【2025年7月最新情報】50人未満の事業場でもストレスチェックが義務化されます。2025年5月に「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案」が正式に成立し、2028年までにすべての事業場でストレスチェックの実施が必須となる見込みです。
これは厚生労働省が推進する「社会全体のメンタルヘルス対策強化」の一環です。本記事では、小規模事業場の経営者や担当者が今から準備すべきことを徹底解説します。
合わせて2025年3月に閣議決定、5月8日に衆議院で可決、成立した50人未満の小規模事業場でのストレスチェック義務化が盛り込まれた「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案」についても紹介します。
目次
50人未満の事業場でストレスチェック義務化が決定した背景と目的
50人未満の小事業場でもストレスチェックの義務化が検討されている背景には、精神障害の労災決定件数の増加があります。
厚生労働省が公開した「過労死等の労災補償状況」によると、2023年度の精神障害の労災決定件数は883件と過去最多を記録しており、労働者のメンタルヘルス対策の徹底が喫緊の課題となっています。
また、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場も、30~49人の事業場で71.8%、10~29人では56.6%と、小規模事業場においては全体的に取り組みが少ない現状や、外部機関の充実によって規模にかかわらずプライバシーの保護が図れるようになった点が義務拡大の理由として挙げられます。
50人未満の小事業場でストレスチェック義務化の目的は
50人未満の小事業場でのストレスチェック義務化には、社会全体としてメンタルヘルス不調の防止を推し進めていきたい思惑があります。
2023年6月に総務省・経済産業省が公表した「令和3年経済センサス‐活動調査 産業横断的集計(事業所に関する集計・企業等に関する集計)」によると、全事業場の95.9%が小規模事業場であり、50人未満の事業場で働く人は全体の半数以上にのぼります。
そのため、50人未満の事業場でのストレスチェックを義務化することで、より広い範囲にメンタルへルスケアの拡大が可能です。

【最新】50人未満の事業場におけるストレスチェック実施率と課題
ストレスチェックを実施している事業場は、50人以上の事業場で84.7%、50人未満で32.3%にとどまります。
というのも現時点で、ストレスチェックの実施は50人以上の事業場には義務づけられているのに対して、50人未満の小規模事業場では努力義務とされているためです。
ストレスチェック制度は、事業者によるメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)の取組を強化する観点から、平成26年の労働安全衛生法の改正により創設されたが、附則において、産業医の選任義務のない50人未満の事業場については、ストレスチェックの実施が当分の間努力義務とされている。
引用:ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ
第14次労働災害防止計画では、「労働者数50人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施の割合を2027年(令和9年)までに50%以上とする」としており、未だ目標には届いていません。
小規模事業場でストレスチェックの実施が広がらない主な理由は次の3点です。①実施コストが高い、②実施体制が脆弱、③面接指導後の対応が難しい。今後、これらの課題解決に向けた対策が検討されます。

