近年、業務の複雑化やコロナウイルスの流行によって、心身にトラブルを抱える従業員の増加を背景に、「EAP(従業員支援プログラム)」という言葉に注目が集まっています。
本記事では、EAPとは何か、その効果・導入の流れ・メリットまでをわかりやすく解説します。
EAP導入を検討中の企業担当者の方はぜひ参考にしてください。
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目次
EAP(従業員支援プログラム)とは
EAP(従業員支援プログラム)とは生産性の向上や健康経営、従業員個人の健康などを守るための支援の総称です。
Employee Assistance Program(エンプロイーアシスタンスプログラム)の頭文字を取ったもので、日本語訳すると「従業員支援プログラム」となります。
一般社団法人国際EAP協会は、専門家の手によって以下の2つのサービスが提供されるものがEAPであると定義しています。
・職場の生産性、健全な運営の維持及び向上、またその組織ニーズの提言をする
・人間の行動とメンタル上の健康に関する専門家のノウハウを通じてサービス行う出所元:一般社団法人国際EAP協会『EAPの定義とEAPコアテクノロジーについて』
また、EAPは単にメンタルヘルスに向けた支援に留まらず、身体の健康や家族、経済問題、アルコール、薬物、法律、感情、ストレスなど仕事の結果に影響を及ぼしうるさまざまな問題の解決を、専門家のサポートによって実現していきます。
EAP(従業員支援プログラム)の具体的な内容は?
EAP(従業員支援プログラム)とは具体的にどんな支援を指すのでしょうか。
さまざまなサポートがあるなかで、代表的な支援をいくつかご紹介します。
ストレスチェック
ストレスチェックもEAPのひとつです。
EAPに限らずメンタルヘルス対策全般において、ストレスチェックによって一次予防を促すのは非常に重要です。
また、ストレスチェックの結果から集団分析を行うことで、事業場内のストレス状況を把握できるため、より精度の高い支援が可能になります。
50人以上の事業場ではストレスチェックの実施が義務となっているため、実施している企業も多いのではないでしょうか。
セミナー
事業場内での問題やストレスチェック結果にもとづくセミナーの実施もEAPです。
とくに、管理職に向けて、職場環境の改善やパフォーマンス向上、どうやって社員と関わっていくかなど、有効なサポートを実施できるための訓練は基本的なEAPの支援のひとつです。
相談窓口の設置
EAPには、従業員が自身の問題について相談できる窓口の設置も含まれます。
改正労働施策総合推進法の施行によって相談窓口を設置する事業場が増えましたが、ただ設置するだけではEAPとはいえません。
専門的な知識をもった者がしっかりとカウンセリングできる環境を整え、迅速に事後対応を行うことがEAPにおいて重要です。
組織構築のサポート
EAPを実施するためには専門家の知識が欠かせません。
そのため、産業医や産業保健師などの専門家を加えた、企業内の産業保健全般を担う組織の構築も非常に重要です。
内部EAPと外部EAPについて
EAP(従業員支援プログラム)には内部EAPと外部EAPが存在します。
それぞれの特徴を下記にまとめました。
| 項目 | 内部EAP | 外部EAP |
| 費用 | 高い(人件費) | 比較的安い |
| 対応スピード | 迅速 | 少し遅い |
| 専門性 | 課題に特化した選任 | 幅広い専門家に相談可能 |
| 利用しやすさ | 社内で気軽 | 社内で話しづらい悩みにも対応可能 |
内部EAPでは企業内にEAPの専門家が常駐しているため、常にカウンセリングなどを行える体制が整っています。
問題が起こった時に迅速に対応できるほか、社内の状況を理解した専門家に相談できるので従業員が安心して利用することができるでしょう。
内部EAPと比べて迅速さは劣りますが、コストを大きく抑えることが可能です。
また、社内では言いにくい悩みも外部窓口であれば相談してくれるかもしれません。
外部EAPを提供している機関は数多くあるため、自社の状況や問題から連携する機関を適切に選択することが大切です。
EAP(従業員支援プログラム)のメリット
EAP(従業員支援プログラム)は従業員と事業者それぞれに大きなメリットがあります。
職場内のストレス状況を把握できる
職場内のストレス状況を把握できる点は大きなメリットです。
