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今、教員へのメンタルヘルス対策や相談体制の整備が求められています。
厚生労働省より教員のメンタルヘルス対策コラムが公開されているように、教員へのメンタルヘルス対策は注目すべき課題です。
こころの耳「こころのケア -学校の先生へ-」
そこで今回は、教員のメンタルヘルス対策を精神保健福祉士がわかりやすく解説します。
目次
教員にもメンタルヘルス対策が必要
企業の従業員だけでなく、教員にもメンタルヘルス対策は必要です。
教員の精神疾患による病気休職者数は、2019年頃に年間5,400名余りでした。
昨今は低下傾向といえども、依然として年間5,000名前後の方が精神疾患により病気休職をされています。
なぜ、高止まりを続けているのでしょうか。
教員のメンタルヘルス不調については、教育現場における課題に次のような特徴が見られることが要因の一つと考えられます。
・ 残業時間が多い
・ 業務改善に対して、校長などの上長と現場の職員との種々の認識に差がある
・ 校長や副校長等、上長が部下のストレス状態を把握できないケースが多い
教育現場には、教員や事務職員等、それぞれの職員が個別に業務を進めるという特有の風土があります。
このことから、教員個人が問題を一人で抱えやすく、上長も現場の異変を確認しづらいことが予想されますね。
民間企業とくらべメンタルヘルス対策が後手に回る要因とも言えそうです。
そのため、組織的に教員のメンタルヘルス対策を見直すことが求められます。
教員がストレスを感じる原因は?
文部科学省の報告をもとに、教員がストレスを感じやすいポイントを、立場別に整理してみましょう。
職場環境改善を進めるためには、まずは教員がどのような点にストレスを溜めているかということを知ることが大切です。
校長や教頭の立場から
校長や教頭は、教員をまとめる責任ある者として、学校経営ならびに保護者対応へストレスを強める傾向があります。
学校の規模が大きいほどストレスは強まるようですが、教員の責任を一手に背負いながら経営を維持する気苦労は想像して余りがあるものです。
副校長や教頭は、それらの責任に加え書類管理などに負われることも珍しくなく、実務的に業務量過多になることで負荷を感じやすいようです。
教諭の立場から
教諭は実際に児童生徒へ接する者として、生徒指導や学習指導、保護者対応にストレスを強める傾向があります。
児童生徒の成長を預かる者として、責任感を強め、さらに保護者の要望に応えていくというマルチタスクが求められるのでしょう。
加えて、30代の教諭は部活動の指導に関してストレスを高める傾向があります。
子どもらと一緒になって部活動に励むことで、体力時間ともに浪費するのかもしれません。
事務職員の立場から
事務職員は、学校の経営や児童生徒への直接的な関わりは薄いものの、業務量に苦慮する傾向があるようです。
児童生徒が過ごしやすい環境をつくるための校内整備を始め、予算などの金銭管理、学校と地域を結びつけるための情報管理等、その業務は多岐にわたります。
文部科学省の調査でも、事務職員の定員数の少なさが指摘されています。
多忙な業務を限られた人員で処理する必要に迫られる背景があるようですね。
教員のメンタルヘルス対策にはどんなものがある?
教員のメンタルヘルス対策を検討するにあたり、特別なことは必要ありません。
文部科学省からも提起されている通り、民間企業と同様に、次のようなメンタルヘルス対策を一つひとつ見直していきましょう。
セルフケアを促す
教員のメンタルヘルス対策を検討するにあたって、教員一人ひとりが自らをケアするセルフケアの力を高めることは、非常に有意義です。
児童生徒がいる手前、つい気丈にふるまうこともあるかもしれませんが、自身の健康維持が子どもらの健康増進につながります。
セルフケアは、まずは自身のストレスに気づくことが大切ですね。
自身の不調のサインを察し、それに対処できる知識や方法を身に付けます。
早めに産業医や外部医療機関の医師へ相談するという意識づくりも欠かせません。
校長、教頭、主任教諭等によるケアを見直す
ラインケアは、校長や副校長、主任教諭等が行う教員のためのメンタルヘルスケアです。
自らのメンタルヘルスをセルフケアで維持をしつつ、部下である教諭や事務職員のメンタルヘルスケアに臨みます。
日常的に職場の観察を怠らず、異変のある教員に早めの介入を行います。
教員らに一任せず、責任者として一緒に課題解決に関わるなど細やかな配慮があることで、効果的なメンタルヘルスケアを行うことができます。
ストレスチェックを導入し、活用する
教員のメンタルヘルス対策には、ストレスチェックを活用しましょう。
ストレスチェックには、57問と80問の2種が用意されていますが、職場内における課題を洗い出すことができるのは80問のストレスチェックです。
57問は教員個々のストレス状態を把握することはできますが、職場全体としての課題を知り、職場環境改善のための対策を検討するためには80問のストレスチェック実施が最適です。
産業医の配置、相談体制を構築する
産業医は、文部科学省が「産業医学の専門家として教職員の健康管理等を行う者」と、定義しています。
産業医:産業医学の専門家として教職員の健康管理等を行う者
○健康診断・面接指導の実施、作業環境の維持管理等の教職員の健康管理等を行う。
○教職員の健康確保のため必要があるときは、学校の設置者に対し、教職員の健康管理等について必要な勧告を行うことができる。
○少なくとも月1回学校を巡視し、作業方法、衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに教職員の健康障害を防止するため必要な措置を講ずる。
文部科学省「学校における労働安全衛生管理体制の整備のために(第3版)」
つまり、教員のために存在する医師ということです。
メンタルヘルスの他、身体的なことも広く相談することができるため、大いに活用したいものですね。
加えて、相談窓口を職場内外に設置することで、職員が気軽に相談でき、問題が大きくなる前の介入が期待できます。
いずれも職場のリスクヘッジとして有効です。
業務改善・効率化
教育現場の体制整備が進まない背景には、次のような要因があります。
・ メンタルヘルスにおける有資格者の不在
・ 財政的な事情
メンタルヘルス対策に関する知識の習得は、セルフケア力を上げるためには大変有意義な試みです。
ストレスチェックや産業医などの制度やその意義などは、定期的に教員へ周知しましょう。
教育委員会や管理職のリーダーシップをもって取り組むと、より広く教職員の意識づくりに奏功することでしょう。
まとめ
「さんぽみち」を運営するドクタートラストは、官公庁や教育関係機関からもご相談を多くいただいております。
教員向けのストレスチェックをはじめ、産業医や産業保健スタッフの派遣、外部相談窓口のご提供等、種々のサービスがございますのでお気兼ねなくお問い合わせください。
教員のメンタルヘルスを守るためのお手伝いをいたします。
<参考>
・ 文部科学省 学校における働き方改革特別部会「教員のメンタルヘルス対策に関するこれまでの取組等(PDF)」
・ 文部科学省「「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について(中間まとめ)」関連参考資料(3)(PDF)」