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うつ病で休職していた従業員が復職する際、産業医面談は必須なのか、診断書は必要なのかなど、手順や手続き面が気になるところです。
今回は、うつ病による休職から復職する従業員に企業としてどのように対応するか、産業医面談の必要性や再発防止にはどのような点に注意したらよいかを精神保健福祉士がわかりやすく解説します。
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目次
うつ病とは
うつ病とは、抑うつ症状という精神症状が一定期間続いた際に診断される疾患です。
抑うつ症状には、次のような様子が挙げられます。
・ 楽しいと感じない
・ 気分が晴れない
・ 物事に集中ができない
・ 自分に価値を感じない
・ 何事も億劫
・ 食欲がない
・ 甘いものなどをたくさん食べてしまう
・ 涙が自然に流れる
うつ病は、原因やメカニズムがすべて明確になっているわけではありません。
そのため、本人の努力不足、周囲や社会に原因があると安易に考えることは危険です。
本人がどのようなことに困難を抱えており、どのような意向があるのかなど、本人が抱える事情を把握しようとする姿勢が望ましいものです。
最近では「社会的うつ」という新しい言葉も聞かれますが、それは診断として使う名前ではありませんので、流説の域を超えないと考えて差し支えないでしょう。
企業側は、正しい情報を集めることが大切です。
うつ病を患った従業員への対応
従業員がうつ病を患わった場合、本人が何を思い、どのようなことがあったのかを知ろうとする姿勢が、何よりも大切です。
興味本位で聞きたてず、真摯に接すると、相手も心を開いてくれるのではないでしょうか。また、うつ病を患った従業員に対して企業がとるべき具体的な対応は、以下の通りです。
産業医面談
従業員がうつ病を患った場合、産業医面談を行い、就業可能な状態かを判断してもらいましょう。
産業医がいない50名未満の事業場では、主治医に意見を聞くことも可能です。
ただし、産業医は、診断や処方をする外部医療機関の医師とは役割が異なり、業務内容と体調のバランスを判断する医師です。
そのため、外部医療機関の医師が病状の見立てや治療方針を検討し、それを参考に産業医が就労場所でのケアを考える連携の形が理想的です。
可能な限り、どちらの意見も参照して休職を検討することが望ましいですね。
休職手続き
うつ病による休職の手続きは、企業で定めた就業規則に則ります。
休職が一定期間以上見込まれる際は、本人への傷病手当金の情報提供が欠かせません。
休職制度は思いのほか認知度が低いうえに、本人は思考力や記憶力が低下していることもあります。
従業員の経済基盤を支えるためにも、必要な関わりです。
休職の流れは、以下の記事を参照ください。
職場改善
うつ病による休職者が発生した場合、企業の関係者が「休職をさせたから終わり」「専門機関に委ねたから大丈夫」と、人へ任せきりになることは危険です。
もし、心理的な負荷を強める原因が職場にある場合、必要に応じて職場環境の見直しや、座席配置、部署異動などを検討しましょう。
この際、落ち着いて本人の意向を確かめ、業務内容や人間関係、本人の能力等、さまざまな観点から判断することが重要です。
また、職場内に不公平感が生まれないような配慮も欠かせません。
うつ病で休職した従業員の復職に向けた対応
従業員のうつ病や、精神科の疾患に対しては身構えてしまうと思います。
時には、腫れ物を触るように対応してしまうこともあるでしょう。
以下では、うつ病で休職している従業員への接し方、また復職に向けた対応を解説します。
休職中の対応・接し方
うつ病で休職を始めた従業員は、休めたことへの安堵を感じる一方、今後のことに不安を強めます。
そのような心境を理解してみましょう。
加えて、相手のペースで接し、「あなたのことを心配している」というメッセージを伝えます。
メンタルヘルスの問題は、血圧や血糖値のように数値で状態を測ることができませんので自分の価値観で判断してしまうことが多いものですが、休職者と平行線にならずに接するためには、相手への理解が欠かせないものです。
復職後の働き方を決める
皆さんは、リモートワークと通勤スタイルはどちらが好ましいですか。
復職後の働き方を考える際は、その価値観は自分だけのものであることを認識しましょう。働き方の相性は人によって異なりますし、リモートワークにおいて孤立することで状態の悪化を招くこともあります。
他方、異動という配慮も、その処遇を休職者が深読みしてしまうことがあります。
本人や産業医、上司や人事担当者など複数の目で検討し、バランスの良い働き方を決めましょう。
休職前と同じ部署に戻ってもらって良いのか、配置転換は必要であるかなど、個々に応じた対策の検討を進めることが望ましいですね。
産業医面談の実施
復職に際しては、産業医面談も積極的に行いましょう。
というのも産業医が「業務に復帰できる」と考える状態と、外部医療機関の医師が「回復」と考える状態は異なります。
たとえば、業務を一定時間継続することと、家事や余暇活動に用いることは意味合いが異なりますよね。
産業医と主治医には、そのような視点の違いがあります。
外部医療機関の医師による見立てを踏まえながら、産業医面談によって業務の可否に関わる意見を仰ぐことが望ましいでしょう。
うつ病は再発する?再発防止のための注意点
うつ病は決して不治の病ではなく、回復の可能性があるものです。
誰しもが、アレルギーを持っていたり糖尿病を患っていたりするように、何らかの境遇下で過ごすことは珍しくありませんが、それらの既往歴と同様に、うつ病も再発はあり得ます。
しかし、周囲のサポートによって大きな問題を回避することができるものなのです。
企業が従業員のうつ病回復をサポートする際は、何よりも本人の話に耳を傾けてみましょう。本人のペースで話せるよう、焦らず聞く姿勢を持つことが大切です。
加えて、無理をしてでも復帰しようとする方もいらっしゃいますので、本人の体力に見合った業務調整を行う、産業医や産業保健スタッフと密な連携を保つなど、広い視野での関わりが有効です。
また、長期休暇のあとは調子を取り戻すまでに時間を要すことも珍しくありません。
そのため、本人を否定しないなど支持的に対応し、少ない勤務日数や時短勤務などを取り入れながらスロースタートができる道を探ることが理想です。
まとめ
うつ病は、言葉の認知度は上がりましたが理解が進まない疾患の一つです。
企業がうつ病による休職者と対峙する際は、自分なりの解釈を控え、産業医等の専門職の意見を取り入れながら対応すると、より充実した対応ができるようになるでしょう。
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