目次
なぜ今、従業員のメンタルヘルス対策が必要なのか
職場におけるメンタルヘルス不調の現状
近年、働き方改革や社会環境の変化により、従業員のメンタルヘルスへの関心が急速に高まっています。
2024年7月26日に厚生労働省が公表した「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」の結果によれば、仕事や職業生活に関する強い不安やストレスを抱える労働者の割合は82.7%であり、職場での精神的負担は決して軽視できない問題です。
メンタル不調が企業に与える影響
メンタルヘルス不調は、単なる個人の問題ではありません。
休職・離職のリスクを高めるほか、職場全体の生産性低下、チームワークの悪化、さらには企業の社会的評価の低下にもつながる可能性があります。そのため、企業としての対策が不可欠です。
産業医とは?メンタルヘルスにどう関わるのか
産業医の役割と義務
産業医とは、労働者の健康を守る専門医であり、労働安全衛生法に基づき選任される医師です。
常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医の選任が労働安全衛生法により義務づけられています。
産業医が対応できるメンタルヘルス支援とは
産業医は、健康診断の実施や職場巡視のほか、長時間労働者やメンタル不調者との面談も行います。
メンタルヘルスに関しては、早期の気づきや休職・復職支援、職場環境の改善提案などを通じて、企業と連携しながら従業員をサポートします。
産業医と精神科医の違いを正しく理解する
診断・治療の可否と範囲
メンタルヘルス対策においては、産業医と精神科医の役割分担への理解が重要です。
精神科医は診断・治療の専門家であり、医療機関での治療行為を担います。
一方、産業医は職場環境との関わりに焦点を当て、労働者の就業可否の判断や就業上の配慮提案を行います。
両者の専門性と企業における活用法
産業医は医師資格を持っていますが、企業内での産業医活動においては診断・治療を行うことは通常なく、主に就業上の健康配慮やフォローに特化しています。
つまり、精神科医と産業医は対立するものではなく、連携して従業員を支える関係にあるのです。
産業医によるメンタルヘルス対応の実際
産業医面談の流れと目的
産業医面談は、主に以下のような流れで行われます。
まず、本人からの申し出や上司からの相談などを受け、面談を設定。産業医は本人の訴えを丁寧に聴取し、必要に応じて就業上の意見書を発行します。
面談での注意点と従業員対応のコツ
原則として、本人の同意なしに詳細な健康情報が企業に開示されることはありません。ただし、生命や安全に関わる重大なケースでは、最小限の情報が共有される場合もあります。
そのうえで、業務量の調整や時短勤務など、具体的な配慮策を提案することが可能です。
産業医からの意見書や就業配慮指示の活かし方
意見書を受け取った企業側は、それをもとに人事部や上司が調整を行い、従業員が安心して働ける環境を整える必要があります。
これにより、職場復帰の円滑化や長期的な就業継続につながります。
企業としてのメンタルヘルス対策の進め方
健康経営とメンタルヘルスケアの関係
メンタルヘルスは、健康経営の重要な柱の一つです。
企業の持続的成長には、従業員の心身の健康が欠かせません。
社内制度や職場環境の見直し
ストレスチェックの実施や、休職・復職に関する明確なガイドラインの策定、長時間労働の是正、パワハラ対策などが求められます。
従業員への教育・研修の必要性
メンタルヘルスに関する基礎知識やセルフケア方法を学ぶ研修の導入は、不調の予防と早期発見に効果的です。
「ラインケア」など管理職への対応力強化研修もあわせて行うと良いでしょう。
産業医を選ぶときのポイントと連携方法
産業医選定のチェックリスト
適切な産業医の選定は、メンタルヘルス対策の成否を左右します。以下のような視点でチェックしましょう。
- メンタル対応の経験
- コミュニケーション力
- 労務・法的知識の有無
社内でうまく機能させるためのコツ
多くの産業医は外部の医師(嘱託)として契約されていますが、社内との連携を深めることで、より実効性のあるメンタルヘルス対応が可能になります。
人事や労務との密な連携が、対応のスムーズさに直結するといえます。
企業として今後すべきこととは
これからの企業は、「従業員の心の健康を守ること」が競争力に直結する時代に突入しています。
産業医の力を上手く活用しながら、メンタルヘルス対策を単なる義務ではなく、企業価値向上の戦略の一部として取り組んでいく必要があります。
定期的な制度の見直し、経営層の理解と関与、全社的な啓発活動を通じて、心身ともに健康に働ける職場づくりを進めていきましょう。
また「さんぽみち」運営元のドクタートラストでは、全国で産業医紹介サービスを提供しています。
メンタル不調者面談の経験豊富な産業医がいい、ストレスチェックにも対応できる産業医を紹介してほしいなどのご要望もお受けしています。
ぜひお気軽にお問合せください。
<参考>
・厚生労働省「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」