ストレスチェックを毎年きちんと実施しているのに、「個人結果は返したものの、その先の職場改善にはつながっていない」と感じている担当者の方は少なくないのではないでしょうか。
厚生労働省の効果検証でも、集団分析の実施率自体は決して低くありません。
それでも結果を活用しきれず、「やったまま」になっている事業場が多いのが実情です。
つまり、本当の課題は「やるかどうか」ではなく、「どう活かすか」にあるといえます。
集団分析の役割は、個人の不調を探すことではなく、部署や職種、年代などの単位でストレス傾向を可視化し、改善の優先順位をつけることです。
ストレスチェック制度そのものも、個人への気づきだけでなく、集団分析と職場環境改善まで含めて一次予防を進める制度として設計されています。
この記事では、集団分析の基礎から、進め方、仕事のストレス判定図の読み方、経営層や管理職への共有方法、さらに現場で起こりがちな失敗パターンと回避策まで、実務担当者の目線でわかりやすく整理します。
目次
1. ストレスチェックの集団分析とは
1-1. 集団分析の定義と個人結果との違い
集団分析とは、ストレスチェック結果を部・課・職種・グループなど一定の集団単位で集計・分析し、その職場のストレス要因や特徴を把握する取り組みです。
個人結果が「その人が高ストレスか」「面接指導が必要か」を見るのに対し、集団分析が見ているのは「職場のどこに負荷があるか」です。
仕事の量的負担、コントロール度、上司や同僚の支援などの平均値を見ながら、職場環境を改善する余地を探っていきます。
つまり集団分析は、「誰が悪いか」を探すための道具ではなく、「どの職場要因を変えていくか」を考えるための材料といえます。
1-2. 集団分析の法的位置づけと「努力義務」の意味
ストレスチェックの実施や、高ストレス者への面接指導の対応は法的義務とされています。
一方で、集団ごとの集計・分析と、その結果を踏まえた職場環境改善は、労働安全衛生規則52条の14に基づき「努力義務」と位置づけられています。
(検査結果の集団ごとの分析等)
第52条の14 事業者は、検査を行つた場合は、当該検査を行つた医師等に、当該検査の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない。
出所:労働衛生規則
ただし、努力義務だからといって重要性が低いわけではありません。
むしろ、ストレスチェック制度の目的が「メンタルヘルス不調の未然防止」である以上、個人通知だけで終わらせず、ストレス要因そのものを減らす職場改善まで進めることが本来の趣旨です。
厚生労働省の資料でも、できるだけ実施することが望ましいと明記されています。
1-3. 集団分析でわかること
集団分析を行うと、部署・職種・年代・役職層ごとのストレス傾向が見えてきます。
たとえば「営業部は量的負担が高い」「新任管理職層は仕事のコントロールが低い」「若手層は同僚の支援は厚いが上司の支援が弱い」といった特徴を把握できます。
判定図や委託先のレポートを使えば、全社平均や標準集団との比較、さらに前年との経年変化まで追うことが可能です。
「2年続けて支援不足が続いている」「組織改編後にリスクが上がった」といった動きまで見えてくるため、施策の優先順位がつけやすくなります。
1-4. 集団分析の対象人数と「10人以上」の理由
集団分析では、個人が特定されないことが大前提です。
そのため厚生労働省のマニュアルでは、原則として10人以上の集団を集計単位とする考え方が示されています。
集団ごとの集計・分析結果は、個人ごとの結果を特定できないため、労働者の同意を取らなくても、実施者から事業者に提供して差し支えありません。ただし、集計・分析の単位が10人を下回る場合には個人が特定されるおそれがあることから、原則として、集計・分析の対象となる労働者全員の同意がない限り、集計・分析結果を事業者に提供してはいけません。
厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
小規模すぎる集団では、平均値や特徴から個人が推測されてしまうおそれがあり、プライバシー侵害につながる可能性があるためです。
ただし、10人未満の部署があるからといって、集団分析を諦める必要はありません。
複数部署を合算する、会社全体で集計する、評価点の総計平均など個人特定リスクの低い手法を使う、といった工夫が可能です。
仕事のストレス判定図のように個人結果が直ちに特定されにくい手法であれば、10人未満でも一定の工夫のもと分析可能とするQ&Aも示されています。
