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【保健師監修】産業医の意見書に効力はある?権限の範囲や強制力について解説

産業医の意見書に効力はある?権限の範囲や強制力について解説

意見書とは、産業医による所見などが書かれた書類であり、事業者がとるべき業務上の措置や助言がまとめられています。
では、産業医による意見書には効力(法的強制力)はあるのでしょうか

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この記事では、意見書の権限が及ぶ範囲や強制力について解説します。

産業医が作成する意見書とは?

意見書とは、産業医が労働者への面談や職場巡回などをおこなった際に、事業者が適切に業務上の措置を講じるための助言がまとめられた報告書です。
産業医はさまざまなタイミングで面談を実施するため、面談が実施された場面によって作成される意見書も微妙に異なります。
それぞれどんな意見書なのかを詳しく解説していきます。

長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書

産業医は長時間労働者やストレスチェックにより高ストレスが認められた労働者と面談することで、疲労やストレスの蓄積を観察し、必要な業務上の措置や職場環境の改善案などを事業者へ意見書として提出します。
意見書には主に以下の内容が書かれています。

・就業区分の変更(通常勤務、就業制限、要休業)
・医療機関の受診勧奨
・就業上の措置
・職場環境の改善

職場復帰に関する意見書

産業医は休職した労働者が復職する際に面談を実施し、労働者が業務に復帰できるかどうかの判断をおこない、意見書を提出します。
復職してみたものの、まだ回復しきっておらず、再び休職してしまうケースも少なくないため、産業医による判断が非常に重要です。
一般的に、主治医の診断書よりも、業務内容などの労働環境を詳しく把握している産業医の意見書が優先されます。

また、事業者は労働者が休職に入る際にも産業医による面談をおこない、労働者が本当に復職できる状態なのかを確認することが重要です。
復職判定をする際に作成する意見書の内容は以下のとおりです。

・復職の可否
・就業上の措置
・休職の期間(休職に入る際の面談)

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就業上の措置に関する意見書

産業医は、労働者がメンタル不調やケガ、休職明け、妊娠などさまざまな理由でフルタイムの労働には耐えられない場合に、事業者に対して就業制限などの就業上の措置をおこなうように助言します。
一言に就業上の措置といっても内容は多岐にわたります。

・就業制限(時短勤務、フレックスタイム)
・総労働時間の決定
・措置が必要な期間
・通勤方法の決定
・職場環境の整備
・業務内容の変更

一人ひとり就業上の措置が必要な理由は異なるため、産業医による面談によって意見書を作成し、それぞれにあった対応をおこなうのが重要です。

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産業医の意見書に効力はある?

産業医の意見書に効力はありません
そのため、助言を無視しても法令違反で罰せられることはありません。
しかし、もし意見書を無視して労働者になんらかの健康被害が発生した場合、企業は安全配慮義務違反に問われます。
裁判で安全配慮義務違反が認められた場合、企業は多額の賠償金を払うことになるでしょう。
そのため、リスクを管理する意味でも、労働者の健康を維持して作業効率を上げる意味でも、産業医からの助言を聞いて、適切な対策を講じることが重要です。

産業医に与えられるべき権限とは

産業医は与えられた権限のもと、労働者の健康を守るためにさまざまな職務をおこないます。
産業医の職務には主に以下のものがあります。

産業医の職務
1、健康診断の実施とその結果に基づく措置
2、長時間労働者に対する面接指導・その結果に基づく措置
3、ストレスチェックとストレスチェックにおける高ストレス者への面接指導その結果に基づく措置
4、作業環境の維持管理
5、作業管理
6、上記以外の労働者の健康管理
7、健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進のための措置
8、衛生教育
9、労働者の健康障害の原因の調査、再発防止のための措置
出所:厚生労働省「中小企業事業者の為に産業医ができること」

この項では、上記の職務を実施するために産業医に与えられている権限について解説します。

事業者又は総括安全衛生管理者に対して意見を述べる(勧告権)

