メンタルヘルス

厚生労働省が推進するメンタルヘルス対策とは

厚生労働省が推進するメンタルヘルス対策とは

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メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合は、全体で6割を下回るほど低く、特に中小企業では整備に足踏みをしている現状があります。
このような状況を是正するため、厚生労働省がメンタルヘルス対策のガイドラインである「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を策定しています。
今回は、厚生労働省が推奨する職場のメンタルヘルス対策について、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」の内容に触れながらわかりやすく解説します。

厚生労働省が推進する職場でのメンタルヘルス対策

厚生労働省が行った「心の健康対策(メンタルヘルスケア)の実施状況2018年」の調査では、職場における6割前後の従業員が「強いストレス」を抱えており、不安や悩みなどを抱えているということがわかりました。
そのなかでも、特に仕事の質や量に困難を感じる傾向にあるようです。
さらに、昨今は精神障害等による労災認定件数も上昇しており、労働者の自殺者数も高い水準を維持していることから、職場におけるメンタルヘルスケア対策の必要性が高まっている様子がうかがえます。
厚生労働省が定めた「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、全国の事業者や労働者が積極的に参加することで労働環境の安全衛生水準が向上することを期待し、2018年から2023年の5年間に実施すべきメンタルヘルス対策の取り組みを示しました。

厚生労働省が推進する4つのメンタルヘルスケア

厚生労働省は、職場におけるメンタルヘルスケアを検討するにあたって、次の4つの視点を持つよう推進しています。
メンタルヘルス対策を実施する際には抑えるべきポイントがあるということですね。

① セルフケア

労働者自身が、自分でメンタルヘルスの管理を行う取り組みのことを、セルフケアと呼びます。
次のような点に注目しながら、自発的に取り組めるメンタルヘルスケアを学びます。

・  ストレスやメンタルヘルスに関する正しい理解を身に付ける
・ ストレスチェックなどの客観的なツールを用いて、自身のストレスに気付く
・ 自分なりにできるストレスの対処法を身に付ける

② ラインケア

ラインケアとは、従業員を個別にとらえるのではなく、職場の人間関係を一元的に管理する考え方のことです。
職場を俯瞰的にとらえることができる立場である管理監督者が、部下の「いつもと違う」様子に気付くことが、ラインケアでは大切だと言われます。
日ごろから周囲に関心を持ち、次のような些細な変化を見つけることが求められます。

<部下の「いつもと違う」様子の例>
・ 遅刻や早退が増える。
・ 仕事の効率が落ちる
・ ミスや事故が目立つようになる

③ 産業保健スタッフによるケア

産業保健スタッフとは、産業医や衛生委員会、保健師、心の健康づくり専門スタッフなど、従業員の健康維持に貢献するスタッフのことを示します。労働者や管理監督者に対する支援を始め、メンタルヘルスケアの実施に関する企画立案、事業場外資源とのネットワークづくりなどを行いながら、企業内の健康づくりの中心的役割を担っています。

④ 事業場外支援によるケア

メンタルヘルスケアは専門的な知識が欠かせません。そのため、事業場外の資源を活用することも効果的です。
最近は、外部相談窓口やEAPなど、さまざまなサービスを選ぶことができますよね。
次のような視点に注目すると、事業場と相性の良いサービスを選ぶことができるのではないでしょうか。

・ サービスが適切に実施できる体制が整っているか
・ 個人情報をはじめとした情報管理が徹底しているか

なお、事業場外支援にケアを委ねた際は、先方に任せきりにせず、事業場自体も主体性を持って取り組む姿勢が求められます。

厚生労働省が推奨するメンタルヘルスの進め方

厚生労働省では、職場におけるメンタルヘルスケアの施策を進めるにあたって、次の点を整理するよう推奨しています。

・ メンタルヘルスケアの計画策定
・ 衛生委員会での調査審議
・ 職場環境等の把握と改善
・ メンタルヘルスケアの教育研修
・ メンタルヘルス不調への気づきと対応
・ 職場復帰支援

メンタルヘルスケアの計画策定

メンタルヘルスケアは一朝一夕でできるものではありませんから、職場におけるメンタルヘルスケア計画を策定する際は、従業員にも取り組みを周知しながら中長期的に続けることができる内容を考えましょう。
また、一度策定したら完了と考えるのではなく、次のように継続的に見直しを行うことが大切です。

