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働き方・産業保健

【保健師監修】ストレスチェックは意味ない?本当の効果はメンタルヘルス不調の予防にあり!

2015年以降義務となったストレスチェックですが、メンタルヘルス対策における本来の目的を知らないまま実施している企業も少なくありません。
ストレスチェックはメンタルヘルス対策において大きな役割を担います。
しかし、本来の目的を知らないままでは、その効果を最大限に発揮できているとはいえません。
この記事では、ストレスチェックの本来の目的であるメンタルヘルス不調の予防について解説します。

ストレスチェックの目的はメンタルヘルス不調の「予防」

ストレスチェックの大きな目的はメンタルヘルス不調の未然防止です。
高ストレス者を見つけだすことが第一の目的だと思っている方が多いのですが、実はそうではありません。
ストレスチェックの目的は、自身で気がつきにくい「自分が感じているストレス」を自覚することで、セルフケアや自発的なカウンセリングなどの行動を促す点にあります。
つまり、ストレスチェックは実施すること自体に意味があり、もし結果的に高ストレス者がいなかったとしても、メンタルヘルスケアの一次予防として十分な役割を果たしているのです。

メンタルヘルスケアにおける3つの段階とは

メンタルヘルスケアを考えるうえで重要な3つの段階が存在します。

一次予防=メンタルヘルス不調の未然防止
二次予防=メンタルヘルス不調となってしまった従業員の早期発見と適切な対応
三次予防=メンタルヘルス不調によって休職してしまった従業員の復職支援

この3つの段階それぞれの充実が、効果的なメンタルヘルスケアには欠かせません。

ストレスチェックは、従業員自身のストレスへの気づきを促し、セルフケアにつなげていくことができるため、非常に優秀な一次予防です。
くわえて、高ストレス者を見つけだすこともできるため、二次予防も期待できます。
つまり、一次予防と二次予防の両方の効果が期待できるストレスチェックはメンタルヘルス対策において、非常に重要な施策といえるでしょう。

そのほかのストレスチェックを実施する目的

ストレスチェックは、従業員自身ではわからないストレスへの気づきを促すという点以外にも、いくつかの目的・メリットが存在します。
それぞれ詳しく解説します。

高ストレス者を見つける

高ストレス者を見つけだして適切なケアを実施する点もストレスチェックの大きな目的です。
前述のとおりストレスは自分では気がつきにくく、メンタルヘルス不調の自覚症状が出たときにはすでにうつや適応障害が発症しているケースも少なくありません。
ストレスによってうつや適応障害が発症してしまうと、症状の程度・内容により期間は変動しますが、1カ月以上の休養は必要になります。
また、その人の人生にも大きな影響を与えてしまうでしょう。
こうした事態を防ぐためにはストレスチェックによる早期発見が重要です。

職場環境改善

ストレスチェックの結果から集団分析を行うことで、効果的な職場環境改善につなげていくことができます。
集団分析では、ストレスチェックの結果を部署や年齢層、男女などの集団ごとに分析し、ストレス傾向を把握できるため、より改善が必要な集団を見つけだすことが可能です。
ただ漠然と職場環境改善のために施策を行うのではなく、必要な場所に適切な施策を実施できるので、より高い効果が期待できるでしょう。

50人以上の事業場において、ストレスチェックは義務化されている一方で、集団分析の実施は義務ではありません。
しかし、ストレスチェックと並んでメンタルヘルス対策に大きな効果を発揮するため、必ず実施することをおすすめします。

メンタルヘルス対策としてストレスチェックを実施する際の注意点

メンタルヘルス対策として非常に優秀なストレスチェックですが、その実施にはいくつか注意点があります。
運用の仕方によっては、企業に不利益を与える場合もあるため、しっかりと確認しておきましょう。

情報の取り扱い

ストレスチェックの結果は個人情報となるため、その取扱いには十分注意しなくてはいけません。
基本的にストレスチェック結果を知ることができるのは本人と実施者のみです。
事業者であっても本人の了承なしに結果が共有されることはありません。

(心理的な負担の程度を把握するための検査等)
第66条の10
<中略>
2 事業者は、前項の規定により行う検査を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該検査を行つた医師等から当該検査の結果が通知されるようにしなければならない。この場合において、当該医師等は、あらかじめ当該検査を受けた労働者の同意を得ないで、当該労働者の検査の結果を事業者に提供してはならない。
出所:労働安全衛生法

また、その情報の保管についても労働安全衛生法内で、適切な収集と保管、使用が求められています。

(心身の状態に関する情報の取扱い)
第104条 事業者は、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置の実施に関し、労働者の心身の状態に関する情報を収集し、保管し、又は使用するに当たつては、労働者の健康の確保に必要な範囲内で労働者の心身の状態に関する情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。ただし、本人の同意がある場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。
2 事業者は、労働者の心身の状態に関する情報を適正に管理するために必要な措置を講じなければならない。
3 厚生労働大臣は、前二項の規定により事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
4 厚生労働大臣は、前項の指針を公表した場合において必要があると認めるときは、事業者又はその団体に対し、当該指針に関し必要な指導等を行うことができる。
出所:労働安全衛生法

情報管理が徹底されていることが社内に周知されれば、従業員もストレスチェックを受けやすくなるでしょう。

実施方法や実施日程

ストレスチェックは対象となる従業員全員の受検が望ましいですが、実施方法や実施日程によっては大きく受検率を下げてしまう可能性もあるため注意が必要です。
ストレスチェックの受検方法はマークシート方式とWeb方式があります。
基本的にはWeb方式のほうが受験率が高い傾向にありますが、事業場の業務内容や年齢層などによってはマークシート方式が適している場合もあるでしょう。

また、実施日程についても事業場の繁忙期は避けるなどの配慮が必要です。
受検期間についてもあまりに長く設定してしまうと「いつでも受けられるから……」という心理が働き、受検率が落ちてしまう傾向にあります。
一般的には、1~2週間の受検期間が適切とされています。

ストレスチェックの目的を周知する

ほとんどの従業員は、ストレスチェックを実施する目的を知らず、実施してもただなんとなく受検して終わってしまい、十分に効果が得られない可能性があります。
なぜストレスチェックを実施するのかを周知することで、従業員がより自分のストレスに目を向けるきっかけになるでしょう。

メンタルヘルス不調者が見当たらないときこそストレスチェックを

事業場内にメンタルを崩している様子の従業員がいないと、ついついストレスチェックをおざなりにしがちです。
しかし、ストレスチェックの本当の目的はメンタルヘルス不調の未然防止にあり、メンタルヘルス不調者がいないときにこそ積極的に実施したい施策です。
ストレスチェックによって自身のストレスへの気づきを促し、効果的なセルフケアや集団分析による職場改善につなげていきましょう。

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