産業医は長時間労働者や高ストレス者、休業者などと面談をおこない、就業上の制限などについて意見する権限(勧告権)を持ちます。

(産業医等)
第13条
<中略>
5 産業医は、労働者の健康を確保するため必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。
出所:労働安全衛生法

事業者は産業医の意見を参考に実際の措置を決定するのですが、法的な拘束力はなく、実際におこなう具体的な措置の内容までは産業医の権限は及びません。

しかし、2019年に改正労働安全衛生法が施行され、以下の義務が事業者に課されました。

・事業者は、産業医からの意見書をもとに講じた措置について衛生委員会へ報告しなければならない
・事業者は講じた措置の内容(講じない場合にはその理由)を記録して、3年間保存しなければならない

こうした義務により、事業者が産業医からの勧告を無視することが難しくなり、産業医の意見がより強化されました。

労働者の健康管理等を実施するために必要な情報収集

産業医は労働者の健康診断やストレスチェックの結果などの情報を知る権限を持ちます。
産業医が健康管理を実施するために必要な情報は以下のとおりです。

・健康診断結果
・ストレスチェック結果
・労働時間に関する情報
・時間外労働時間が1月あたり80時間を超えた労働者の情報
・そのほか産業医が労働者の健康管理のために必要な情報

この情報を取得から速やかに(おおむね2週間以内)に産業医へ提出する必要があります。
情報の受け渡しは書面が望ましいとされていますが、個人情報が含まれるため、事前に事業者と産業医の間で受け渡し方法を取り決め、最新の注意を払い情報の共有をおこないましょう。

労働者の健康を確保するために必要な緊急措置の指示

労働者の健康を守るために緊急な措置が必要となる場合には、産業医から指示をおこなうことができます。
では、「労働者の健康を確保するために緊急の必要がある場合」とはどんなときでしょうか。
これについては、以下のように厚生労働省から通達がありました。

「労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合」とは、保護具等を使用せずに、有害な化学物質を取り扱うことにより、労働災害が発生する危険のある場合のほか、熱中症等の徴候があり、健康を確保するため緊急の措置が必要と考えられる場合などが含まれる。
出所:厚生労働省「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について 」

産業医からの就業制限に強制力はある?

産業医からの就業制限に強制力はありません
あくまでも産業医がおこなえるのは意見や助言までなので、実際の措置を決定するのは事業者です。
つまり、事業者が産業医からの意見書を無視すれば、それを罰する法律はありません。
しかし、専門的な知識を持ち、企業の業務にも詳しい産業医からの意見を無視して、労働者を酷使すれば、必ず労災が発生します。
産業医の意見があったにもかかわらずなんの措置も講じない、または、そもそも産業医が事業場にいない場合に労災が発生した場合、企業は安全配慮義務違反に問われ、裁判になれば多額の賠償金が発生するでしょう。

産業医の選任と意見書の尊重は、リスクを回避するために非常に重要であり、企業運営の根幹にかかわってくる部分でもあります。
働き方改革を進めて健康経営を目指すなら、産業医と事業者が互いに協力しながら、労働者の健康管理を進めていくことが必要です。

まとめ

今回は、産業医の意見書ついてわかりやすく解説しました。
ストレスチェックや健康診断を実施するごとに出される産業医からの意見書をわずらわしく思っている事業者もいるかもしれません。
しかし、産業医の意見を無視すれば取り返しのつかない労災が起こってしまう可能性があるため、将来のリスクを回避するためにも、産業医と協力して必要な対策を講じることが重要です。

なにより産業医の意見書は労働者の健康を守るためのものです。
労働者が安心していきいきと働くためにも、産業医と連携しながら適切な対策を実施していきましょう。

ドクタートラストは、産業医の紹介サービスを実施しており、企業にあった産業医の選任をお手伝いします。
また、選任後のサポートも充実しており、意見書の内容や講じるべき措置の食い違いでトラブルになってしまった際にも対応します。
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<参考>
・厚生労働省「『産業医・産業保健機能』と『長時間労働者に対する面接指導等』が強化されます」