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メンタルヘルスの対応を行うにあたり、参照できるマニュアルがあると頼りになりますよね。
今回は、メンタルヘルス不調のサインが見られた際や相談窓口の利用があった際などに参考となる対応マニュアルをご紹介します。
目次
従業員へのメンタルヘルス対応が必要なのはどんなとき?
メンタルヘルス対策は、予防を含めて常に検討を進めることが望ましいものですが、特に次のような変化が見られた際は介入の好機です。
メンタルヘルス不調のサインに気づいたとき
メンタルヘルス不調のサインをご存知ですか。
次のようなサイトを参考にすることで、メンタルヘルス対応の契機となる従業員の変化を学ぶことができます。
厚生労働省「こころの耳」
メンタルヘルスの変化は言葉や数字に表すことが難しいものです。
気づきを自身の気のせいとせず、ゆくゆくのリスクを想定して取り組むことが望ましいですね。
相手の立場になって想いを想像することもできると、気づきの精度がより上がるでしょう。
相談窓口に相談が寄せられたとき
メンタルヘルスの対応は、企業内外問わず相談窓口の利用があった際にも求められます。
相談窓口を利用するということは、自他ともに何らかの課題があることの現れですから、介入の機会としてはわかりやすいですよね。
相談者の対処を相談窓口の職員に任せきりにせず、企業自らも率先して解決に臨み、メンタルヘルス対策を推進することが効果的です。
従業員へのメンタルヘルス対応に役立つマニュアル
メンタルヘルス対応のマニュアルとして、一般財団法人あんしん財団「中小企業向け心の健康問題を持つ従業員への対応手順マニュアル」(以下、「メンタルヘルス対応マニュアル」)があります。
様々な事例が取り上げられ、企業における対処の参照となりますので内容を見てみましょう。
事前の連絡無く遅刻を繰り返す従業員への対応
遅刻や欠勤は、本人の怠慢から生まれるネガティブな印象があるものですが、その背景には何らかの問題が隠れていることが珍しくありません。
たとえば、睡眠に支障があり起きられず遅刻する際は、その原因を探し解決することが求められます。
一方、朝起きることはできるものの、時間に合わせて行動できないこともあります。
本人がなぜ遅刻をしてしまうのかという要因について、メンタルヘルス対応マニュアルも参考にしながら、本人に慎重に確認することが大切です。
会社から従業員に医療機関の受診をすすめる際の手順について
従業員の意識が散漫である、集中できないなど、明らかに内科や精神科など医療機関受診をすすめたいこともあるものです。
角を立てずに話を進めるにはどうしたら良いか考えますよね。
メンタルヘルス対応マニュアルには、そのようなケースでの対応手順についても記載がされています。
まずは、周囲の方が本人の体調不調に気づいていることを本人に伝えると同時に、体調を心配している気持ちを伝えましょう。
何度かやり取りを繰り返しても受診に至らない際は、可能であれば本人の家族とも連携を取ることが理想的です。
業務上必要な注意にもかかわらず、非常に敏感に反応し激しく怒る従業員への対応
感情的にふるまう相手と同様に感情的になることは逆効果です。
このような場合も、メンタルヘルス対応マニュアルを参考に、努めて冷静に、丁寧な対応を行うよう心がけましょう。
相手が就業規則などの規定を破る言動を行うのであればきちんと注意し、相手の勢いに押されたまま特別扱いしないよう配慮します。
マンツーマンで対応すると水掛け論に至ることも考えられますので、複数の担当者で関わり、医療機関受診が望ましい際は主治医とも連携を図ることが好ましいものです。
相談窓口に「死にたい」という相談があったときの対応
死に関わる相談は衝撃を受けますが、冷静に話を受けとめるだけでも状況が変わることがあります。自身の価値観や考えは押し付けず、相手が何を考え、どのような気持ちで過ごしているかということに関心を持ちましょう。
メンタルヘルス対応マニュアルを事前に読んでおくと、慌てず冷静な対応をしやすくなります。
死にたいという気持ちは、「楽になりたい」「逃げたい」などの言葉や身辺整理をするなど、間接的な言動にも表されることがあります。
表面的な言葉だけで察知できるものではないことを知ることが、早めの対処につながります。
「うつになったので労災を申請したい」と申し出た従業員への対応
精神障害の労災申請件数が、年々上昇しています。
心理的負荷による精神障害の認定基準が厚生労働省より提起されており、それに倣い労働基準監督署が労働災害を認定します。
申請は、従業員個々の意思により行うことができます。
会社が申請の必要性を考えたり思いとどませたりすることはできないため、申し出があった際は従業員がそれを希望する理由や経緯を確認し、互いの認識の齟齬を正すことも好ましいですね。
このようなケースの対処方法についても、メンタルヘルス対応マニュアルを参考にしましょう。
心の健康問題により長期休業中の従業員を職場に戻してよいか判断する際の確認事項
長期休業中の従業員の復職を検討する際も、メンタルヘルス対応マニュアルを参考にしましょう。
まずは、次の2点を確認すると良いでしょう。
1) 従業員本人の状態の確認
医療機関の通院状況、業務に支障のある症状や服薬状況をはじめ、本人の睡眠状況や注意力などの業務に欠かせない能力の回復状況を把握します。
加えて、本人の業務に対する希望などを聴取し、可能であれば本人の家族から生活状況を確認することも有効です。
2) 職場環境などの確認
上記に加え、人間関係なども考慮の上、就業上・人事労務管理上必要な配慮を検討します。
従業員へのメンタルヘルス対応は産業医に相談しながら進めよう
メンタルヘルスの対応を進める際、担当者や担当部署のみで抱えてしまうのは負荷が強いものですし、専門的な対処が後手に回ることで問題が深まったり解決が遅れたりするおそれもあります。
メンタルヘルス対応マニュアルを参考にするのも良いですが、産業医などの産業保健スタッフへ適宜相談を行うことで専門的な助力を得、人事部などの企業担当者、産業保健師などが総出で取り組むことが理想的です。
複数名で関わるということは、正確な知識を持った上でイニシアティブを取る役割が必要でもあるということです。
関係者が各々の考えを持ち寄ってしまっては船頭の多い船になりかねませんので、基本的なメンタルヘルス対策の流れを心得た特定の企業担当者が全体を取りまとめる役割を持つと良い連携ができます。
その指示や提示された方向性に従って取り組むことで、企業が一丸となって問題解決に臨むことができることでしょう。
まとめ
メンタルヘルス対応は企業全体で進めることが望ましいものです。
マニュアルを用意することは、従業員の意識を高めることにもつながるでしょう。
普段からマニュアルを確認しておくことで、いざという時にも慌てることなく冷静に対応することができます。
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