2025年の法改正により、これまでストレスチェックの義務対象外だった従業員50人未満の小規模事業場にも、実施義務が課されることが決まりました。「うちはまだ関係ない」と思っていた担当者の方も、そろそろ動き出す必要があります。
とはいえ、「何から始めればいい?」「外部に委託すべき?」「パートやアルバイトも対象になるの?」と、わからないことだらけという方も多いでしょう。
この記事では、厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月)」をもとに、小規模事業場の担当者向けに、ストレスチェックの義務化の背景から対象者の判断、実施体制、面接指導、職場改善まで、実務に必要な情報をまるごと解説します。
目次
小規模事業場でもストレスチェックは義務化される
2025年の法改正で何が変わったか
2025年5月14日に公布された改正労働安全衛生法により、これまで努力義務とされていた従業員数50人未満の事業場についても、ストレスチェックの実施が義務化されることが決まりました(施行日は政令で定められる予定です)。従来は常時50人以上の事業場のみが義務対象でしたが、改正後は対象が全事業場へ広がります。
つまり、「50人未満だからまだ関係ない」という時代ではなくなりました。厚生労働省も、小規模事業場向けの専用マニュアルを2026年2月に公表し、実施体制やプライバシー保護のあり方、外部委託の考え方などを整理しています。
施行時期と今から準備すべき理由
施行期日は、法律上「公布後3年以内に政令で定める日」とされています。つまり、遅くとも2028年5月までに施行されることとされています(具体的な施行日は今後政令で定められます)。
今から準備すべき理由は3つあります。第一に、ストレスチェックは単にアンケートを配るだけでなく、方針表明・従業員意見の聴取・社内ルール整備・委託先選定まで必要で、準備に時間がかかるためです。第二に、小規模事業場では人間関係が近いため、結果漏えいへの不安が大きく、プライバシー配慮設計が重要だからです。第三に、施行直前に慌てるより、今のうちに体制を整えた方が、費用面・運用面ともに無理がありません。
ポイント
- 50人未満事業場も義務化の対象になる
- 施行は公布後3年以内の政令日(遅くとも2028年5月まで)
- いまは「準備を始めるべき期間」と考えるのが実務的
ストレスチェック制度の目的と効果
制度の目的は「メンタル不調の予防」
ストレスチェック制度の主目的は、メンタルヘルス不調の「発見」そのものではなく、未然防止(一次予防)です。労働者が自分のストレス状態に気づき、必要に応じて対処し、さらに職場側もストレス要因を減らすことで、不調が深刻化する前に手を打つ仕組みです。
ストレスチェック制度は、集団分析・職場環境改善まで含めた一体的な制度です。個人のセルフケアだけを目的とするものではありません。
実施することで得られる効果
厚生労働省が行った効果検証事業の結果では、ストレスチェックを受けた労働者の約7割から「自身のストレスがわかったことが有効だった」という回答が得られています。また、医師の面接指導を受けた労働者の過半数から「対面で医師から面接を受けたことが有効だった」とする回答も得られています。
学術論文や研究報告書でも、ストレスチェックと職場環境改善によって心理的ストレスの低下や生産性向上の効果が認められています。
特に小規模事業場にとって重要なのは、ひとたびメンタルヘルス不調が発生すると、数か月単位の休職に至るケースや、復職後に再休職となるケースも少なくないという点です。人材が限られる小規模事業場では、1人の不調が事業全体に大きな影響を与えます。メンタルヘルス対策を経営課題として位置付けることが重要です。
ストレスチェックの3つの柱
ストレスチェック制度は、実務上は次の3本柱で理解するとわかりやすいです。
1. 個人の気づき
検査結果を本人に通知し、自分のストレス状態を把握してもらいます。セルフケアの入口になるのがこの部分です。
2. 面接指導
高ストレスと判定され、かつ本人が申し出た場合には、医師による面接指導につなげます。事業者は、申出があった場合に面接指導を実施し、必要なら就業上の措置を検討する義務を負います。
3. 職場改善
結果を集団ごとに集計・分析し、職場のストレス要因を把握して、業務分担やコミュニケーション、長時間労働などの改善につなげます。ここをやらないと、制度が「やりっぱなし」になりがちです。
健康診断との違い
