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健康診断は会社の義務であり、基本的にその費用は会社が負担します。
しかし、「健康診断にかかる費用の総額はどのくらいなのか」「産業医や保健師は必要なのか」「再検査の費用はどちらが払うのか」などの疑問を持っている人事労務担当者も多いのではないでしょうか。
この記事では、健康診断の費用はどれくらいか、会社と従業員、どちらか支払うのか、などについて詳しく解説します。
目次
健康診断の費用は会社負担? 保険は適用される?
健康診断の実施は労働安全衛生法で定められた会社の義務です。
(健康診断)
第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。
出所:労働安全衛生法
会社が労働者に健康診断を実施する場合、その費用はどちらが負担するのでしょうか。
一般健診の費用は全額会社負担
健康診断は法令で定められている会社の義務なので、その費用については会社が全額負担します。
13 健康管理
<中略>
(2) 第66条関係
イ 第1項から第4項までの規定により実施される健康診断の費用については、法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものであること。
出所:労働安全衛生法および同法施行令の施行について
健康診断の費用は保険適用なし
健康診断は自由診療となるため、保険適用はありません。
そのため、費用は医療・健診機関ごとに異なります。
1人あたり平均して5,000~15,000円で健診を受け付けている場所が多く、一人ひとり健康診断を受けると高額な費用がかかるため、企業向けの定期健診をおこなっている医療・検診機関の選択が望ましいでしょう。
オプション検査の費用は自己負担の場合も
労働安全衛生規則で定められた診断項目以外のオプションについては、会社が負担する義務はありません。
そのため、全額自己負担になる場合や本人と企業でそれぞれ負担する場合、健康保険組合がそれぞれ負担する場合など、企業ごとに異なります。
ただ、産業医が就業判定をするために胃カメラや乳がん検査、子宮頸がん検査を実施する場合は、会社が費用を負担すべきです。
オプション検査の費用については、事前に詳細を安全衛生委員会で取り決め、就業規則へ記載しておくのがより丁寧で望ましいでしょう。
健康診断費用は再検査分も会社が負担すべき?
健康診断の結果、異常な所見が認められたときには「要再検査」「要精密検査」を勧める通知がくる場合があります。
社員が再検査をするときの費用は会社が負担すべきなのでしょうか。
再検査の費用負担は会社の判断による
再検査については会社と労働者ともに義務ではないため、必ずしも費用を会社が負担する必要はありません。
しかし、会社には安全配慮義務があります。
(労働者の安全への配慮)
第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
出所:労働契約法
労働者の健康を守るために、再検査が必要とされた項目については受診勧奨を徹底、必要に応じて再検査費用の一部もしくは全額負担や勤務時間で受検できるようにするなどの配慮をおこないましょう。
ただし、特殊健康診断実施後の再検査については、「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」内で会社に実施義務があるとされています。
したがって、特殊健康診断にて異常な所見が見つかり再検査が必要となった場合、会社が費用の全額を負担しなくてはいけません。
再検査の費用は保険が適用される
再検査の費用については保険適用範囲内となります。
これは、健康診断における異常な所見の確認、または病気の治療とみなされるためです。
再検査をなかなか受検してくれない労働者のなかには、費用面の心配をしている人も多いため、再検査には保険が適用される情報を周知して、再検査への不安を取り除いてあげる取り組みが重要です。
健康診断の受診にかかる賃金や交通費の費用負担はどうなる?
健康診断の受検にかかる費用は会社が負担しなくてはいけませんが、受診するための交通費や受検中の賃金は会社が払うべきなのでしょうか。
健康診断受診中の賃金は払うべき?
一般健康診断については、直接業務に関係する健康診断ではなく、労働者の健康を守る目的で実施するものなので、賃金の支払い義務はありません。
しかし、厚生労働省からの通達では「支払うことが望ましい」とされています。
健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払いについては、労働者一般に対して行なわれる、いわゆる一般健康診断は、一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行なわれるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可決な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと。
出所:労働安全衛生法および同法施行令の施行について
義務ではなくても、受診しない労働者がいた場合に罰せられてしまうのは会社です。
安全配慮義務の観点からも、有給を使用するなどして健康診断を受けやすい環境をつくる取り組みが求められます。
一方で、特殊健康診断は業務を遂行するために実施しなければいけない健康診断なので、賃金の支払いが必要です。
健康診断の受診に必要な交通費は払うべき?
健康診断を受診するために必要な交通費についても、賃金と同じ考え方であり、一般健康診断については実施義務がありません。
しかし、受診率を上げるためには交通費を支払うのも有効な取り組みです。
健康診断にかかる交通費や賃金については、定められた法令がないため、各企業の判断に委ねられています。
そのため、争いのもとになりやすいのも事実です。
事前に就業規則に交通費と賃金についての規定を記載して、労働者への周知を徹底しましょう。
健康診断に必要な産業医・保健師の業務内容や費用は?
健康診断は外部の機関を使用すれば、産業医を選任しなくても実施可能です。
しかし、その後の就業判定や就業措置、保健指導を実施するためには産業医を選任しなくてはいけません。
健康診断は、実施するだけでなくしっかりとした事後措置をおこない、労働者の健康へとつなげていくことが重要であり、健康診断と産業医の選任はセットで考えたほうが良いでしょう。
産業医の業務は健康診断の事後措置だけでなく、高ストレス者面談やストレスチェック、職場巡回など多岐にわたるため、月に1回程度の訪問では手が回らないことがあります。
その場合は、産業保健師を選任し、健康診断の事後措置を含めてカバーしてもらうのが望ましいでしょう。
産業保健師は、保健に関する専門知識を持ち、産業医の業務をサポートすることができます。
しかし、一部に産業保健師がおこなえない業務もあるため、注意が必要です。
料金については企業の規模によって異なります。
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また、50人以下の事業場では産業医の選任義務がないため、事後措置は各都道府県にある産業保健センターの登録産業医などに依頼するのが望ましいでしょう。
まとめ
今回は、健康診断の費用についてわかりやすく解説しました。
健康診断や産業医、産業保健師の選任にかかるコストは安くありませんが、労働者が長く健康に働くためには必要なものであり、将来的には休業や離職のリスクを軽減して大きな利益をもたらします。
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<参考>
厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」