Q15-1 当社は全ての部署が10人以下ですが、会社全体の集団分析以外はできないのでしょうか。
A いくつかの部署を合わせて集団分析を行うことも可能ですし、例えば対象集団について、ストレスチェックの評価点の総計の平均値を求める方法など個人が特定されるおそれのない方法であれば、10人を下回っていても集団分析は可能ですので、事業場の実情に応じ、工夫して対応していただきたいと思います。
出所:厚生労働省「ストレスチェック制度関係Q&A」
とはいえ、極端な少人数集団は不適切とされていますので、安易な運用は避けましょう。
2. 集団分析の進め方4ステップ
2-1. STEP1 分析対象となる集団を決める
まず決めたいのが、「どの切り口で見るか」です。
部署別で見れば業務負荷の偏りが、職種別で見れば職務特性が、階層別や年代別で見ればマネジメントや世代の課題が見えやすくなります。
同じデータでも、集団の切り方によって見える問題はまったく変わってきます。
注意点は、毎年切り方を変えないことです。経年比較を行うなら、できるだけ前年と同じ集団軸を維持したほうが、改善効果や悪化傾向を追いやすくなります。
また、10人未満になりやすい細かすぎる切り方は、最初から避けたほうが実務的にもスムーズです。
2-2. STEP2 ストレスチェック結果を集計する
次に、実施者または委託先に依頼して、集団ごとの結果を集計します。必要になるのは、受検結果そのものに加えて、「どの集団に属するか」を示す属性情報です。
部署別・年代別・職種別など、分析したい軸に応じた属性設計ができていないと、後から深掘りしようとしても手が出せなくなってしまいます。
この段階で必ず確認したいのが、受検率です。
受検率が低い部署の結果は、職場の実態を十分に反映していない可能性があります。さらに「忙しくて受けられなかった」のか「不信感があって受けなかった」のか、受検率の低さ自体が重要なシグナルになります。
もちろん、集計時の個人情報配慮は欠かせません。結果は個人が特定されない形で扱い、10人未満の単位では安易に事業者へ提供しない、という原則は崩さないようにしましょう。
2-3. STEP3 分析手法を選んで分析する
分析手法は大きく分けて2つあります。ひとつは、厚生労働省が推奨する「仕事のストレス判定図」を用いる方法です。
標準化された見方ができ、社内説明にも使いやすいのが利点です。
もうひとつは、委託先が提供する独自レポートを用いる方法です。
業界平均との比較、自由記述の要約、優先課題の自動抽出などが充実しているケースもあります。標準性を重視するなら判定図、実務での読みやすさや改善提案まで求めるなら独自レポート、という使い分けが現実的でしょう。
2-4. STEP4 結果を関係者で共有する
分析が終わったら、そこで止めずに結果を共有していきます。
共有先は、経営層、管理職、衛生委員会、必要に応じて従業員です。ただし、「誰に何をどの粒度で見せるか」は慎重に設計したいところです。
基本となる分け方は、経営層には全社俯瞰と重点部署、管理職には自部署の改善論点、衛生委員会には制度運用と改善計画、従業員には「何を改善するか」という方向性、というかたちです。
共有のタイミングも重要で、単なる報告会ではなく、改善方針を決める前段として位置づけるのがポイントです。
「見せて終わり」ではなく、「では何を変えるか」を話し合う場に接続することで、初めて意味のあるアクションにつながります。
3. 集団分析の代表的な手法と結果の見方

3-1. 仕事のストレス判定図とは
仕事のストレス判定図は、厚生労働省系の資料で広く紹介されている、標準的な集団分析手法です。
職業性ストレス簡易調査票のうち、仕事の量的負担、仕事のコントロール、上司の支援、同僚の支援という4つの尺度を用いて、職場の健康リスクを可視化します。
判定図は2種類あり、ひとつが「量-コントロール判定図」、もうひとつが「職場の支援判定図」です。
この2枚を見ることで、「忙しさと裁量のバランス」に問題があるのか、「周囲の支援不足」に問題があるのかをざっくり把握できます。シンプルで伝わりやすいので、経営層や管理職への初回説明にも向いています。
3-2. 量-コントロール判定図の見方
この判定図では、それぞれの軸に仕事の量的負担、仕事のコントロールを置きます。
一般的に、量的負担が高く、コントロールが低いほど健康リスクは高まります。つまり、「忙しいのに自分で調整できない」状態が、もっとも危険な状態といえます。
実務上は、右下・左下といった見方を機械的に覚えるよりも、「自部署が全国平均に対してどちらにずれているか」を見るほうが大切です。