当たり前ですがストレスは目に見えません。
気がついたときには休職や退職を余儀なくされるケースも少なくないため、社内のストレス状況を可視化できるストレスチェックなどのEAPは非常に有用です。
また、集団分析を併せて行うことで、従業員に対して的確な支援を行うことができます。
生産性を改善・向上させる
生産性の向上はEAPの大きな目的のひとつです。
心身に問題によるメンタルヘルスの悪化は不注意やミス、集中力の低下を招き、大きく生産性を下げます。
場合によっては、取り返しのつかない大事故につながるケースも少なくありません。
EAPによって問題を解決していくことで、良好なメンタルヘルスを保てるため、従業員は本来の力を発揮できるようになるでしょう。
それだけでなく、職場環境への支援によって、通常よりも高いパフォーマンスを引き出せるかもしれません。
メンタルヘルス問題の予防
メンタルヘルス問題は起こってからの対応も重要ですが、予防も非常に大切です。
EAPによって、企業の産業保健体制を整え、ストレスチェックなどを行うことでメンタルヘルス問題の予防につながります。
こうしたメンタルヘルス問題の予防は離職率の低下に直結します。
また、従業員が安心して働ける環境につながるため、企業に愛着をもって働く人が増えるでしょう。
企業イメージの向上
EAPを充実させていくことで企業イメージの向上も期待できるでしょう。
たとえば、EAPを積極的に行い経済産業省が認定している健康経営優良法人を取得すれば社内外に「従業員を大切にする会社である」というメッセージを発信することができます。
企業イメージは採用に大きく影響するため、企業運営にも直接関わってくるでしょう。
EAPサービスを比較するときの7つのポイント
EAPサービスは提供企業によって内容や料金体系が大きく異なります。自社に最適なサービスを選ぶために、以下の7つのポイントで比較しましょう。
1. 対応できる相談内容の幅
EAPサービスによって対応できる相談内容は異なります。
- メンタルヘルスのみ対応
- 身体の健康、家族、経済問題、法律相談など幅広く対応
比較ポイント: 従業員の悩みが多様な場合は、幅広い相談に対応できるサービスを選びましょう。
2. 相談員の専門性・資格
相談員の質はEAPの効果を左右します。
- 保健師、精神保健福祉士、公認心理師などの国家資格保有者
- 資格のない相談員が対応している可能性も
比較ポイント: 相談員の資格や経験年数を必ず確認しましょう。
3. 相談方法の多様性
従業員の働き方に合わせて、相談方法が選べるかも重要です。
- 電話相談
- メール相談(24時間受付)
- オンライン相談(ビデオ通話)
- 対面相談
比較ポイント: テレワークが多い企業は、オンライン対応の充実度を確認しましょう。
4. 産業医・産業保健スタッフとの連携
EAPサービス単体ではなく、産業医や産業保健スタッフとの連携体制があるかも重要です。
- 相談内容を産業医面談につなげられるか
- ストレスチェック結果と連動した支援ができるか
比較ポイント: すでに産業医契約がある場合は、連携のしやすさを確認しましょう。
5. 料金体系と費用対効果
EAPサービスの料金体系は大きく分けて2種類あります。
- 従業員数課金型:従業員1人あたり月額〇円
- 定額制:相談件数に関係なく月額固定
比較ポイント: 従業員規模や利用頻度に応じて、どちらが費用対効果が高いかを試算しましょう。
6. 導入実績と評判
導入実績が豊富なサービスは、ノウハウが蓄積されており安心です。
- 導入企業数
- 業種(同業他社の導入実績があるか)
- 利用者の満足度
比較ポイント: 可能であれば、実際に導入している企業の事例を確認しましょう。
7. サポート体制の充実度
導入後のサポート体制も比較ポイントです。
- 従業員への周知資料の提供
- 利用状況レポートの提供
- 効果測定のサポート
比較ポイント: 導入後の運用支援が手厚いサービスを選ぶと、社内負担が軽減されます。
EAPサービスの選び方【企業規模・課題別】
自社の規模や抱えている課題によって、最適なEAPサービスは異なります。
以下を参考に選びましょう。
従業員50人未満の小規模企業
課題: 予算が限られている、社内に産業保健体制がない
おすすめのEAPサービス:
- 低コストで導入できる外部EAP
- 産業医紹介とセットになったサービス
- メール相談メインで初期費用が抑えられるもの
