「専属産業医」は事業場に常勤する産業医です。
事業場にいる時間が長いので、それだけ企業の産業保健業務への高いコミットメントが期待できますが、それ以外にはどんな特徴があるのでしょうか。
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この記事では専属産業医の特徴と嘱託産業医との違いについて解説します。
目次
事業場に常勤する「専属産業医」とは
専属産業医とは、特定の事業場に常勤している産業医で、労働者が1,000人以上(有害業務の場合は500名以上)の事業場で選任されます。
その事業場専属の産業医となるため、嘱託産業医のように複数の事業場で選任されることはありません。
出勤日数については明確な規定がありませんが、週に3.5~4日は出勤し、事業場内の健康管理室などで産業保健業務に従事します。
専属産業医は、事業場が「主なる勤務先であること」が定められているため、社会保険の加入対象となる程度の出勤日数は確保しておくのが一般的です。
常勤の「専属産業医」と非常勤の「嘱託産業医」の違い
常勤である専属産業医に対して、非常勤の産業医を「嘱託産業医」と呼びます。
嘱託産業医は非常勤の産業医であり、特定のひとつの事業場を勤務先とする必要はなく、月に数回の訪問を行い産業保健業務に従事します。
では、専属産業医と嘱託産業医には業務形態以外にどんな違いがあるのでしょうか。
選任すべき事業場の規模が異なる
専属産業医と嘱託産業医では選任すべき事業場の規模が異なります。
選任すべき産業医の種類と人数は下記のとおりです。
労働者の人数 | 選任すべき産業医の人数 |
50~499人 | 嘱託産業医1人 |
500~999人 | 嘱託産業医1人または専属産業医1人(有害業務を実施している事業場の場合) |
1,000~3,000人 | 専属産業医1人 |
3,001人以上 | 専属産業医2人 |
有害業務に従事している事業場を除くと、専属産業医が必要となるのは1,000人以上です。
平成24年に発表された総務省統計局の調査によると、1,000人以上の規模を持つ法人の割合は全体の0.2%となっており、産業医のほとんどが嘱託産業医であることがわかります。
契約方法が異なる
専属産業医と嘱託産業医の違いとして契約方法があげられます。
基本的に嘱託産業医との契約では、間に産業医紹介サービスなどが入るため、業務委託契約を結ぶことが多く、報酬は訪問回数や訪問時間によって決まります。
専属産業医は、産業医と直接雇用契約を結ぶ場合がほとんどです。
一般的な就業規則と雇用条件がなじまないため、正社員で雇用されることはほとんどありませんが、契約社員として雇用契約を結ぶか顧問契約を結び産業保健業務に従事します。
実施する業務の違い
専属産業医と嘱託産業医に実施する業務の違いはほとんどありません。
基本的な産業医の業務には以下のものがあります。
・長時間労働者への面接指導
・ストレスチェックの実施と高ストレス者への面接指導
・衛生委員会への参加
・職場巡視
・休職者への面談と復職判定
専属産業医も上記の業務に加えて、健康管理や作業管理、環境管理を適切に行うための労働衛生管理体制の構築などがより重要になってきます。
報酬は専属産業医が圧倒的に高額
専属産業医の選任にかかる報酬は、嘱託産業医と比べて圧倒的に高額になります。
専属産業医と嘱託産業医の平均報酬は以下のとおりです。
嘱託産業医の場合、1回の訪問につき60,000~200,000円
産業医にかかる費用は訪問時間や回数、業務内容、地域などにより大きく変動するので、上記の金額はあくまで参考程度に考えてください。
月に数回の訪問のみの嘱託産業医と比べると、専属産業医の報酬は高額です。
企業に合った専属産業医を探す方法!
専属産業医は事業場に常駐するため、企業の産業保健活動により深い関りを持ちます。
そのため、より良い産業医の選任は、企業運営に良い影響をもたらすでしょう。
ここでは、企業に合った専属産業医を探す方法を紹介します。
産業医紹介サービスの利用がおすすめ
産業医を探す方法はいくつかありますが、企業にあった産業医を探すのであれば産業医紹介サービスを利用しましょう。
産業医紹介サービスを利用することで、企業に登録しているたくさんの産業医のなかから、条件に合致した人材を選任できるので、ミスマッチの確率が減ります。
さらに、契約の締結まで産業医紹介会社が間に入って調整してくれるので、煩雑な契約関係の手続きを代わりに行ってくれます。
また、産業保健にかかわる法律のプロが手続きを行うので、契約の不備を防ぐことができるでしょう。
現在の嘱託産業医に依頼する場合には注意が必要
もし、企業規模の拡大に伴い、現在選任している嘱託産業医に専属産業医を依頼したい場合は注意が必要です。
嘱託産業医は、複数の事業場で選任されているか、開業医として自身の診療所を持っている場合がほとんどであり、すぐには専属産業医として勤務できない産業医がほとんどです。
そのため、もし現在の嘱託産業医に専属産業医への依頼をしたい場合は、事業場の人数が1,000人を超える前に余裕を持って打診してみましょう。
しかし、常勤と非常勤では、あまりに勤務形態が異なるため、そのまま専属産業医を務めてくれるケースは稀です。
現在の嘱託産業医に期待するよりも、新たに専属産業医を選任する準備を整えておきましょう。
大規模事業場となると専属産業医1人で全体をカバーするのは難しいため、専属産業医と嘱託産業医を併用するのもひとつの方法です。
嘱託産業医と兼任するための条件
基本的には専属産業医と嘱託産業医を兼任することはできませんが、一定の条件を満たせば可能です。
兼任の条件は以下のとおりです。
1 専属産業医の所属する事業場と非専属事業場とが、[1]労働衛生に関する協議組織が設置されている等労働衛生管理が相互に密接し関連して行われていること、[2]労働の態様が類似していること等一体として産業保健活動を行うことが効率的であること。
2 専属産業医が兼務する事業場の数、対象労働者数については、専属産業医としての趣旨及び非専属事業場への訪問頻度や事業場間の移動に必要な時間を踏まえ、その職務の遂行に支障を生じない範囲内とし、衛生委員会等で調査審議を行うこと。なお、非専属事業場への訪問頻度として、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)第15条に基づき、少なくとも毎月1回(同条で定める条件を満たす場合は少なくとも2月に1回)、産業医が定期巡視を実地で実施する必要があることに留意すること。
3 対象労働者の総数については、労働安全衛生規則第13条第1項第4号の規定に準じ、3千人を超えてはならないこと。
出所:基発「専属産業医が他の事業場の非専属の産業医を兼務することについて」
つまり、グループ企業であれば別事業場で、専属産業医と嘱託産業医を兼任することが可能です。
逆にそれ以外の場合では上記の条件を達成するのは難しいため、兼任は現実的ではないでしょう。
まとめ
この記事では、専属産業医について解説しました。
大規模事業場の産業保健体制を整えるためには専属産業医が欠かせません。
規模が大きくなればなるほど、労働者一人ひとりに目を配るのが難しくなっていくため、労災が起こりにくい環境を整え、もし体調不良が起こってもすぐに相談できる体制を構築することが重要です。
「さんぽみち」の運営元であるドクタートラストは、専属産業医の紹介サービスを提供しています。
また、企業の産業保健体制構築のお手伝いも行っているので、お気軽にお問合せください。
<参考>
総務省統計局「平成24年経済センサス‐活動調査」