量的負担が高いのか、裁量が低いのか、あるいはその両方なのかで、打つべき施策は変わってきます。前者なら業務量の調整、後者なら権限委譲や役割の明確化が候補になります。
3-3. 職場の支援判定図の見方
もう一方の判定図は、上司の支援と同僚の支援を見ます。
ここで低く出ている職場は、単に仕事量だけの問題ではなく、「相談しにくい」「フォローし合えない」「孤立感が強い」といった支援不足が背景にある可能性があります。
読み方のコツは、「量-コントロール判定図」と必ずセットで見ることです。
量的負担が高く支援も弱いなら、典型的な高リスク職場といえます。
一方、量的負担は高くても支援が厚ければ、運用改善で乗り切れるケースもあります。
負荷と支援の掛け合わせで優先課題を見極めるのが、実務のコツです。
3-4. 総合健康リスクと基準値「100」「120」の意味
判定図の斜め線は、疾病休業などの健康問題が起きるリスクを、標準集団の平均を100として表したものです。
総合健康リスクが100なら全国平均レベル、120なら全国平均より健康問題リスクが20%高い、という意味になります。
これは厚生労働省系のマニュアルでも具体例として示されています。
実務上は「120以上」を、注意して見ていきたい職場の目安として扱うことが多くあります。
さらに「150」になると、全国平均より約50%高い、かなり負荷の重い状態と考えられます。
ただし、150はあくまで実務上の警戒ラインです。
基準値そのものに振り回されるのではなく、自社の経年変化や部署間の差を踏まえて判断することが大切です。
3-5. 部署別・年代別・職種別の読み方
部署別比較では、まず「どこが悪いか」ではなく、「どの部署がどの要因で高いか」を見るのがコツです。
たとえば営業部は量的負担、管理部はコントロール不足、製造部は支援不足というように、部署ごとに論点はまったく異なります。
年代別・階層別の分析では、若手に裁量不足、中堅に業務過多、管理職に支援不足が出ることがあります。
職種別の分析では、対人援助職やクレーム対応部門など、業種特性によるストレス構造も見えてきます。
単純な点数比較だけでなく、その集団の業務特性を踏まえて読むことが欠かせません。
4. 集団分析結果を経営層・管理職にどう共有するか
4-1. 経営層への報告で押さえるべき3つの観点
経営層への報告で意識したいのは、「経営インパクトとして語る」という視点です。
「この部署は健康リスクが高い」とだけ伝えても弱く、「離職・休職・生産性低下・採用難にどうつながり得るか」までセットで示すことが必要です。
集団分析は健康管理の話であると同時に、人的資本や組織運営の話でもあるからです。
次に、全社傾向を示したうえで、特に注目すべき部署を絞り込むことも重要です。
全社レポートをそのまま出してしまうと、論点がぼやけてしまいます。
さらに、「この結果なら、次の半年で何をどう変えるか」という改善後のゴール像まで添えると、経営判断につながりやすくなります。
報告資料は、「全社サマリー、注目部署、原因仮説、改善案、スケジュール」という順で構成すると扱いやすくなります。
数字を説明する資料ではなく、意思決定を促す資料に仕上げることがポイントです。
4-2. 管理職への結果フィードバックの進め方
管理職への共有は、思っている以上に繊細です。
部署単位の結果は、管理職本人にとって「自分が責められている」と感じやすいからです。
そこで重要なのが、「評価ではなく改善の材料として返す」というスタンスです。
結果を渡す際には、可能であれば産業医や保健師、外部委託先など専門職に同席してもらい、「この数値は職場要因を見るためのもの」と位置づけると、受け止められ方が大きく変わります。
言葉選びも大切です。
「問題部署」「管理不全」といった表現ではなく、「負荷が集中している」「支援体制を再設計する余地がある」といった言い方にすると、対話が前向きになります。
管理職に必要なのは防御ではなく参加ですので、「責めずに巻き込む」設計を意識しましょう。
4-3. 衛生委員会で議題化するためのポイント
衛生委員会では、集団分析結果を単なる報告事項にせず、改善計画を検討する正式議題として取り上げることが重要です。
タイミングとしては、結果が出た直後の共有、改善策案がまとまった後の確認、翌年の振り返り、と少なくとも年2回から3回を意識すると運用しやすくなります。
委員会で議論したい論点は、「どの集団を重点対象にするか」「どの改善策を打つか」「誰が責任者か」「いつまでに何をやるか」の4つです。