また、50人未満の小規模事業場へもストレスチェックの実施が義務づけられても、労働基準監督署への報告は負担軽減の観点から義務づけない方針です。
ストレスチェックの実施結果の監督署への報告義務は、一般健診と同様に、50 人未満の事業場については、負担軽減の観点から課さないことが適当である。
引用:ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ
50人未満の小規模事業場がストレスチェック義務化で受ける影響と対策
小規模事業場でストレスチェックが義務化されるメリット
全事業場においてストレスチェックが義務化されることで、セルフケアの推進やメンタルヘルス不調の早期発見・早期治療、離職率の低下などの好影響が期待できます。
多くの人が誤解していますが、ストレスチェックの第一目的は自身のストレスへの気づきを促し、セルフケアにつなげることです。
そのため、まずはストレスチェックを実施することに大きな意味があります。
また、労働力不足が懸念される現代において、離職率の低下は無視できない効果です。
小規模事業場でストレスチェックが義務化された際の懸念
一方で、企業側へのデメリットもあります。
現行のストレスチェック制度は50人以上の事業場で実施されることを想定しており、産業医の選任義務がなく、健康管理体制が整っていない小規模事業場が同じように実施するのは困難です。
特に、プライバシーの保護などについては適切な管理が難しく、企業体制の強化や外部機関の利用が必要になるでしょう。
ストレスチェックの義務化スケジュール – 2028年までの準備タイムライン
50人未満の事業場におけるストレスチェック義務化の時期については、中間とりまとめ内で以下のように「十分な準備期間の設定を行うこと」としています。
これらの支援体制の整備、支援を含めた制度の周知、その上での50人未満の事業場における実施体制の整備に要する期間を確保するため、十分な準備期間の設定を行うことが適当である。
引用:ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ
現時点では義務化のタイミングは明らかではありませんが、法案の検討と国会での審議を経て改正労働安全衛生法が施行された後、さらに数年の準備期間が設けられる見通しです。
しかし、50人未満の事業場のストレスチェック義務化は決定的であり、今から準備を整えていく必要があるでしょう。
また、2025年1月17日に公表された厚生労働省労働政策審議会建議「今後の労働安全衛生対策について」では、50人未満の小規模事業場でのストレスチェックが円滑に行われるよう、次のような支援を国が講じるべきとしています。
- 実施体制・実施方法のマニュアル整備(特に10人未満の事業場については、その実情を考慮した取り組み可能な内容を示す)
- 高ストレス者の面接指導に無料で対応している地域産業保健センターの体制整備
2025年3月14日に閣議決定&国会提出
2025年3月14日、50人未満の小規模事業場でのストレスチェック義務化が盛り込まれた「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、国会に提出されました。
2025年5月8日に衆議院で可決&成立
さらに2025年5月8日に、同法律案は衆議院で可決・成立しました。
「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案」の概要は以下の通りです。

「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案」のうち、50人未満の小規模事業場でのストレスチェック義務化に関わるのは上記「改正の概要」のうち、「2」になります。
2.職場のメンタルヘルス対策の推進【労働安全衛生法】
○ ストレスチェックについて、現在当分の間努力義務となっている労働者数50人未満の事業場についても実施を義務とする。
その際、50人未満の事業場の負担等に配慮し、施行までの十分な準備期間を確保する。
また施行期日、すなわち50人未満の小規模事業場でのストレスチェックが義務となる時期については、「公布後3年以内に政令で定める日」とされており、現況を踏まえると2028年4月ごろになるのではないかとされています。

50人未満の事業場向けストレスチェック実施の具体的手順とポイント
中間とりまとめ内では50人未満の事業場に関してはストレスチェックを外部委託することが推奨されています。
50 人未満の事業場においては、産業医がおらず適切な情報管理等が困難な場合もあるので、原則として、ストレスチェックの実施は労働者のプライバシー保護の観点から外部委託することが推奨される。
引用:ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ
「さんぽみち」提供元であるドクタートラストは、50人未満の事業場に対してもリーズナブルな料金でストレスチェックサービスを提供しています。
ドクタートラストはプライバシーマークを取得しているほか、ストレスチェック作業を行う区画を完全に分離しており、個人情報の保護を徹底しています。
また、企業の規模によって柔軟に料金設定やストレスチェックの実施方法なども相談可能です。
業界初の50人未満の事業場向けストレスチェック
ドクタートラストでは、2025年9月から業界初の50人未満の事業場向けのストレスチェックサービス「ストレスチェック50」の提供を開始します。
これまでのストレスチェックは、50人以上の事業場での導入を想定しているため、制度設計や費用の面で小規模事業場のニーズに十分応えられていなかったのが実情です。
そこで「ストレスチェック50」では、小規模事業場でも無理なく導入できるよう、手間やコストを最小限に抑えたシンプルな仕組みを実現しました。
必要な機能はしっかりと備えつつ、業務負担を軽減し、法令対応もサポートします。
現在、正式な提供開始に先がけて、先行予約を受け付けています。
先行予約いただいた企業さまには、通常販売予定価格3.3万円(税込)のところ、先着3万社限定で初回販売特別価格1万円(税込)でご提供いたします※。
小規模事業場へのストレスチェック義務化を見据え、いまのうちに準備を整えておきませんか?