選び方のポイント: まずは最低限の相談窓口を設置し、従業員の利用状況を見ながら拡充していく
従業員50〜300人の中規模企業
課題: ストレスチェック義務化に対応しつつ、メンタルヘルス対策を強化したい
おすすめのEAPサービス:
- ストレスチェック代行とセットになったサービス
- 産業医面談につなげやすい連携型EAP
- 電話・メール・オンライン対応が充実しているもの
選び方のポイント: ストレスチェック結果と連動した支援体制を構築する
従業員300人以上の大規模企業
課題: 多様な働き方に対応した支援、組織全体のメンタルヘルス対策
おすすめのEAPサービス:
- 相談内容が多岐にわたる総合型EAP
- 管理職向け研修やラインケアサポートも含むもの
- 利用状況レポートが充実しているサービス
選び方のポイント: 組織分析や職場環境改善提案まで含めた包括的なサービスを選ぶ
メンタル不調者が増えている企業
課題: 休職者・離職者の増加、復職支援の必要性
おすすめのEAPサービス:
- 産業医・精神科医と連携できるサービス
- 休職・復職支援プログラムが充実しているもの
- 24時間対応の緊急相談窓口があるもの
選び方のポイント: 早期発見・早期対応ができる体制を優先する
EAP(従業員支援プログラム)の導入前に行うべきこと
EAP(従業員支援プログラム)はメリットが非常に多く、とくにストレス社会といわれる現代の日本において、その重要性はより高まっていくでしょう。
しかし、むやみやたらにEAPを導入すればいいというものでもありません。
ここでは、効果的にEAPを導入するために必要な事前準備について解説します。
EAP導入の目的を決める
なぜEAPを導入するのかをしっかりと見定めましょう。
単に「他社が実施しているから……」などの理由で導入しても、大きな効果は得られません。
大切なのはEAPを導入して企業をどうしていきたいかです。
企業の問題を自覚し、目的を明確にしていけば、おのずとどんなEAPを導入すべきかがはっきりとしていくでしょう。
KPIを決める
EAP導入の目的がはっきりとしたのであれば、KPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)も決めておきましょう。
KPIを決めていないと「なんとなく効果がある気がする」「なんとなく意味がないかも」など、非常にあいまいな状態でEAPを進めていかなくてはいけません。
EAPにおいても、しっかりと振り返りを行い、PDCAを回していく作業は必須です。
目的ごとにKPIを明確に設定し、適切な評価を下せるように準備しておきましょう。
EAPサービスの企業選定
ほとんどの企業はEAPを導入するときには、外部EAPサービスを利用しています。
メンタルヘルス対策の重要性の高まりに伴って、EAPを提供する企業の数も非常に増えてきており、企業選定が難しくなってきています。
EAPサービスを選定する際は、複数のサービスを比較検討することが重要です。以下の3つの観点で比較しましょう。
サービス内容を比較する
各社のEAPサービスは内容が大きく異なります。
- 相談対応の範囲(メンタルのみ or 幅広い悩みに対応)
- 相談方法(電話・メール・オンライン・対面)
- 産業医・産業保健スタッフとの連携の有無
- ストレスチェックや研修との連動性
複数社のサービス内容を比較し、自社の課題に最も適したものを選びましょう。
コストを比較する
料金体系はサービスによって異なります。
- 従業員1人あたり月額〇円の従業員数課金型
- 月額固定の定額制
- 初期費用の有無
見積もりを複数社から取得し、費用対効果を比較することが重要です。
専門家の質を比較する
企業によっては資格のない人がカウンセリングなどの対応を行っている可能性もあるため、専門家の質についても確認することが必要です。
- 保健師、精神保健福祉士、公認心理師などの国家資格保有者が対応しているか
- 相談員の経験年数
- 研修体制の充実度
複数社を比較する際は、相談員のプロフィールや経歴を確認しましょう。
外部EAPサービスによって提供している支援内容もコストも異なります。
自分たちの抱える問題にマッチしたサービスが提供されているかをしっかりと確認して、見積もりを行い、比較検討を必ず行いましょう。
また、企業によっては資格のない人がカウンセリングなどの対応を行っている可能性もあるため、専門家の質についても確認することが必要です。