議事録には、結果の概要だけでなく、合意した改善策と担当・期日まで残しておきましょう。
ここが曖昧なままだと、翌年のPDCAが回らなくなります。
4-4. 共有時に「やってはいけない」3つのこと
もっとも避けたいのは、個人が特定されうる粒度での共有です。
少人数部署や属性の細かすぎる分析は、結果として「誰のことかわかる」状態を招いてしまいます。
これは、ストレスチェック制度への信頼そのものを壊しかねません。
次に避けたいのは、結果を管理職の人事評価に直結させることです。
評価に使うと管理職は改善より自己防衛に走り、受検率や回答の信頼性にも悪影響が及びます。
さらに、「この部署の誰が原因か」といった犯人探しを誘発する伝え方も禁物です。
集団分析は、個人ではなく職場要因の改善に使うものだという原則を忘れないようにしましょう。
5. 集団分析を職場環境改善につなげる進め方
5-1. 改善テーマの優先順位の付け方
改善テーマは、単に健康リスクが高い順に選べばよいわけではありません。
実務では、健康リスクの高さと影響人数の組み合わせで優先度を決めると判断しやすくなります。
健康リスクがやや高い程度でも、人数が多い部署は組織全体への影響が大きいからです。
また、テーマは「今すぐ着手できること」と「中長期で取り組むこと」に仕分けるとよいでしょう。
会議体の見直しや1on1の導入は比較的すぐに着手できますが、人員配置や評価制度の見直しには時間がかかります。
この仕分けをしないと、改善計画が現実離れしたものになってしまいがちです。
5-2. 現場ヒアリングの進め方
数値だけを見ていても、なぜその結果になったのかは見えてきません。
そこで欠かせないのが、現場へのヒアリングです。
しかも、管理職だけでなく、従業員側の声も拾うことが重要です。
管理職は「繁忙期だった」と捉えていても、従業員側は「相談しづらさ」や「役割の曖昧さ」を課題と感じているかもしれません。
ヒアリング項目は、「最近負担が増えた業務は何か」「相談しにくい場面はあるか」「改善するとしたら何が現実的か」といった、具体的で行動に落ちる問いに寄せると有効です。
大切なのは、数値結果と現場感覚をすり合わせることです。
ここが噛み合って初めて、改善策が机上の空論にならずに済みます。
5-3. 改善計画の立案と衛生委員会での合意形成
改善計画には、少なくとも「目標」「施策」「担当者」「期日」「KPI」が必要です。
たとえば「上司支援スコアの改善」を目標にするなら、施策は月1回の1on1の導入、担当は部門長、期日は3カ月後、KPIは面談実施率と翌年の支援尺度改善、といった形で具体化していきます。
衛生委員会では、この計画を単なる宣言で終わらせず、実施可能性と優先度を議論しながら合意形成することが大切です。
経営層の承認を得る際は、「健康のために必要」というだけでなく、「現場負荷の軽減や定着率改善にも効く」という観点を添えると、話が通りやすくなります。
5-4. 経年比較でPDCAを回すコツ
PDCAを回すには、毎年同じ数値だけを見ていては不十分です。
注目したいのは、総合健康リスクだけでなく、量的負担、コントロール、上司支援、同僚支援、受検率、休職者数など、複数指標の組み合わせです。
また、部署改編があった年は単純比較が難しくなります。
その場合は、旧部署ベースで再集計する、共通属性で横比較するなど、比較軸を揃える工夫が必要です。
改善効果は1回で大きく出るとは限りませんので、少なくとも1年から2年単位で見るくらいの時間軸を持つほうが現実的でしょう。
6. 集団分析でよくある失敗パターンと回避策
6-1. ケース1 管理職による「犯人探し」が起きてしまった
ありがちなのが、管理職が結果を見て「あの人が原因では」と考えてしまうケースです。
これは、集団分析を個人評価ツールと誤解したときに起きがちです。
回避策としては、結果共有時に「個人ではなく職場要因を見る」「人事評価には使わない」と明言することが効果的です。
特に少人数部署では、分析の粒度を粗くするだけでもかなり防げます。
6-2. ケース2 経営層に共有したら部署統廃合の議論になった
経営層は数字に反応しやすいため、健康リスクの高い部署を「非効率部門」と捉えてしまうことがあります。
しかし、集団分析は組織再編の直接的な根拠ではなく、あくまで職場環境改善のヒントです。
回避策としては、共有の冒頭で「この数字は職場負荷のシグナルであって、部門の価値判断ではない」と先に枠づけしておくことです。
改善案までセットで示すと、統廃合の議論に流れにくくなります。