※ 50人未満であり新規契約の事業場限定
50人未満のストレスチェックに関して、よくある質問
以下では50人未満のストレスチェックに関連してよく寄せられる質問をまとめました。
Q1: 2028年までに何から準備を始めればよいですか?
まずは現在の従業員数の把握と、ストレスチェック実施体制の検討から始めましょう。50人未満の事業場では外部委託が推奨されているため、信頼できるサービス提供者の選定と予算確保が重要です。また、従業員への制度説明の準備も必要です。
Q2: 費用はどの程度かかるのでしょうか?
A: 従業員数や実施方法により異なりますが、小規模事業場向けのサービスでは1万円台から利用可能なものもあります。外部委託の場合、従業員1人あたり数百円~数千円程度が一般的です。義務化を見据えた特別価格を提供している業者もあるため、早めの情報収集をおすすめします。
「さんぽみち」提供元であるドクタートラストは、50人未満の事業場に対してもリーズナブルな料金でストレスチェックサービスを提供しています。
詳しくは、特設サイトを参照ください。

Q3: プライバシー保護はどのように確保すればよいですか?
外部委託業者を選ぶ際は、プライバシーマーク取得企業や個人情報の適切な管理体制を持つ業者を選択しましょう。
結果の取り扱いについても事前に明確なルールを設定する必要があります。
Q4: 高ストレス者への対応はどうすればよいですか?
高ストレス者には医師による面接指導の機会を提供する必要があります。50人未満の事業場では、地域産業保健センターのサービスを活用できます。
また、必要に応じて労働時間の短縮や配置転換などの就業上の措置を検討することも重要です。
Q5: 従業員が受検を拒否した場合はどうなりますか?
ストレスチェックの受検は義務ではなく、従業員が拒否することも可能です。
ただし、メンタルヘルス対策の重要性を説明し、できる限り多くの従業員に受検してもらえるよう働きかけることが大切です。
受検率向上のためには、制度の目的や個人情報保護について丁寧に説明しましょう。
Q6: 年1回の実施とありますが、具体的な実施時期は決まっていますか?
実施時期は各事業場で決定できます。
健康診断と同時期に実施すると効率的ですが、繁忙期を避けるなど、従業員が受検しやすい時期を選ぶことをおすすめします。
Q7: 労働基準監督署への報告は必要ですか?
50人未満の事業場については、負担軽減の観点から労働基準監督署への報告義務は課されない方針です。
ただし、適切な実施記録の保管は必要ですので、実施状況を適切に管理しておきましょう。
Q8: パート・アルバイトも対象に含まれますか?
ストレスチェック制度においては、パートやアルバイトの労働者も対象に含まれる場合があります。
具体的には、「1週間の所定労働時間が、正社員など通常の労働者の4分の3以上ある」パート・アルバイトは、常時使用する労働者とみなされ、ストレスチェックの対象となります。
したがって、労働時間が比較的長く、継続的に働いているパート・アルバイトについては、企業は正社員と同様にストレスチェックを実施する必要があります。
一方で、労働時間が短かったり、雇用期間が非常に短いようなパート・アルバイトの場合は、法律上の実施義務の対象からは外れることがあります。
しかしながら、これらの労働者であっても、職場のメンタルヘルス対策としてストレスチェックを実施することは有効です。
人手不足や職場環境の変化が激しい職場では、パート・アルバイトも大きなストレスを抱える可能性があるため、企業が独自の判断で対象を広げ、心の健康に配慮する姿勢が求められます。
<参考>
厚生労働省「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 中間とりまとめ」
厚生労働省「ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会」
厚生労働省「令和5年 精神障害に関する事案の労災補償状況」
厚生労働省「第14次労働災害防止計画」
総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査 産業横断的集計(事業所に関する集計・企業等に関する集計)」
厚生労働省労働政策審議会建議「今後の労働安全衛生対策について」
厚生労働省「第217回国会(令和7年常会)提出法律案」