健康診断を実施しないのは法律違反!会社で行うべき健康診断の内容とは?

健康診断を実施しないのは法律違反!会社で行うべき健康診断の内容とは?

会社は健康診断を実施する義務があり、その内容についても法令内で詳しく規定されています。
そのため、健康診断を実施しないもしくは必要な項目の検査を受けていない場合には法律違反となり罰せられます。
この記事では、健康診断に関係する法律と検査の内容を詳しく解説します。

健康診断を実施しない会社は法律違反!どんな罰則がある?

健康診断は労働安全衛生法で定められた会社の義務です。

(健康診断)
第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。
出所:労働安全衛生法

健康診断を実施せずに会社が法律違反を犯した場合、どんな罰則が科されるのでしょうか。
また、義務とされている健康診断の種類についても解説していきます。

会社に義務付けられている健康診断の種類

会社に義務付けられている健康診断には5つの種類がり、それぞれ対象となる労働者や実施時期が異なります。

健康診断の種類対象となる労働者実施時期
雇入時の健康診断常時使用する労働者雇入れの際
定期健康診断常時使用する労働者1年以内ごとに1回
特定業務従事者の健康診断労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務に常時従事する労働者・左記業務への配置替えの際
・6ヶ月ごとに1回
海外派遣労働者の健康診断海外に6ヶ月以上派遣する労働者・海外に6ヶ月以上派遣する際
・帰国後国内業務に就かせる際
給食従業員の検便事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者・雇入れの際
・配置換えの際

労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務とは以下の業務を指します。

イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲びよう打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒ひ素、黄りん、弗ふつ化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒ひ素、黄りん、弗ふつ化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務
出所:労働安全衛生規則

会社で健康診断を実施しない場合の罰則

もし対象となる労働者に健康診断を実施しなかった場合は法律違反となり、50万円以下の罰金があります。
罰則については安全衛生法の120条で規定されています。

第120条 次の各号のいずれかに該当する者は、50万円以下の罰金に処する。
(中略)
第66条第1項から第3項まで、第66条の3、第66条の6、第66条の8の2第1項、第66条の8の4第1項
出所:労働安全衛生法

もし、健康診断を実施せずに健康被害がでてしまえば、安全配慮義務違反に問われてしまうかもしれません。
安全配慮義務違反で裁判になると、多額の賠償金が発生する可能性があるため、健康診断は必ず実施しましょう。

会社が健康診断を実施すべき労働者の種類

労働安全衛生規則第43条と第44条には、健康診断を実施すべき対象について「常時使用する労働者」という記載があります。
労働安全衛生関連の法令では、「常時使用する労働者」という表現が多発するのですが、実はその定義は法令ごとに異なっています。
では、健康診断にかかわる法令での「常時使用する労働者」とは、具体的にどの雇用形態の労働者を指すのでしょうか。

正社員

正社員は常時使用する労働者に含まれるため、健康診断を実施する義務が発生します。
正社員の定義について書かれている法令などはないものの、一般的には、「労働契約に期間の定めがない」「フルタイムの所定労働時間」「直接雇用」という3つの条件を満たす労働者を指します。

派遣社員・パート社員・アルバイト社員

派遣社員やパート社員、アルバイト社員といった短時間労働者は、労働時間や雇用期間によっては常時使用する労働者に含まれるため、健康診断を実施する義務が発生します。
この基準については、2007年に出された厚生労働省の通達によって示されています。

・1週間の所定労働時間のうち4分の3以上勤務している
・1年以上の有期契約を結んでいる

以上の条件を両方満たしている労働者には健康診断を実施しなくてはいけません。
また、1週間の労働時間については2分の1以上からの実施が望ましいとされています。

役員

健康診断の対象は労働者であるため、役員については実施義務が発生しません
つまり、健康診断を実施しなくても罰則の対象にはならず、その費用も経費で落ちません。
しかし、兼務役員の場合で労働性が強ければ義務の対象となります。

役員の健康は経営にもかかわる部分なので、兼務しているかどうかにかかわらず健康診断を実施するのが望ましいでしょう。
健康診断費用については、経費で落ちることはありませんが役員への賞与として処理するのが一般的です。

会社で行うべき健康診断の内容とは?方法・時期に決まりはなし?

一言に健康診断と言っても、その検査項目は多岐にわたります。
会社が実施する雇い入れ時の健康診断と定期健康診断では、どのような項目の検査が必要になるのでしょうか。
また、実施方法や時期についても併せて解説します。

会社で行うべき健康診断の内容(一般健診項目)

一般健康診断には、雇入時健康診断と定期健康診断があり、それぞれ内容が異なります。
それぞれの検査項目は労働安全衛生規則によって以下のように規定されています。

・雇入れ時の健康診断
1 既往歴および業務歴の調査
2 自覚症状および他覚症状の有無の検査
3 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
4 胸部エックス線検査
5 血圧の測定
6 貧血検査(血色素量および赤血球数)
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
8 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
9 血糖検査
10 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)
11 心電図検査
・定期健康診断
1 既往歴および業務歴の調査
2 自覚症状および他覚症状の有無の検査
3 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
4 胸部エックス線検査および喀痰検査
5 血圧の測定
6 貧血検査(血色素量および赤血球数)
7 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
8 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
9 血糖検査
10 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)
11 心電図検査