健康診断と混同されがちですが、両者は性質が違います。健康診断は身体面の確認が中心で、労働者には受診義務があります。一方、ストレスチェックはメンタルヘルス不調の未然防止が目的で、事業者には実施義務があっても、労働者本人には受検義務がありません。また、健康診断結果は事業者が把握する前提ですが、ストレスチェック結果は本人の同意なしに事業者へ提供できません。
ポイント
- 目的は「発見」より「未然防止」
- 受検者の約7割が「自身のストレスが分かった」と有効と回答
- 個人の気づき、面接指導、職場改善の3本柱で運用する
ストレスチェックの対象者
「常時使用する労働者」とは
ストレスチェックの実施義務の対象者は、常時使用する労働者です。常時使用する労働者とは、以下の両方の要件を満たす者を指します。
- 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者、ならびに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者、および1年以上引き続き使用されている者を含む)であること。
- その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
なお、契約の名称や国籍に関わらず、実態で判断します。
雇用形態別の対象判断
正規雇用・契約社員
期間の定めのない労働契約で働く正規雇用の従業員は対象です。契約社員であっても、契約期間が1年以上、または契約更新により1年以上使用されることが予定されている場合は対象となります。
パート・アルバイト
パートやアルバイトであっても、上記①②の要件を両方満たす場合はストレスチェックの対象です。たとえば、1年以上の契約を見込み、通常の労働者の週所定労働時間37.5時間に対して29時間(4分の3以上)労働していれば対象となります。
なお、週の労働時間が通常の労働者のおおむね2分の1以上4分の3未満の場合は義務対象外ですが、実施することが望まれるとされています。
派遣労働者
派遣労働者に対するストレスチェックは、派遣元事業者が実施義務を負います。派遣先には実施義務はありませんが、集団分析の観点から派遣元との連携が望まれます。
休職中の労働者
休職中の労働者は、実務上は対象外として扱うケースも多く見られます。マニュアルの実施規程モデル例でも、「休職期間が1カ月以上の社員については対象外とする」という記載があります。
退職予定者
退職予定者であっても、ストレスチェックの実施時期に在籍している場合は、原則として対象者に含まれます。
労働基準監督署への報告における「50人」の数え方
注意が必要なのは、報告義務の基準となる「常時使用している労働者が50人以上」の数え方です。この場合の「常時使用している労働者」は、ストレスチェックの対象者のように契約期間や週の労働時間で判断するのではなく、常態として使用されているかどうかで判断します。
そのため、労働時間数が短いアルバイトやパートタイム労働者、派遣先の派遣労働者であっても、継続して雇用し常態として使用していれば、カウントに含める必要があります。「ストレスチェックの対象者」が50人未満であっても、「常時使用している労働者」が50人以上となり、報告が必要となる場合がありますので注意が必要です。
小規模事業場におけるストレスチェックの進め方【全体フロー】
実施までの全体像
小規模事業場向けマニュアルでは、全体フローはおおむね次の順番です。
① 方針表明 → ② 労働者の意見聴取 → ③ 社内ルール作成・周知 → ④ 実務担当者の選任・委託先決定 → ⑤ 実施時期・対象者・調査票の決定 → ⑥ 実施 → ⑦ 面接指導・事後措置 → ⑧ 集団分析・職場改善
それぞれのステップに担当者としての判断が求められます。特に①?③の準備フェーズを丁寧に行うことが、制度を定着させるうえで重要です。
① 実施前の準備(最重要)
会社としての方針を決める
最初に必要なのは、会社として何のために実施するのかを明確にすることです。特に小規模事業場では「会社に結果が筒抜けになるのでは」と不安を持たれやすいため、以下の点を事業者から明確に表明することが重要です。
- メンタル不調の予防が目的であること
- プライバシーを守ること
- 不利益取扱いをしないこと
- 個人結果は本人の同意なく会社が知ることはないこと
この方針表明があるかどうかで、従業員の受検率が大きく変わります。
従業員の意見を聴く