6-3. ケース3 改善策を打ったのに翌年さらに悪化した
改善策を打ったからといって、翌年すぐに数値が良くなるとは限りません。
業務の繁忙、人事異動、組織改編などで一時的に悪化するケースもあります。
厚生労働省系の資料でも、継続的なPDCAと振り返りの重要性が示されています。
ここで大切なのは、「改善したのに悪化したから失敗」と短絡しないことです。
施策の定着状況、現場の受け止め、周辺環境の変化まで含めて再点検し、打ち手を微修正していく発想が求められます。
6-4. ケース4 分厚いレポートが誰にも読まれずに終わった
委託先のレポートが分厚く、誰にも読まれないまま終わってしまうのも、典型的な失敗パターンです。
効果検証でも、「集団分析をしても活用方法がわからない」という事業場の声が挙がっています。
回避策は、1枚サマリーを別途作ることです。
経営層向けには全社傾向と重点部署、管理職向けには自部署の論点、衛生委員会向けには改善計画というように、共有相手別に資料を出し分けると動きやすくなります。
6-5. ケース5 部署改編で経年比較ができなくなった
組織改編があると、前年との比較が難しくなります。
これは現場で非常によく起きるトラブルです。
対策としては、毎年の集団設計ルールを残しておくこと、改編前後で比較可能な単位を別途持つこと、集団分析結果を5年間程度保存して経年変化を追えるようにしておくことが有効です。
厚生労働省のストレスチェック指針でも、集団分析結果は5年間保存が望ましいとされています。
集団ごとの集計・分析を行った場合には、その結果に基づき、記録を作成し、これを5年間保存することが望ましい。
出所:厚生労働省「ストレスチェック指針」
7. 集団分析を外部委託する場合のポイント
7-1. 外部委託のメリットと向いているケース
自社運用の利点は、社内事情を踏まえて柔軟に回せることです。
ただし、分析の読み解きや改善提案まで踏み込むには、産業保健や組織改善の知見が必要です。
そのため、人事総務が少人数で兼務している会社、分析を読める人がいない会社、改善会議まで伴走してほしい会社は、外部委託と相性が良いといえます。
特に小規模から中堅規模の企業では、委託先がいることで結果説明や管理職面談が中立化し、社内では言いにくいことも話しやすくなります。
結果として、「やりっぱなし」を防ぎやすくなります。
7-2. 委託先選定で確認すべき5つのチェックポイント
委託先を見るときは、「実施できるか」だけでは不十分です。確認したいのは、以下の5点です。
- 分析レポートが読みやすいか
- 業界平均などの比較データがあるか
- 改善提案までセットになっているか
- 産業医・保健師と連携できるか
- 個人情報保護体制が十分か
厚生労働省のチェックリストでも、集団分析のわかりやすさ、面接指導との連携、記録保存体制、本人通知の方法などを確認するよう示されています。
特に、「報告書は出すが改善支援はしない」という委託先だと、結局社内で止まってしまいがちです。
レポートの見やすさと、改善フェーズまで支援できるかどうかは、委託先選定の大きな分かれ道になります。
7-3. 自社実施と外部委託の役割分担
外部委託しても、自社で持つべき機能は残ります。
たとえば、どの集団で見るかを決めること、経営層にどう上げるかを判断すること、改善施策の責任者を置くことは、自社が担うべき領域です。
理想は丸投げではなく、「分析は外部、意思決定と改善実行は自社」という役割分担です。
委託先と二人三脚で進めるほど、集団分析は実効性を持ちやすくなります。
まとめ
集団分析の本質は、「実施したか」ではなく「活用したか」にあります。
ストレスチェック制度は、個人への結果通知だけで完結するものではなく、集団分析を通じて職場環境を改善し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐための制度です。
そのためには、判定図を読むだけでなく、経営層・管理職・衛生委員会を巻き込み、改善テーマを絞り、現場ヒアリングを行い、翌年の比較まで見据えて回す必要があります。
重要なのは、数字そのものよりも、「結果を組織で動かす仕組み」をどうつくるかです。
「さんぽみち」運営元のドクタートラストでは、集団分析レポートの提供だけでなく、結果の読み解き、管理職へのフィードバック、職場改善計画の伴走まで、産業医・保健師と連携してご支援しています。
「分析結果は出たが、改善につなげ方がわからない」という担当者の方は、お気軽にご相談ください。
よくある質問(Q&A)
Q1. ストレスチェックの集団分析は義務ですか?