定期健診に関しては、条件を満たせば以下の項目を省略できます。

項目医師が必要でないと認めたときに省略できる者
身長20歳以上の者
腹囲・ 40歳未満(35歳を除く)の者
・妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断された者
・BMIが20未満である者
・BMIが22未満であって、自ら腹囲を測定し、その値を申告した者
胸部エックス線検査・40歳未満のうち、次のいずれにも該当しない者
1. 5歳ごとの節目年齢(20、25、30、35歳) の者
2. 感染症法で結核に係る定期の健康診断の対象とされている施設等で働いている者
3. じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている者
喀痰検査・胸部エックス線検査を省略された者
・胸部エックス線検査によって病変の発見されない者、または胸部エックス線検査によって結核発病のおそれがないと診断された者
貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査、心電図検査35歳未満の者および36~39歳の者

健康診断の実施方法に決まりはなし?

前述の検査項目が網羅されていれば実施方法に規定はないので、会社が管理しやすい方法で実施できます。
おもな実施方法としては以下のものがあります。

・ 指定の医療機関に申し込む
・ 会社に巡回健診を申し込む
・ 労働者が個人で健康診断を受ける

健康診断結果の管理が容易であり、事前の準備も少なくて済むことから、指定の医療機関に健診をまとめて申し込む方法が一般的です。
巡回健診は、健康診断の受診率を上げたり、受診にかかる時間を短縮したりする効果が期待できます。
労働者が個人で健康診断を受けると会社側の管理が難しく、必要な項目が検査できていない場合もありますが、 どうしても健康診断を受けない社員に対しては、個人での健康診断という選択肢が必要になるかもしれません。

健康診断の実施時期に決まりはなし?

労働安全衛生規則第44条にて、実施すべき期間が規定されています。

(定期健康診断)
第44条 事業者は、常時使用する労働者(第45条第1項に規定する労働者を除く。)に対し、1年以内ごとに1回、定期に、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。
出所:労働安全衛生規則

1年以内というのは、前回健康診断を受けてから1年以内という意味なので、会社内で健康診断を受診するタイミングを定めて、一定の期間内で一斉に受診させてしまうのが望ましいでしょう。
管理が簡単で、受診漏れを防ぐことができます。

一方で、雇入時の健康診断については、労働安全衛生規則第43条に雇い入れるときに実施すべきという記載があるものの、具体的な期間については明記されていません。

(雇入時の健康診断)
第43条 事業者は、常時使用する労働者を雇い入れるときは、当該労働者に対し、次の項目について医師による健康診断を行わなければならない。ただし、医師による健康診断を受けた後、3月を経過しない者を雇い入れる場合において、その者が当該健康診断の結果を証明する書面を提出したときは、当該健康診断の項目に相当する項目については、この限りでない。
出所:労働安全衛生規則

しかし、上記の条文内に3ヶ月以内に健康診断を受けた者で、その結果を証明する書面の提出があれば、健康診断の実施義務は発生しないと書かれています。
このことから、雇い入れ後に健康診断を実施する場合でも、入社後3ヶ月以内におこなうべきという解釈が一般的です。

健康診断における産業医・保健師の役割とは?

産業医や保健師は健康診断を実施したあとに大きな役割を担います。
産業医の主な役割は以下の3つがあります。

・ 就業判定
・ 保健指導
・ 受診勧奨

健康診断の結果を受けて、実際に業務に耐えられる健康状態なのかを産業医が判定します。
休職までにはならないまでも、就業制限が必要である場合には、どの程度の措置が必要なのかも産業医が判断し、事業者が決定しなくてはいけません。
これは、労働安全衛生法の第66条の5にて事業者に課された義務であり、実施しない場合には罰則に加えて、安全配慮義務違反に問われてしまう可能性もあります。

保健指導や受診勧奨も重要な役割です。
健康診断はすでにある病気の発見だけではなく、生活習慣病などの病の兆候を早期発見し、未然予防する目的も存在します。
つまり、健康診断を実施して終わりではなく、異常な所見が認められた労働者に対する受診勧奨や、生活習慣における問題を持つ労働者に対して保健指導を産業医がおこない、将来に大病を患うリスクの軽減に努めなくてはいけません。

産業保健師は、保健指導や受診勧奨をおこない、産業医の業務をサポートします。
産業医の選任は料金面での負担が大きいため、月に1回程度しか訪問のない企業がほとんどであり、事後措置が十分とは言えません。
産業保健師を活用することで、産業医の手が届かないところまですくい上げてのサポートが可能で、保健指導が必要な労働者に対してきめ細やかな面談を実施できます。
しかし、就労判定に関しては産業医しか実施できないため注意が必要です。

まとめ

今回は、健康診断の内容や法令についてわかりやすく解説しました。
健康診断は労働安全衛生法で定められた義務であり、仕方なく実行している企業も多いのかもしれません。
しかし、健康診断の実施は大病を患うリスクを減少させ、労働者が長く健康的に働けるため、将来的には大きな利益につながるでしょう。
そのためには、産業医や産業保健師の事後措置が大切です。
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この記事を書いた人

さんぽみち編集部

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