メンタルヘルスケアを計画→実行→実行内容の評価→計画内容の見直し→再計画 

衛生委員会での調査審議

衛生委員会とは、労働者の健康の保持増進の取り組みなどについて、労使一体となって調査審議を行う場です。
昨今は精神障害等の労災認定件数が増加しており、労使の協力が欠かせないため、事業場が労働者の意見を聞きつつ、実態に即した取り組みを行うことが求められます。

職場環境等の把握と改善

労働者のメンタルヘルスケアは、職場レイアウトや従業員間のコミュニケーション、職場組織の改善などに注目すると効果的に取り組むことができます。
つまり、職場環境の改善を試みるにあたっては、事業場において不足していると考えられる環境要因が何であるのかを把握することで効率よく対応ができるということです。

メンタルヘルスケアの教育研修

メンタルヘルスケアを推進するための教育や研修を行う際は、次の3つの視点から検討しましょう。

① 労働者への教育研修
自身のストレスに気付いたり、メンタルヘルスケアに関する基礎知識を身に付けたりします

② 管理監督者への教育研修
職場でメンタルヘルスケアを行う意義や、労働者からの相談対応の方法を学びます

③ 事業場内産業保健スタッフへの教育研修
メンタルヘルスケアにおける職場環境の評価や、事業場外資源との連携を行います

メンタルヘルス不調への気づきと対応

こころの健康も体と同じです。万が一、メンタルヘルス不調に陥る労働者が出たときは、次のような視点に留意しながら早期発見、早期対応を行うことが理想的です。

対応① セルフケアの機会を従業員に提供する
従業員が自ら自身のメンタルヘルスケアができる機会を提供することで、メンタルヘルス不調を早めに察知します

対応② 管理監督者や事業場内産業保健スタッフによる相談対応を行う
労働者からの自発的な相談に対応できるよう、聴き取りのスキルを身に付け、適切な情報を提供します

メンタルヘルス不調は家族が気づくことも多いため、家族への知識提供の場を設けることも効果的です。

職場復帰支援

どれほど健康管理に取り組んでいても、メンタルヘルス不調による休職は起こり得ます。
その際、滞りなく職場復帰できるよう、次のような視点を持って支援することが大切です。

・ 衛生委員会などでフォローする
・ 産業医の助言指導を得る
・ 職場復帰支援プログラムを策定する
・ 組織的に職場復帰支援に取り組む

なお、これらは専門的な視点や働きかけが欠かせません。
「さんぽみち」を運営するドクタートラストでも、休職者の職場復帰を支援する「アンリケアサービス」提供しています。
こういった外部資源を利用することも有意義です。

「ストレスチェック制度」の導入によるメンタルヘルス対策も

職場における従業員のストレス状態を数値的に把握できるものもあります。
2015年に開始した「ストレスチェック制度」が、それにあたりますね。個々の結果を通して労働者が自身の潜在的なストレスに気づくことができたり、職場環境の改善策を検討したりすることができるものです。
50名未満の企業では努力義務ですが、メンタルヘルス不調の未然予防(1次予防)として利用できますので、積極的に取り入れたい制度です。
なお、ストレスチェックの結果は本人の同意なく職場の人が見ることはできませんので、個人情報は守られます。
また、企業の「成績表」でもありませんので、管理監督者の方たちは制度の意義を正しく理解し、職場のメンタルヘルス環境を整えることに役立てましょう。

まとめ

職場におけるメンタルヘルスケアは、今後、事業場の規模に関わらず求められていくことでしょう。
事業者がメンタルヘルスケアの対応を抱え込まないよう、厚生労働省が指針を策定していますので、それを大いに活用し、よりよいメンタルヘルスケア対策に取り組んでいきましょう。

「さんぽみち」を運営するドクタートラストでは、ストレスチェックやメンタルに強い産業医のご紹介などで、職場のメンタルヘルス対策をご支援いたします。
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この記事を書いた人

精神保健福祉士 八島

精神保健福祉士 八島

精神保健福祉士として精神科医療や障害者福祉に携わり、たくさんの医師や看護師、諸先輩方から臨床を教わってきました。