制度導入前には、関係労働者の意見を聴くことが求められます。小規模事業場では衛生委員会がない場合も多いため、朝礼やミーティング、個別ヒアリングなど、実情に合った形で意見聴取の場を設ければよいとされています。定例の業務ミーティングや朝礼を活用する方法も有効です。
社内ルールを作る
実施前に以下の事項について社内ルールを定めておく必要があります。
- 実施体制(誰が担当するか)
- 実施方法(調査票の種類・配布・回収方法)
- 記録の保存(誰がどこに保存するか)
- 情報管理(どこまで会社が情報に触れられるか)
- 情報の開示・苦情処理の手続き
- 不利益な取扱いの防止
厚生労働省は、小規模事業場向けに社内ルール例・社内規程例のWordひな形を公開しています。実務ではこれをベースに自社向けに調整するのが最も効率的です。
ポイント
- 方針表明・意見聴取・ルール整備の3つは実施そのものと同じくらい重要
- 厚労省の社内規程ひな形を活用するとスムーズ
② 実施体制の作り方
登場する3つの役割
ストレスチェック制度には、次の3つの役割が登場します。それぞれの違いを理解しておくことが重要です。
実務担当者(事業場内)
事業場内でストレスチェック制度の実施計画の策定、委託先の外部機関との連絡調整、実施の管理等を担当します。個人のストレスチェック結果などの健康情報を取り扱うことがない立場です。そのため、人事権を持つ管理的地位にある者(社長、人事部長など)でも担当することが可能です。
なお、労働者数10人以上50人未満の事業場では、業種により衛生推進者または安全衛生推進者を選任することが義務付けられており、これらの者が実務担当者を兼ねることが望まれます。労働者数10人未満の事業場では衛生推進者がいないため、事業者自らが実務担当者の役割を担うことになります。
実施者(委託先の外部機関)
調査票の選定、高ストレス者の評価方法の決定、ストレスチェック結果に基づく医師の面接指導の要否の判断などに関与します。実施者は、委託先の外部機関の医師、保健師、一定の研修を受けた歯科医師、看護師、精神保健福祉士または公認心理師の中から選任する必要があります。守秘義務が課せられます。
実施事務従事者(委託先の外部機関)
実施者の指示により、ストレスチェックの実施の事務(個人の調査票の回収・データ入力、個人結果の記録の保存、医師の面接指導の申出勧奨など)に携わります。労働者の健康情報を取り扱う事務であり、実施者と同様に守秘義務が課せられます。
外部委託が推奨される理由
厚生労働省の小規模事業場マニュアルでは、50人未満の事業場では原則として外部機関への委託が推奨されています。理由は、社内の距離が近い小規模事業場ほど本人特定や情報漏えいの懸念が強く、労働者が安心して受検できる環境を確保しやすいからです。外部委託することで、担当者の負担軽減にもつながります。
自社で実施する場合の留意点
外部委託せず自社で実施することも可能ですが、その場合は以下の点に十分注意が必要です。
- 実施者(医師・保健師等)と実施事務従事者を自社内で選定する必要がある
- 人事に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者(社長、人事部長など)はストレスチェックの実施の事務には従事できない
- 実施者・実施事務従事者には守秘義務が課せられる(違反した場合の罰則あり)
- 個人結果の保存、通知、面接指導対象者への申出勧奨など、プライバシー保護上のリスクと運用負担がともに大きくなる
- 特に小規模事業場では社内の人間関係が近く、個人特定リスクが高いため、労働者の不安が生じやすい
これらの理由から、自社実施を選択する場合は事業場内の厳格な体制整備と極めて慎重な運用が求められます。
委託先の選び方(確認ポイント)
委託先選定では、次の観点が重要です。
- 実施者として必要な資格を持つ人材がいるか
- 守秘義務や個人情報保護の体制(プライバシーマークなど)があるか
- 調査票が法令要件を満たしているか
- 配布・回収・結果通知を第三者に見られない形でできるか
- 高ストレス者への申出勧奨を適切に行えるか
- 集団分析を10人以上単位で実施できるか
- 面接指導や緊急対応の連携体制があるか
- 集団分析・面接指導・相談窓口などの料金体系が明確か
委託先から「サービス内容事前説明書」を作成・提出してもらい、内容を確認することが推奨されています。
ポイント
- 事業場内:実務担当者(健康情報は扱わない)
- 委託先:実施者(有資格者)+実施事務従事者(守秘義務あり)
- 小規模事業場は外部委託が原則推奨
③ ストレスチェックの実施
調査票の種類
