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働き方・産業保健

【保健師監修】企業が職場でストレスチェックを実施する目的とは?

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50人以上の事業場においてストレスチェックの実施は義務です。
しかし、なかには「義務だから……」とストレスチェックの目的や効果を理解せずに実施している企業もあるのではないでしょうか。
ストレスチェックはその目的を知ることでより効果的に機能させることができます。

ストレスチェック制度義務化の目的、作られた背景とは

ストレスチェック義務化の目的は、労働者のメンタルヘルス不調の予防です。
労働者のメンタルヘルス不調は精神障害による労災につながり、本人の健康だけでなく、企業運営に大きな影響を与えます。
こうした、メンタルヘルス不調に対して、ストレスチェックは大きな効果を発揮します。

ストレスチェックの大きな目的のひとつとして、自分のストレスへの気づきを促す点が挙げられます。
ストレスは目には見えないため、気がつかないうちに蓄積していき、症状が出たときにはすでにうつや適応障害を発症しているケースも少なくありません。
ストレスチェックによって、自身のストレスへ目を向けることで、自分のストレス状態の把握とセルフケアにつながります。

また、ストレスチェックによって高ストレス者を見つけだすことで、すでにストレスが蓄積している労働者に対して対応ができます。
高ストレス者が希望すれば産業医面談を実施することができるため、面談の結果をもとに業務上の措置などを検討し、メンタルヘルス不調の防止が可能です。
面談の結果によっては職場環境改善を実施する場合もあります。

ストレスチェック制度義務化の背景

ストレスチェック制度義務化の背景にあるのは、精神障害による労災件数の増加です。
改正労働安全衛生法の成立により、ストレスチェックの導入が決定した2014年の精神障害による労災補償状況をみると労災決定・支給件数が増加していることがわかります。

※左から2010年、2011年、2012年、2013年、2014年のデータ

出所:厚生労働省「平成24年度脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」

出所:厚生労働省『脳・心臓疾患及び精神障害等に係る労災補償状況について』

1998年度の精神障害の労災請求件数が42件、決定件数が4件という数字を考えると急激な増加です。
こうした、精神障害による労災の増加に歯止めをかけるためにストレスチェック制度が義務化されました。

ストレスチェックを職場で実施する目的

ストレスチェックを職場で実施する具体的な目的としてどんなものがあるのでしょうか。

目的①メンタルヘルス不調者を予防する

前述のとおり、ストレスチェックの大きな目的はメンタルヘルス不調者の予防です。
こころの病気も回復が可能です。
こころの病気のほとんどは、体の病気と同じように、早めに対処すれば、その分早くよくなることがわかっています。
いったん治っても、また同じ病気にかかってしまうこともありますが、これも体の病気と同じです。
中には何年も薬のサポートが必要な病気もありますが、自分に合う薬を主治医に見つけてもらうことで、病気をもっていない人と同じように生活していくことができると言われています。

目的②集団分析によって職場環境改善を行う

ストレスチェック結果を事業場の一定集団ごとに集計して、集団ごとのストレス傾向を把握する集団分析の実施もストレスチェックの重要な目的のひとつです。
ストレスチェックは個人のストレス傾向がわかりますが、受検者が同意しないかぎり結果が事業者に通知されることはなく、職場環境改善にはつながりにくくなっています。
集団分析を実施することで、ストレスチェックの結果を部署や年代、性別などの集団ごとに可視化できるため、効果的な職場環境改善が可能です。

目的③生産性の向上

ストレスチェックには、メンタルヘルス不調の予防以外にも生産性を向上させる目的があります
ストレスチェックによってセルフケアが浸透し、職場環境改善が進んでいけば、社員が過度にストレスを溜めることなく、一人ひとりがのびのびと意欲的に仕事に取り組めるようになるでしょう。

ストレスチェック実施の流れ

実際にストレスチェックを実施していくためには、さまざまな事前準備が必要です。
また、受検が終わったあとにも、高ストレス者の対応や集団分析の実施などを行う必要があります。
ここでは具体的なストレスチェック実施の流れについて解説します。

産業医を選任する

まずは、産業医を選任する必要があります。
必ずしもストレスチェックの実施に産業医が必要ではないのですが、もし高ストレス者に該当する社員が希望した場合、産業医面談を実施しなくてはいけません。
そのため、一般的には事業場で選任している産業医がストレスチェック実施者となり、検査を進めていきます。

