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突然ですが…皆さん、保健師をご存知ですか。
「保健室の先生?」「保険を売るひと?」
保健師として働く私も、初めてお会いする方へ職業をお伝えした際に、こんな反応をいただくことが多いです。
まだまだ、保健師の認知度は高くないことを感じさせられます。
今回は、保健師とは何なのか、保健師とはどこで働いている人か、保健師とはどのようなことをしているのか解説します。
目次
保健師とは~法律に定められた国家資格~
今回は、保健師の基本的な情報をわかりやすくお伝えします。
そもそも保健師とは何なのでしょうか?
保健師は、「保健師助産師看護師法」という法律で以下のように定められている国家資格です。
第2条 この法律において「保健師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者をいう。
出所:保健師助産師看護師法
この法律では、看護師、助産師についても同様に定義されています。
第3条 この法律において「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう。
第5条 この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。
出所:保健師助産師看護師法
看護師、助産師は皆さんにとって身近な存在かもしれません。
保健師は、看護師・助産師と同じ法律で定められている国家資格なのです。
参考:看護師、助産師の要件
また、「保健師助産師看護師法」では、保健師になるための要件についても同様に定めが置かれています。
第7条 保健師になろうとする者は、保健師国家試験及び看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。
出所:保健師助産師看護師法
つまり、保健師は、保健師免許だけではなく看護師免許も必ず持っていることとなります。
保健師でもあり、看護師でもあるということですね。
そのうえで、専門性をもった役割を担っています。
保健師とは何をするの?
法律で保健師の要件が定められているといっても、イメージがわきにくいですよね。
実際にどんな仕事を行っているのか?
皆さんが知りたいところかと思います。
ただ、保健師が行う仕事は、実にさまざまで一言で説明するのは難しいかもしれません。
私も、いろんな保健師さんにお会いするなかで、「こんな仕事をしている人もいるんだ!」と、常に刺激を受けています。
そんなふうに多種多様にわたる保健師の仕事ですが、どんな仕事にも共通したキーワードがあります。
それは、「予防」です。
看護師は、患者さん(けがや病気をした方)をケアするのに対し、保健師は、健康な方がけがや病気をしないように、予防する活動を行います。
看護師と保健師の違いを自転車でたとえてみる
自転車にたとえてみましょう。
すでに不調が出ており、自転車屋さんでサビ取りやブレーキの交換を行ってもらうことは看護師的な役割、雨にぬれてサビないように自転車置き場をつくることや、定期的に自転車屋さんで点検してもらうことは保健師的な役割といえるでしょう。
つまり保健師は、けがや病気をした方とくらべ、緊急性は低いですが、将来的により多くの方が健康に暮らせるような仕事を行ってます。
(自転車の例でいうと、長く乗り続けられるようなお仕事ですね)
保健師とはどこで働いているの?
保健師の仕事内容がざっくりとわかりましたね。
では、こうして「予防」に特化した保健師は、いったいどこで働いているのでしょうか。
公益社団法人日本看護協会「保健師の活動基盤に関する基礎調査」では、全国の保健師がどこで働いているか(所属先)を次のように算出しています。
保健師が働く場所として一番多いのは市町村、次いで保健所設置市・特別区、都道府県となっています。
つまり、自治体で働く保健師がほとんどということですね。
そのため、一般的に保健師というと、自治体の保健師を思い浮かべる方が多いかもしれません。
次いで多いのは企業・事業所や病院・診療所等となっていますが、ほかにも健診センターや地域包括支援センター、医療保険者、介護老人保健施設や教育・研究機関など……保健師の働く場所は多岐にわたることがわかるかと思います。
自治体とは、具体的には保健所や保健センター、役所、地域包括支援センターなどで、公務員として働くこととなります。
企業・事業所とは、会社で会社員として働くということですね。
また、保健師の活動を大きな領域で分けると「行政」が75.9%、「産業」が6.4%、「医療」が4.9%、「福祉」が8.2%、「教育」が2.0%となっています。
活動領域における違い
同じ保健師が、働く場所・領域が違うことで何が違ってくるのでしょうか。