調査票は厚生労働省推奨の「職業性ストレス簡易調査票」(57項目)を使用することが推奨されています。23項目の簡略版も使用可能ですが、集団分析が詳細にできないことに留意が必要です。
調査形態は紙でもWebでも実施可能です。1人1台のPCが支給されていない職場では紙のほうが適している場合もあります。
調査票の配布・回収
調査票は委託先の外部機関が配布し、回収します。重要なのは本人以外に見られない形で配布・回収することです。紙なら封緘、Webならパスワード管理やアクセス制御など、情報保護の仕組みが必要です。
実施前に実務担当者から社内に実施の予告(実施時期、委託先の外部機関名、調査票の配布・回収の方法、受検勧奨の方法など)を行っておく必要があります。
受検勧奨のポイント
受検率を高めるための勧奨は重要ですが、受検の強要はできません。就業規則でストレスチェックの受検を義務付けたり、受けないことを理由に懲戒処分したりすることは認められていません。プライバシーが守られることを繰り返し伝えることが受検率向上の近道です。
なお、ストレスチェックは業務時間中に実施するものとし、管理者には労働者が業務時間中に受けられるよう配慮することが求められます。
結果通知のルール
個人結果は、実施者から本人へ直接通知されるのが原則です。会社は、本人の同意なく個人結果を見ることはできません。
通知内容として、必ず通知しなければならないのは以下の3点です。
- 個人のストレスプロフィール
- 高ストレス者に該当するか否かの評価結果
- 面接指導を受ける必要があるかどうかの評価結果
また、高ストレス者だけ封筒や案内方法が違うなど、周囲に「この人が高ストレス者だ」と推測される通知方法は避ける必要があります。全員にストレスチェック結果を封書で通知する際に、面接指導対象者向けの通知文を同封するなどの配慮が必要です。
結果の保存
個人のストレスチェック結果の保存は、法令上、委託先の外部機関における実施者または実施事務従事者が行います。外部委託の場合、個人結果の保存は委託先が行うのが一般的です。委託先との契約に際しては、結果の記録保存についても委託内容に含めるようにしましょう。
ポイント
- 個人結果は本人のみ通知、会社は同意なしでは見られない
- 結果の保存は原則として委託先の外部機関が行う
- 受検は本人の義務ではない
④ 面接指導とその後の対応
高ストレス者とは
高ストレス者とは、ストレスチェックの結果、高ストレスであり、かつ実施者が面接指導が必要と判断した労働者をいいます。単に数値が高いだけでなく、制度上は実施者の判断が重要です。
面接指導の流れ
高ストレス判定 → 本人への通知・申出勧奨 → 本人から申出 → 医師による面接指導 → 医師からの意見聴取 → 就業上の措置
ポイントは2点です。まず、面接指導は本人の申出が起点であること。次に、申出があった場合、事業者は遅滞なく面接指導を実施する義務を負うことです。申出があったのに実施しないことは法令違反になります。
面接指導を実施する日時は就業時間内に設定することが望まれます。場所はプライバシーに配慮した場所とし、対面が原則ですが、医師が必要と認めない場合はオンラインでの実施も可能です。なお、面接指導の費用は事業者が負担すべきものです。
医師への情報提供
面接指導を担当する医師には、以下の情報を事前に提供することが望まれます。
- 対象労働者の氏名、性別、年齢、所属、役職など
- 個人のストレスチェック結果
- ストレスチェック実施直前1カ月間の労働時間、労働日数、深夜業の回数など
- 定期健康診断やその他の健康診断の結果
- ストレスチェックの実施時期が繁忙期であったかどうか
地域産業保健センターの活用(無料)
50人未満の事業場では、地域産業保健センター(地産保)を活用できます。地産保は全国に設置されており(概ね労働基準監督署単位)、高ストレス者や長時間労働者に対する医師の面接指導等を無料で提供しています。小規模事業場にとって最も使いやすい公的支援の一つです。なお、地産保ではストレスチェック自体の実施は行っていません。
就業上の措置
面接指導後、医師が必要と判断した場合には、事業者は意見を踏まえて就業上の措置を検討します。措置の区分は「通常勤務」「就業制限(労働時間の短縮、業務量の調整、作業転換等)」「要休業」の3つです。
措置を決定する場合には、あらかじめ当該労働者の意見を聴き、十分な話し合いを通じて了解が得られるよう努めることが求められます。