事前準備を行う

ストレスチェックの事前準備では、さまざまなことを決定する必要があります。

・ストレスチェック実施者・実務従事者
・設問数(57項目、80項目)
・実施形式(マークシート方式、Web方式)
・実施スケジュール
・実施対象者
・高ストレス者の判断基準
・高ストレス者への対応
・集団分析の実施方法
・結果の保存方法

上記の項目をストレスチェック実施者とともに安全衛生委員会にて検討し、決定していきます。

また、事前準備の段階でストレスチェックを実施する旨を社内周知しておきましょう。
その際に、実施日時や実施対象者も併せて周知することで受験率の向上が期待できます。
加えて、「なぜストレスチェックを実施するのか」という実施の目的まで周知することで、個人のストレスへの気づきを促す効果がより高まるでしょう。

ストレスチェックの実施

事前に決めた受検方法でストレスチェックを実施しましょう。
最近では、マークシート方式よりもWeb方式のほうが、受検結果がすぐに確認できるため受検率が高くなる傾向があるようです。
個人情報保護の観点からWeb方式を選択する企業も増えています。

マークシート方式であれば採点後に、Web方式なら受検後すぐに結果の通知が行われます。

産業医面談の実施

高ストレス者に該当した社員が面談を希望した場合、産業医による面接指導を行います。
もし必要がある場合は、産業医の意見をもとに業務上の措置を決定します。

はっきりとした症状がない場合、多くの社員は高ストレス者に該当したとしても産業医面談を希望しないことがほとんどです。
しかし、メンタルヘルス不調は症状が出てからでは手遅れな場合も多く、早めに対策するために、できるだけすべての高ストレス者に産業医面談を受けてもらうように促しましょう。

集団分析と職場環境改善

ストレスチェックの結果をもとに集団分析を実施して、事業場のストレス傾向を把握していきます。
集団分析によって、事業場の問題点を的確に把握することで、より効果的な職場環境改善が実施できるでしょう。
しかし、ストレスチェックとは異なり集団分析の実施は義務ではありません。

(検査結果の集団ごとの分析等)
第52条の14 事業者は、検査を行つた場合は、当該検査を行つた医師等に、当該検査の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない。
2 事業者は、前項の分析の結果を勘案し、その必要があると認めるときは、当該集団の労働者の実情を考慮して、当該集団の労働者の心理的な負担を軽減するための適切な措置を講ずるよう努めなければならない。
出所:労働安全衛生規則

労働安全衛生規則の条文内で「努めなければならない」とされているとおり、集団分析自体は努力義務であり、実施しなくても罰則はありあません。
しかし、厚生労働省が示したストレスチェック指針のなかで、ストレスチェックと併せて実施するのが望ましいとされており、多くのストレスチェックサービスにて無料での提供も行われているため、集団分析も実施するのが一般的です。

結果報告と改善

50人以上の事業場では毎年ストレスチェックを実施しなくてはいけません。
そのため、ストレスチェックの実施が終われば、安全衛生委員会で結果報告を行い、来年に向けた改善案を検討していきます。
実施方法や設問数、産業医面談の実施率、情報の保存方法など、より効果的なストレスチェックを目指したアップデートは欠かせません。

ストレスチェック結果を踏まえた職場環境改善の実施

ストレスチェック実施と職場環境改善はセットで実施すべきものです。
ストレスチェックだけでも大きな効果がありますが、集団分析結果をもとに職場環境改善を行うことで、そもそもメンタルヘルス不調が発生しにくい職場に変わっていきます。
また、職場環境改善は社員のモチベーションやワーク・エンゲイジメントを高めるため、企業全体の生産性の向上にもつながるでしょう。

「さんぽみち」運営元であるドクタートラストでは、職場環境改善を目的としたコンサルティングサービスである「STELLA」を提供しています。
STELLAは従来のストレスチェックによるセルフケアの勧奨や高ストレス者対応だけにとどまらず、職場全体に好影響を与える「STELLA人材」の発掘と育成を行うことで、人から職場環境の改善を目指すサービスです。
ドクタートラスト独自の集団分析と併せて利用することで、メンタルヘルス不調予防だけでなく、生産性の向上と企業の成長が期待できるでしょう。
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<参考>
厚生労働省「平成24年度脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」
厚生労働省「令和3年度精神障害に関する事案の労災補償状況」
厚生労働省「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」