 「人間関係」を高ストレスの要因としている者の割合が高い
・ 労働負荷の要因がさまざま

船員の場合は、職住一体の生活により、人間関係の問題が陸上より深刻になりやすく、生活習慣病等の健康リスクが高くなりがちです。
また、船員の健康管理は、健康証明を通じた船員個人による健康管理が中心で、船社全体で健康管理をサポートする仕組みができておらず、メンタルヘルスや長時間労働者への対応等については、十分な専門的知見を有していないのが実情です。
そこで、船員が抱える健康リスクの軽減を図るため、陸上労働者に関する制度・取組みを参考にしつつ、医学的な見地を踏まえ船員の心身の健康確保を図るための制度を新たに構築し、健康で長く働き続けられる職場づくりの実現が目指していくのです。

まとめ

今回は、2023年4月スタートの船員向けの産業医制度についてわかりやすく解説しました。
船員向け産業の探し方としては、①地域の医師会、②産業医紹介を行っている会社のどちらかに問い合わせることになります。
「さんぽみち」運営元のドクタートラストは、全国トップクラスの産業医紹介実績を誇り、「船員向け産業医」にも対応しています。
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<参考>
・ 国土交通省「船員の 働き方改革・健康確保 WEB説明会
・ 国土交通省「船員の健康確保について」
・ 国土交通省海事局「産業医による船内巡視等の実施手順書(PDF)」
・ 国土交通省海事局「船員向け産業医選任・活用マニュアル~船員の健康確保に向けて~(PDF)」