ストレスチェックの実施や、高ストレス者への面接指導の対応は法的義務です。一方で、集団ごとの集計・分析と、その結果を踏まえた職場環境改善は、労働安全衛生規則52条の14に基づく努力義務とされています。ただし、努力義務だからといって重要性が低いわけではありません。ストレスチェック制度の目的である「メンタルヘルス不調の未然防止」を達成するためには、集団分析と職場改善まで実施することが本来の趣旨です。
Q2. 集団分析は何人以上から実施できますか?
厚生労働省のマニュアルでは、原則として10人以上の集団を集計単位とする考え方が示されています。これは、小規模すぎる集団では平均値や特徴から個人が推測されるおそれがあり、プライバシー侵害につながる可能性があるためです。
Q3. 10人未満の部署はどうすればよいですか?
複数部署を合算する、会社全体で集計する、評価点の総計平均など個人特定リスクの低い手法を使う、といった対応が可能です。仕事のストレス判定図のように個人結果が直ちに特定されにくい手法であれば、10人未満でも一定の工夫のもと分析可能とするQ&Aもあります。ただし、極端な少人数集団は不適切とされていますので、安易な運用は避けましょう。
Q4. 総合健康リスクの「100」「120」とは何を意味しますか?
判定図の斜め線で示される総合健康リスクは、標準集団の平均を100として表したものです。総合健康リスクが100なら全国平均レベル、120なら全国平均より健康問題リスクが20%高い、という意味になります。実務上は「120以上」を、注意して見ていきたい職場の目安として扱うことが多くあります。
Q5. 集団分析の結果は管理職の人事評価に使ってよいですか?
集団分析の結果を、管理職の人事評価に直結させることは適切ではありません。集団分析は、個人ではなく職場要因の改善に使うものであり、管理職に対しても「評価ではなく改善の材料」として返すことが大切です。
Q6. 集団分析の結果は従業員にどこまで共有すべきですか?
共有先は経営層、管理職、衛生委員会、必要に応じて従業員ですが、「誰に何をどの粒度で見せるか」は慎重に設計したいところです。基本となる分け方は、経営層には全社俯瞰と重点部署、管理職には自部署の改善論点、衛生委員会には制度運用と改善計画、従業員には「何を改善するか」という方向性、というかたちです。なお、個人が特定されうる粒度での共有は、制度への信頼を損ねるため避けてください。
Q7. 集団分析の結果はいつまで保存すべきですか?
集団分析結果は、経年変化を見るために5年間程度保存しておくことが望ましいとされています。これは厚生労働省の小規模事業場マニュアルにも記載されています。改善効果や悪化傾向を追ううえでも、過去のデータを残しておくことが大切です。
Q8. 集団分析を外部委託するメリットは何ですか?
人事総務が少人数で兼務している会社、分析を読める人がいない会社、改善会議まで伴走してほしい会社は、外部委託と相性が良いといえます。特に小規模から中堅規模の企業では、委託先がいることで結果説明や管理職面談が中立化し、社内では言いにくいことも話しやすくなります。結果として、「やりっぱなし」を防ぎやすくなります。
Q9. 委託先を選ぶときに確認すべきポイントは何ですか?
確認したいのは、分析レポートが読みやすいか、比較データがあるか、改善提案まであるか、産業医・保健師と連携できるか、個人情報保護体制が十分か、という5点です。「報告書は出すが改善支援はしない」という委託先だと、結局社内で止まってしまいがちです。レポートの見やすさと、改善フェーズまで支援できるかどうかが、大きな分かれ道になります。
<参考>
・ 厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
・ 厚生労働省「数値で見るストレスチェック制度の効果検証等に関する調査」
・ 独立行政法人労働者健康安全機構・厚生労働省「これからはじめる職場環境改善~スタートのための手引~研修の教材」
・ 下光輝一「職業性ストレス簡易調査票を用いたストレス現状把握のためのマニュアル-より効果的な職場環境等の改善対策のために-(PDF)」
・ 厚生労働省「ストレスチェック制度簡単!導入マニュアル」
・ 厚生労働省「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」
・ 厚生労働省「ストレスチェック制度関係Q&A」