結論からいうと、領域が異なると対象が異なります。
つまり、誰の健康を守るか?が異なります。
前述のとおり、保健師の仕事におけるキーワードは「予防」です。
健康な方がけがや病気をしないように予防する活動ですね。
(実際には、けがや病気があったとしても、それ以上悪くならないように「予防」する活動もあります)
自転車の例えでいうと、自転車置き場をつくることや定期的に自転車屋さんで点検してもらうこととお話ししました。
行政では、その地域に住む住人の健康。
産業では、その企業で働く社員の健康。
医療では、その医療機関で医療を受けた人の健康。
対象は違えど、保健師の使命は「予防」
対象は違えど、保健師はその領域の人の健康を守り、今よりもっと健康にすることを目的に活動しています。
そのためにすべきことは、それぞれの領域で異なりますが、目指すところは同じなのです。
前回と同じように、自転車の例えでいうと、次のようなイメージでしょうか。
行政では、A市にある自転車すべて。
産業では、メーカーB製の自転車すべて。
医療では、自転車屋Cに来た自転車すべて。
さまざまな切り口から、それぞれの関係性のなかで人々の健康に関わっています。
行政保健師の勤務地、保健所と保健センターとは
ここまでお読みいただいて自治体で働く保健師がほとんどということがわかりましたね。
自治体保健師とは、都道府県や特別区、市町村で働く保健師のことです。
行政保健師ということもあります。
具体的には保健所や保健センター、役所、地域包括支援センターなどで、公務員として働いている人たちのことです。
保健師の大半を占める自治体の保健師について、もう少し詳しくお話したいと思いますが、その前に自治体保健師のなかでも、多くの保健師の働く場所である「保健所」「保健センター」についてお伝えします。
保健所と保健センターが置かれる場所
保健所と保健センター、2つの違いをご存知でしょうか。
この2つは、なんとなく置かれているわけではありません。
地域保健法という法律により、保健所、保健センターはそれぞれ置かれる場所や役割が決められています。
第5条1項 保健所は、都道府県、(中略)指定都市、(中略)中核市その他の政令で定める市又は特別区が、これを設置する。
出所:地域保健法
わかりやすく箇条書きにしてみると、以下が保健所の設置要件です。
・ 都道府県
・ 指定都市(=人口50万以上の市)
・ 中核市(=人口20万以上の市)
・ 特別区
・ その他政令で定める市
地域保健法では、同様に保健センターの要件が定めれられています。
第18条1項 市町村は、市町村保健センターを設置することができる。
出所:地域保健法
保健所とくらべ随分とシンプルですが、市町村には必ず保健センターが置かれていることとなります。
役所と同様ですね。
また、特別区は基本的に市町村に準ずるものとされているため、特別区も保健センターが置かれています。
保健所と保健センターの役割の違い
保健所で何をすべきか、保健センターで何をすべきかについても、地域保健法で定められています。
第6条 保健所は、次に掲げる事項につき、企画、調整、指導及びこれらに必要な事業を行う。
一 地域保健に関する思想の普及及び向上に関する事項
二 人口動態統計その他地域保健に係る統計に関する事項
三 栄養の改善及び食品衛生に関する事項
四 住宅、水道、下水道、廃棄物の処理、清掃その他の環境の衛生に関する事項
五 医事及び薬事に関する事項
六 保健師に関する事項
七 公共医療事業の向上及び増進に関する事項
八 母性及び乳幼児並びに老人の保健に関する事項
九 歯科保健に関する事項
十 精神保健に関する事項
十一 治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病により長期に療養を必要とする者の保健に関する事項
十二 エイズ、結核、性病、伝染病その他の疾病の予防に関する事項
十三 衛生上の試験及び検査に関する事項
十四 その他地域住民の健康の保持及び増進に関する事項
地域保健法
また保健センターの役割は以下の通りです。
第18条2項 市町村保健センターは、住民に対し、健康相談、保健指導及び健康診査その他地域保健に関し必要な事業を行うことを目的とする施設とする。
地域保健法
保健所にくらべ、直接的な関わりが多いのが保健センターで、乳幼児健診や予防接種、がん検診、健康相談、予防接種、保健指導、介護事業…など身近な健康に関わるサービスを実施しています。
一方、保健所では難病や精神福祉、結核・感染症、自殺予防など、専門的で広域的なサービスを実施しています。
広域or身近なサービス
保健所と保健センターのと違い、法律だけではなかなかイメージがわかないですよね。
最後に2つの違いを表にしてまとめました。
<参考>
・公益財団法人日本看護協会「保健師の活動基盤に関する基礎調査」