なお、医師から提供される情報は就業上の措置に必要な最小限の範囲に限定されます。診断名、検査値、具体的な愁訴の内容等の生データは事業者に提供してはいけません。面接指導結果の記録は事業場で5年間保存する義務があります。
面接指導以外の相談対応
高ストレスと判定されても面接指導を申し出ない労働者も、高ストレスの状態で放置されることがないよう、以下のような相談窓口を案内することが重要です。
- 厚生労働省運営「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳」(電話・SNS・メールによる無料相談)
- 委託先の外部機関が提供する相談サービス
- 自社内にカウンセラーなどによる健康相談の体制がある場合はその窓口
相談内容が会社に知られず匿名性が担保されていることを確認のうえ、案内するようにしてください。
ポイント
- 高ストレス者から申出があれば面接指導は義務
- 地産保の無料面接指導支援を活用できる
- 面接指導を選ばない高ストレス者への相談窓口案内も必要
⑤ 集団分析と職場改善|実施して終わりにしないため
集団分析とは
集団分析とは、個人結果をそのまま見るのではなく、部署・職種・チームなど一定の集団単位で集計・分析することです。集団分析の単位は、原則として実際の受検者数(在籍者数ではなく)10人以上が目安です。10人を下回る集団については、原則として集団分析結果の提供を受けてはいけません。
なお、集団分析・職場環境改善は、事業場規模に関わらず努力義務とされています。集団分析結果は経年変化を見て職場のストレス状況を把握・分析することも重要であるため、事業者が5年間保存することが望まれます。
職場改善の具体例
集団分析の結果からは、たとえば以下のような改善につなげられます。
- 特定部署に業務集中があるなら業務配分を見直す
- 上司支援が弱いなら1on1や相談ルートを整える
- 長時間労働が常態化しているなら残業管理を厳格化する
- 騒音・照明・温度などの作業環境に問題があるなら設備を改善する
- 同僚間のコミュニケーション不足があるなら情報共有の仕組みを整える
ストレスチェック制度は、個人の問題として終わらせず、職場の原因に手を入れることに価値があります。
やらない場合のリスク
集団分析・職場改善を行わないと、制度は単なる年1回の調査で終わってしまいます。結果として、高ストレス者が毎年出続ける、離職や休職が減らない、制度への不信感が高まるといったリスクがあります。
ポイント
- 集団分析の単位は実際の受検者数10人以上
- 集団分析結果は5年間保存が望ましい
- 職場改善まで行って初めて制度の意味がある
⑥ 守るべきルール|不利益取扱いの禁止
事業者が、ストレスチェックや面接指導において把握した労働者の健康情報等に基づき、当該労働者の健康の確保に必要な範囲を超えて不利益な取扱いを行うことは禁止されています。
具体的に行ってはいけない行為は以下のとおりです。
- 面接指導の申出をしたことを理由とした不利益な取扱い(法律で禁止)
- ストレスチェック結果のみを理由とした不利益な取扱い
- ストレスチェックを受けないことを理由とした不利益な取扱い(懲戒処分を含む)
- ストレスチェック結果を事業者に提供することに同意しないことを理由とした不利益な取扱い
- 面接指導の結果を理由とした解雇・雇い止め・退職勧奨・不当な配置転換・職位変更
ポイント
- 受検しないことを理由に懲戒処分することは法の趣旨に反する
- 面接指導を申し出たことで不利益が生じることは一切あってはならない
よくある質問(Q&A)
Q1. 50人未満の小規模事業場のストレスチェックはいつから義務になりますか?
2025年5月14日に改正労働安全衛生法が公布され、50人未満の事業場にも義務化されることが決まりました。施行日は「公布後3年以内に政令で定める日」とされており、遅くとも2028年5月までに施行されることとされています(具体的な施行日は今後政令で定められます)。
Q2. パートやアルバイトもストレスチェックの対象になりますか?
はい、雇用形態にかかわらず①1年以上の契約(見込みを含む)、②週の労働時間が通常の労働者の4分の3以上、の両要件を満たす場合は対象です。ただし、週の労働時間が2分の1以上4分の3未満の場合は義務対象外ですが、実施することが望まれます。
Q3. 派遣労働者のストレスチェックは誰が実施しますか?
派遣元事業者が実施義務を負います。派遣先には実施義務はありませんが、集団分析の観点から連携することが望まれます。
Q4. 実務担当者と実施者・実施事務従事者の違いは何ですか?
