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【保健師監修】産業医が復職を認めないケースとは?5つの判断基準

産業医が復職を認めないケースとは?5つの判断基準
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メンタルの不調が原因で労働者が休職した場合、特に復職時期を見極めるのが難しく、産業保健スタッフと主治医の連携が重要になってきます。
しかし、主治医が復職を許可しても産業医が復職を認めないケースがあるのはご存じでしょうか。

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今回は休職・復職時における産業医面談の必要性と、産業医が復職を決める際の5つの判断基準について紹介します。

休職後の復職、産業医面談は必要?

労働者がメンタルヘルス不調を理由に休職した場合、その復職時期は慎重に検討する必要があります。
労働者の心身が万全でないまま復職してしまった結果、再び休職してしまうおそれがあるからです。
たびたび休職を繰り返せば、それだけ退職リスクも上がります。
休職状態にあった労働者が復職する場合、必ず産業医面談をおこないましょう。
産業医面談をおこなわず、休職者の復職を急いだ場合、労働契約法の安全配慮義務違反となる可能性があります。

(労働者の安全への配慮)
第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
出所:労働契約法

事業者は「必要な配慮」の一部として、休職者が復職した際に安心して働ける環境を整備しなくてはいけません。
そのためには産業医による面談、意見の聴収が必要不可欠です。
産業医の意見をもとに配置転換や就業制限をおこない、労働者の不安を取り除くことが、スムーズな復職のカギになります。
また、復職の際に、主治医と産業医の意見が食い違うことがあります。この場合は、原則的に産業医の意見を尊重するのが望ましいでしょう。
産業医と主治医では立場と判断基準が異なるためです。
主治医は日常生活を問題なく送れるまで回復していれば、復職を許可します。
しかし、産業医はストレスのかかる職場で勤務する上での安全性や、事業場の環境面などを考慮して判断を下します。
なかには休職者の希望で主治医が復職の許可を出してしまうケースもあるので、産業医の総合的な判断を元に復職時期の決定をしましょう。

産業医が復職を認めないケースがある?5つの判断基準

産業医が休職者の復職を認めない場合は、以下の5つの基準を満たしていない可能性があります。

・ 就業意欲
・ 生活リズム
・ 回復状態(体力や集中力)
・ 通勤は可能か
・ 職場に適応できるか(再発防止)

本人が希望したからといってすぐに職場へ復帰できるわけではありません。
特にメンタルヘルス不調で休職した労働者の場合、本人の認識よりもダメージが大きく、復職しても休職を繰り返してしまうケースが多くみられるからです。
こうした事態を防止するために、復職には慎重で総合的な判断が求められます。
産業医は休職者の復帰を認めるかどうかを検討するにあたって、上記の5つの判断基準を用います。それぞれの判断基準について詳しく解説していきます。

就業意欲

産業医が復職を判断する基準として、最も重要なのが就業意欲です。
就業の意欲がなくなってしまった労働者を、事業者が強制的に復職させることはできないため、産業医が復職を認めないケースもあります
しかし、就業意欲は本人に聞くしか確認する方法がないため、本人の様子や身の回りの状態などを含めて総合的に判断しなければなりません。
また、メンタルヘルス不調者は就業の意欲を取り戻すのに時間がかかる場合が多いです。
無理をして復職させても休職を繰り返すことが多いため、根気強く就業の意欲が出てくるのを待つべきでしょう。

生活リズム

休職していた労働者が復職するためには、決まった時間に起きて出社するという生活リズムを取り戻しておくのも大切です。
休職期間中は就寝時間や起床時間が不規則になりがちです。復職して生活リズムが変わると、身体的にも精神的にも負担が大きく、心身のバランスを崩してしまう可能性があります。
徐々に復職に向けて生活リズムを整えていくために、1日のスケジュールを記入してもらうのが望ましいでしょう。
復職の際に大切なのは計画的に取り組むことです。最低1週間はスケジュールを記入してもらい、生活リズムが整っているか確認しましょう。
また、復職してからしばらくはスケジュールの記録をお願いし、問題なく復職できているかを産業医と一緒にチェックすることも可能です。

