休職中の従業員が復職する際には、産業医による復職面談の実施が望ましいでしょう。
復職面談を実施することで、再発のリスクを抑えた職場復帰が可能です。
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この記事では復職面談の目的や復職可否のポイントを解説します。
目次
復職面談の目的について
復職面談の目的は「復職可能かどうか」「復職時の配慮について」の2つを判断することにあります。
目的①復職可能かどうか
産業医は医学的な見地から休職者の状態を観察して、本当に復職可能かどうかの判断をします。
また、産業医は医学的な知識だけでなく、事業場で行っている業務内容や職場環境にも精通しているため、「実際に復職した際に業務を行えるか」という観点から復職判定を行うことが可能です。
そのほかにも、主治医の診断書や上司からの意見を参考に、総合的に復職可能かの判断を行います。
目的②復職時の配慮について
復職時は大きく体力が低下しているため、フルタイムでの勤務が困難な場合があります。
体力面や精神面の配慮をせずに、いきなりフルタイムでの勤務を行うと、再び体調を崩し、休職が必要な状態に陥ってしまう可能性もあります。
そのため休職者には、少しずつ業務にならしていくためのリハビリ勤務(慣らし勤務)が必要です。
産業医は復職面談時に、復職可能かどうかだけでなく、実際に復職が決まった際に時短勤務や労働負担の軽減などの就業上の配慮が必要かどうかやその期間について事業者に対して意見を行います。
それ以外にも、復職後の面談日程や配置転換など、休職者への復職支援を総合的に考えていくのが復職面談においては大切です。
復職判定の基準や復職可否のポイントとは
復職面談では5つの判断基準をもとに、復職可能かどうかの判断を行います。
・ 生活リズム
・ 回復状態(体力や集中力)
・ 通勤は可能か
・ 職場に適応できるか(再発防止)
それぞれの判断基準における復職可否のポイントを解説します。
就業意欲
当たり前ですが、就業意欲のない従業員を無理やり復職させることはできないため、就業意欲の有無は復職可否のポイントとなります。
ただ、収入面の不安や周囲のプレッシャーから就業意欲が湧いていないにもかかわらず復職を急ぐ休職者もいるので、産業医による総合的な判断が欠かせません。
メンタルヘルスの不調で休職した従業員は就業意欲が湧くまで時間がかかる場合が多く、休職が長期になりがちです。
しかし、就業意欲が中途半端な状態で復職させても、再びメンタルヘルスを崩すリスクが高いため、焦らずに本人の意欲が湧いてくるのを待ったほうがよいでしょう。
生活リズム
休職期間中は生活リズムが崩れがちです。
生活リズムが崩れた状態で復職すると、一気に生活サイクルが元に戻るため休職者への負担が大きくなります。
そのため、産業医は休職中に規則正しい生活ができているかどうかも復職可否の判断において重要視します。
回復状態
休職者が業務に耐えられるまで回復しているかどうかも重要な復職可否のポイントです。
多くの休職者は体力や集中力が低下している場合が多く、ある程度の回復が見られたら、業務に復帰させながら徐々に本来の形での復帰を目指します。
通勤は可能か
問題なく通勤して職場までたどり着けるかも重要なポイントです。
ケガによって従来の方法では、通勤できなくなってしまうこともあるでしょう。
また、パニック障害などの精神障害によって休職した従業員は、満員電車での通勤が難しくなっているかもしれません。
なお、安全な通勤ができるかも確認が必要です。
病状や薬の内容によっては運転が制限される可能性があるため、通勤や勤務で車やバイク、重機の運転をする場合は運転の可否について主治医に問い合わせましょう。
職場に適応できるか
休職の原因が職場にある場合、職場環境が改善されているのかどうかも復職の際にはポイントとなります。
せっかく回復して復職したとしても、職場環境がそのままではまた体調を崩してしまうでしょう。
また、産業医が休職者の状態から、元の業務への復帰が難しいと判断した場合は、配置転換などを考える必要があります。
復職面談は社員への配慮が大事
休職が長引けば長引くほど、体力や集中力が低下します。
そのため、休職者にたいしては時短勤務やリハビリ勤務などの配慮が欠かせません。
また、実際に復職面談を行う前に職場復帰をするための具体的なプランが必要です。
職場復帰プランの内容は以下のとおりです。
(ア)職場復帰日
(イ)管理監督者による就業上の配慮
業務サポートの内容や方法、業務内容や業務量の変更、段階的な就業上の措置、治療上必要な配慮など
(ウ)人事労務管理上の対応等
配置転換や異動の必要性、勤務制度変更の可否及び必要性
(エ)産業医等による医学的見地からみた意見
(オ)フォローアップ
管理監督者や産業保健スタッフ等によるフォローアップの方法、就業制限等の見直しを行うタイミング、全ての就業上の配慮や医学的観察が不要となる時期についての見通し
(カ)その他
従業員が自ら責任を持って行うべき事項、試し出勤制度の利用、事業場外資源の利用
出所:厚生労働省「心の健康問題により休業した従業員の職場復帰支援の手引き」
主治医と産業医の意見が異なる場合、どちらを優先すべき?
主治医と産業医の意見が異なる場合は、主治医と産業医の判断を参考とし、事業者が総合的に決定しましょう。
これは産業医と主治医では判断の基準が異なるためです。
主治医の診断書は患者の意見が反映されている場合が多く、「日常生活が問題なくおくれるか」を基準にしてだされます。
一方で、産業医は業務内容を把握しているため、前述した5つの基準のように「業務に耐えられるか」という観点で判断します。
産業医が復職面談後に復職不可と判断する場合は、判断根拠となる具体的な事実も必要です。
復職する際は主治医や産業医の意見はあくまで参考として、人事労務部が総合的に決定しましょう。
従業員を復職させる際の注意事項
従業員の復職は、再び休職に陥らないように慎重に行う必要があります。
ここでは従業員が復職する際の注意点を紹介します。
復職面談は義務ではない
復職面談は義務ではないため、もし従業員が拒否した場合は強制的に実施することができません。
また、復職面談を実施しなかったとしても事業者に罰則はありません。
しかし、復職面談を実施せずに従業員に病状の悪化などが見られた場合、安全配慮義務違反に問われる可能性があります。
(労働者の安全への配慮)
第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
出所:労働契約法
もし、事業者側に安全配慮義務違反が認められた場合、多額の賠償金が発生する場合があります。
面談に係る情報の取り扱い
復職面談の情報は個人情報であるため、その取扱いには注意をしなくてはいけません。
産業医による面談の内容については、産業医に守秘義務があるため、本人の同意なしには事業者であっても知ることができない点に留意してください。
就業規則の確認
就業規則に記載されている休職可能な日数をしっかりと確認しておきましょう。
もし、休職者が回復しないまま、残りの休職日数がなくなってしまった場合、退職や解雇などを行なう必要があります。
復職面談には産業医を
復職面談は義務ではありませんが、休職者の安全な復職のためには欠かせないものです。
休職者が復職する際には復職面談を実施して、リハビリ勤務や配置転換などの対応を行い、無理のない復職を目指しましょう。
また、復職面談には医学的な知識と事業場の知識を持つ、産業医の選任が必要です。
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