実務担当者は事業場内で委託先との連絡調整や実施管理を担う役割で、個人の健康情報は扱いません。実施者は委託先の有資格者(医師・保健師など)で調査票の選定や高ストレス者の評価を行います。実施事務従事者は実施者の指示のもと調査票の回収・データ入力・個人結果の保存などを担います。実施者と実施事務従事者には守秘義務が課せられます。
Q5. 小規模事業場でも自社でストレスチェックを実施できますか?
可能ですが、原則として外部委託が推奨されています。自社で実施する場合は、社長や人事部長などは実施の事務に従事できない、実施者・実施事務従事者への守秘義務の徹底、個人結果の厳格な情報管理など、非常に慎重な運用が求められます。
Q6. ストレスチェックを受けない従業員がいた場合、懲戒処分にできますか?
できません。労働者には受検義務がなく、就業規則でストレスチェックの受検を義務付けたり、受けないことを理由に懲戒処分を行うことは法の趣旨に反します。あくまで受検を勧奨する形で対応してください。
Q7. 会社は個人のストレスチェック結果を見ることができますか?
本人の同意がない限り見ることはできません。個人結果は実施者から本人へ直接通知されます。また、個人結果の保存は原則として委託先の外部機関が行います。
Q8. 高ストレスと判定された従業員が面接指導を希望しない場合はどうすればいいですか?
面接指導は本人の申出が起点であるため、強制はできません。ただし、高ストレスの状態で放置されることがないよう、「こころの耳」などの相談窓口や委託先が提供する相談サービスを案内することが重要です。
Q9. 面接指導後に解雇や配置転換をすることはできますか?
面接指導の結果を理由とした解雇・雇い止め・退職勧奨・不当な動機による配置転換・職位変更は禁止されています。就業上の措置は医師の意見に基づき、労働者の実情を考慮して行うものです。
Q10. 労働基準監督署への報告は必要ですか?
常時50人以上の労働者を使用する事業場に報告義務があります。ただし、労働時間数が短いアルバイトやパートも含めた「常時使用している労働者」が50人以上となる場合は報告が必要になりますので、人数カウントには注意が必要です。
Q11. 集団分析は必ず実施しなければなりませんか?
集団分析・職場環境改善は努力義務であり、法令上の強制ではありません。ただし、ストレスチェック制度の本来の目的である職場環境改善につなげるために非常に重要です。また、集団分析の単位は実際の受検者数10人以上が原則で、10人未満の集団については原則として個人が特定されないよう配慮し、提供は控える必要があります。
Q12. 地域産業保健センターとはどのような機関ですか?
厚生労働省所管の独立行政法人労働者健康安全機構が運営する支援機関で、全国350か所に設置されています。50人未満の事業場を優先して、医師の面接指導のほか、定期健康診断結果の医師の意見聴取などを無料で提供しています。
まとめ|小規模事業場こそ早めの対応が重要
小規模事業場のストレスチェックは、2025年改正で義務化の方向が明確に確定しました。施行日はまだ政令待ちですが、実務としてはすでに「準備フェーズ」に入っています。
特に重要なのは、外部委託を前提とした体制づくりと、プライバシー保護の設計を最初から丁寧に行うことです。小規模事業場ほど人間関係が近く、「結果が会社に知られるのでは」という不安が受検率に直結します。方針表明・社内ルール整備・委託先選定を早めに整えておくことが、制度を定着させるカギになります。
放置すると、施行直前に慌てるだけでなく、メンタル不調の予防、離職防止、職場改善の機会も逃します。だからこそ、小規模事業場こそ早めの対応が重要です。
「さんぽみち」運営元、ドクタートラストのストレスチェックサービスは、小規模事業場のストレスチェック実施の実績も豊富です。
初めての導入を検討している方も、現在の委託先の見直しを考えている方も、まずは資料請求や無料相談・お見積りからお気軽にご利用ください。
<参考>
・ 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(令和8年2月)」
・ 厚生労働省「改正労働安全衛生法(令和7年公布)」
・ 厚生労働省「社内ルール例・社内規程例」
・ 厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(令和3年2月改訂)」
・ 労働者健康安全機構「地域産業保健センター利用案内」
・ こころの耳「面接指導について」
・ こころの耳「相談窓口」