EAP導入の流れ(ステップごとに解説)
EAP(従業員支援プログラム)は、導入の流れを理解しておくことでスムーズに運用を始めることができます。ここでは、一般的な導入までのステップを5段階に分けて解説します。
STEP1:課題の明確化
まずは、自社の現状や課題を整理しましょう。
「従業員のメンタル不調が増えている」「相談窓口を設けたいが社内に専門人材がいない」など、導入目的を明確にすることで、最適なEAPサービスを選定しやすくなります。
STEP2:サービス内容の比較・選定
EAPは提供企業によって、サポート内容や対象範囲が大きく異なります。
以下の観点で複数社を比較し、自社の規模やニーズに最も合ったサービスを選びましょう。
比較すべきポイント:
- カウンセリング対応の有無・範囲
- 産業医・公認心理師との連携体制
- 相談方法(電話・メール・オンライン・対面)
- 料金体系(従業員数課金 or 定額制)
- 導入実績(同業他社の事例)
- サポート体制(周知資料・利用状況レポートの提供)
見積もりは最低でも2〜3社から取得し、サービス内容と料金を比較検討することを推奨します。
カウンセリング対応の有無、産業医・公認心理師との連携、オンライン対応の可否などを比較検討し、自社の規模やニーズに合ったサービスを選びましょう。
STEP3:契約・導入準備
導入が決まったら、契約や従業員への周知を行います。
EAPを効果的に活用するためには、従業員に「安心して利用できるサービスである」と認識してもらうことが大切です。守秘義務や利用方法などを丁寧に説明しましょう。
STEP4:運用開始・相談受付
運用がスタートすると、カウンセリングや外部相談窓口を通じて従業員の悩み相談を受け付けます。
職場のストレス要因や組織課題の傾向を把握できるよう、定期的に利用状況を確認することも重要です。
STEP5:効果測定と継続的改善
導入後は、利用者の満足度やメンタル不調の減少率などをもとに効果を測定しましょう。
必要に応じて支援体制を見直すことで、EAPをより効果的に運用できます。
ドクタートラストではEAPサービスを提供
「さんぽみち」編集元であるドクタートラストでは、産業医の紹介のほかにもストレスチェックの代行や外部相談窓口の提供などのEAPサービスも提供しています。
外部相談窓口EAPサービス「アンリ」では、24時間メールにて相談を受け付けており、そのほかにも電話やオンラインでの相談も可能です。
また、対応する相談員は保健師や精神保健福祉士、公認心理士、保育士などの国家資格所有者であり、相談者の希望があれば直ちに産業医面談へとつなぐこともできます。
「自社でEAPを導入したい」「メンタルヘルス対策を始めたい」という方は、無料相談・資料請求からお気軽にお問い合わせください。
よくある質問
Q1. EAP(従業員支援プログラム)とは何ですか?
従業員のメンタル・身体・家庭・仕事上の問題など、幅広い課題を専門家が支援し、健康経営や生産性向上につなげる総合的なサポートプログラムです。
Q2. EAPを導入するメリットは?
離職率の低下、生産性の向上、企業イメージの改善などが期待できます。
Q3. EAPの導入費用はどのくらい?
サービス内容によって異なりますが、株式会社ドクタートラストが提供する外部EAPサービス「アンリ」は月額11,000~導入が可能です。
Q4. EAPとストレスチェックの違いは?
ストレスチェックはEAPの一部です。EAPはメンタル支援全体を指し、ストレスチェックはその中の診断的な施策です。
Q5. 外部EAPと内部EAP、どちらがいい?
コストを抑えたい企業は外部EAP、常駐サポートを重視する企業は内部EAPが向いています。
Q6. EAPサービスを選ぶ際、何社くらい比較すればいいですか?
最低でも2〜3社を比較することを推奨します。サービス内容、料金体系、相談員の質、産業医との連携体制など、多角的に比較することで自社に最適なサービスが見つかります。可能であれば、実際に導入している企業の事例も確認しましょう。
Q7. EAPサービスの料金相場はどのくらいですか?
従業員数課金型の場合、1人あたり月額300〜1,000円程度が相場です。定額制の場合、月額1〜5万円程度が一般的です。ただし、サービス内容や対応範囲によって大きく異なるため、複数社から見積もりを取得して比較することが重要です。