回復状態

長い休職期間は体力を低下させるため、産業医が復職を判断する際は体力や集中力にも注視します。
産業医がフルタイムでの復職を認めないケースもあるため、その場合は就業制限をおこないながら、じっくりと職場に慣らしていく必要があります。
復職してから、きちんと睡眠はとれているのか、起床時に疲れは残っていないか、始業に間に合うように起きられているかなどをモニタリングしていきましょう。

通勤は可能か

そもそも職場まで辿り着けるのかも重要な判断基準です。
休職の理由がケガであった場合、従来の通勤方法では通勤できなくなってしまうことも考えられます。
また、メンタルヘルス不調によりパニック障害やうつ病を発病すると、電車の人混みに耐えられず、通勤が困難になってしまう場合があります。
その際は、出社の時刻を変更するなど、柔軟な対応をしていきましょう。

職場に適応できるか

休職の原因が職場にあった場合、本人の回復よりも職場環境の改善が重要です。
過重労働や人間関係のトラブルは産業医の指導のもと、適切に解消していきましょう。問題の根本が解決しないまま放置すれば、再発は避けられません。
新たな休職者を生み出す結果を招きかねないでしょう。
産業医が同じ職場環境での復職を認めないという判断をした場合は、職種の変更や今までとは違う環境で業務に就いてもらうことも検討が必要です。
本人とコミュニケーションをとりながら、復職後の業務について、慎重に検討していきましょう。

労働安全衛生法における産業医の権限とは?

産業医は事業者に対して権限を持っており、労働者の健康管理や職場環境の保持のために、その権利を行使することができます。
産業医の権限について労働安全規則では以下のように定めています。

(産業医及び産業歯科医の職務等)
第14条 法第13条第1項の厚生労働省令で定める事項は、次に掲げる事項で医学に関する専門的知識を必要とするものとする。
1 健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
2 法第66条の8第1項、第66条の8の2第1項及び第66条の8の4第1項に規定する面接指導並びに法第66条の9に規定する必要な措置の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
3 法第66条の10第1項に規定する心理的な負担の程度を把握するための検査の実施並びに同条第三項に規定する面接指導の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
4 作業環境の維持管理に関すること。
5 作業の管理に関すること。
6 前各号に掲げるもののほか、労働者の健康管理に関すること。
7 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。
8 衛生教育に関すること。
9 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること。
<中略>
(産業医に対する権限の付与等)
第14条の4 事業者は、産業医に対し、第十四条第一項各号に掲げる事項をなし得る権限を与えなければならない。
2 前項の権限には、第14条第1項各号に掲げる事項に係る次に掲げる事項に関する権限が含まれるものとする。
1 事業者又は総括安全衛生管理者に対して意見を述べること。
2 第十四条第一項各号に掲げる事項を実施するために必要な情報を労働者から収集すること。
3 労働者の健康を確保するため緊急の必要がある場合において、労働者に対して必要な措置をとるべきことを指示すること。
出所:労働安全衛生規則

産業医はこの権限のもとに、ストレスチェックや職場巡視、健康診断、面談をおこないます。
実際に休職者がでた際に、産業医面談をおこない復帰をうながすのも大切です。
ですがそれ以上に、日常的に労働者の健康管理、職場環境の保持につとめることが、休職・復職トラブルを予防するうえで重要になります。
産業医は意見を述べたり、面談をしたりする権限しかなく、直接人事などにタッチすることができません。そのためには事業者側と産業医が協力して、休職・復職トラブルに立ち向かうことが求められます。

労働安全衛生法における産業医とは?産業医の仕事内容

まとめ

今回は、復職する際の産業医面談の必要性と5つの判断基準について詳しく解説しました。
復職のタイミングは非常に難しく、すべての人を杓子定規に当てはめることはできません。
なかには産業医が復職を認めないケースもあるため、産業医との面談を通して、一人ひとりにあった復職までの計画を立案して実行していくことが大切です。
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