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産業医面談において、従業員の就業制限が出た場合、会社としてはどのように対応すれば良いと思いますか。
また、就業制限を無視することで、どんなペナルティがあるのかが気になるという人事担当者もいらっしゃるかもしれません。
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今回は、産業医の就業制限をテーマに、就業制限が出るのはどんなときなのか、無視したらどうなるのかについて考えていきましょう。
目次
産業医の就業制限とは
産業医の提示する就業制限とは、面談を受けた従業員の業務負荷を減らすために提案される産業医による指導のことです。
産業医から就業制限が出た場合、会社としては、労働安全衛生法第66条に基づき、適切な措置を講じなければいけません。
法律の原文を確認してみましょう。
労働安全衛生法
第66条
事業者は医師の意見を勘案し、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、適切な措置を講じなければならない。
たとえば、こういうことです。
ガン治療中の従業員が、通院頻度の高さや症状に悩み、勤務との調整に苦慮していたとします。
産業医がその様子を受け、会社に対して「当該従業員の通院日の業務負荷を減らすこと」などの提案を行います。これが就業制限です。
会社としては、産業医の就業制限を真摯に受け止め、通院日の業務時間を減らす、休日を取得しやすい環境づくりを行うなど、就労環境を整える措置を講じなければなりません。
就業制限は、従業員の状態に応じ、いくつかの区分にわけて内容が検討されます。
就業区分 | 就業上の措置の内容 | |
区分 | 内容 | |
通常勤務 | 通常の勤務でよいもの | |
就業制限 | 勤務に制限を加える必要のあるもの | 勤務による負荷を軽減するために、労働時間の短縮、出張の制限、時間外労働の制限、作業の転換、就業場所の変更、深夜業の回数の減少、昼間勤務への転換等の措置を講じる。 |
要休業 | 勤務を休む必要のあるもの | 療養のため、休暇、休職等により一定期間勤務させない措置を講じる。 |
参考:厚生労働省「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」
産業医から就業制限が出るのはどんなとき?
産業医からの就業制限は、産業医面談を受けたすべての従業員に出されるものではありません。
主に、次のような条件を満たした従業員に対し、例のような就業制限が検討されます。
・産業医面談の結果、当該従業員において心身の不調が確認された。
・その不調を管理するため、就労条件を緩和することが適当であると判断された。
・労働時間の短縮
・出張の制限
・時間外労働の制限
・作業や就業場所の変更
など
不調とは、心身問わず健康状態が万全ではないことを指します。メンタルヘルス上の課題が見られることもあれば、身体上の問題が認められることもあります。
いずれにおいても、休職や退職をするほどの性急さではないものの、通常業務を続けることで病状に悪影響を与えることが予測される状況のときに、産業医の就業制限が出されることがあります。
医師としての医学的な根拠を持った判断に基づく提案のため、産業医の就業制限が出された場合は真摯に受け止め、適切な措置を講じることが大切です。
産業医の就業制限を無視したらどうなる?
就業制限措置を実行する最終的な決定権は、会社側にあります。
会社の体制によっては、当該従業員の就業を制限することは、どうしても難しいというケースもあるでしょう。
会社の体制を理由に、産業医の就業制限を無視しても構わないものなのでしょうか。
産業医が出す就業制限は、先に述べた通り、従業員の健康管理のために有益な措置です。
そのため、それを軽視したことにより従業員に心身の不調が発生したり、悪化したりしてしまうと、「予見できた不調を企業が防ぐ努力をしなかった」とみなされてしまう場合もあります。
これは、安全配慮義務違反に問われる問題です。
安全配慮義務は企業や管理監督者に義務化されており、罰則もあります。
社会的にも企業イメージに影響しますので、就業制限の最終的な決定権にどのような意味があるのか、慎重に考えたいものですね。
つまり、産業医の就業制限は、完全に無視をするのではなく、会社独自の事情を背景にできる限りの配慮を検討の上、双方の歩み寄りが叶うことが理想的です。
参考:ドクタートラスト「法律上の義務と責任–安全配慮義務–」
まとめ
産業医の就業制限を無視することはおすすめできません。産業医による就業制限を活用する際は、制限を行う理由や産業医の意図などをよく確認し、会社と産業医双方の相互理解を深めることが重要となるでしょう。
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