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【保健師監修】休職中や休職期間満了後の退職でトラブルを防ぐための注意点

休職中や休職期間満了後の退職でトラブルを防ぐための注意点
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この記事は7分で読めます

労働者の休職中や復職時、休職期間満了後に退職する際はトラブルが起こる可能性が高く、対処を間違えると訴訟に発展する恐れもあるため、注意が必要です。
この記事では、休職中や休職期間満了後の退職での具体的なトラブルと、それを防ぐための方法を解説します。

休職中や休職期間満了後の退職でよくあるトラブル

労働者の休職は非常にデリケートな問題です。
休職中は体調を大きく崩していますし、働くことができないという不安から、労働者が不安定になっていることが多いのです。対応を間違えることで、企業との信頼関係が崩壊し、大きなトラブルに発展してしまいます。

まずは、労働者の休職や休職期間満了後の退職について、具体的にどんなトラブルが起こるのか見ていきましょう。

休職中に退職したいとメールが届いた

休職中の労働者が一方的にメールでの退職を伝えてくるケースがあります。
労働者の休職中に退職の意思を伝えるメールが届いた場合、企業側はそれを拒否できません。正式な退職届をメールまたは郵送で受け取り、規定通りに処理しましょう。

また、休職者に対して、有給休暇は消化できないこと、自己都合の退職になることを理解してもらう必要があります。退職金については会社のルールに沿って金額や支払期限を通知しましょう。

休職期間満了後の退職であっても、定められたルールの通り処理することが重要です。ルールにはずれた対応をすることで後々のトラブルにつながるため、慌てずに落ち着いて対処しましょう。

休職期間中に転職活動をしていた

労働者が休職中に転職活動をすることは、法的には問題ありません。
しかし、あくまで休職は復職を前提にして会社を休んでいる状態です。そのため、本来なら療養に専念すべき期間に転職活動をすることは好ましいことではないでしょう。

もし、労働者が休職期間中に転職活動をすることを規制したい場合は、就業規則にその旨を規定しましょう。休職期間中の転職活動が発見された際に、就業規則を基に懲戒処分を下すことができます。

休職をすすめたら退職勧奨と勘違いされた

労働者の休職手続きに際して多いのが、休職をすすめた際に、退職勧奨と勘違いされてしまうトラブルです。
休職前の労働者は、心身のバランスを大きく崩している場合があり、些細なコミュニケーションの行き違いが大きなトラブルにつながる可能性もあります。また、休職へネガティブなイメージを持つ労働者も多く、「休業=退職」と考えてしまうことも多いのです。

休職前の労働者とのコミュニケーションは慎重におこなう必要があります。休職は退職勧奨とは真逆であり、休職は解雇しないための制度だということを理解してもらいましょう。
また、休職から復職までのプランを提示して、労働者が復職までを具体的にイメージできるようにしておくことも重要です。

休職期間満了後の解雇が不当であると訴えられた

ほとんどの場合、休職期間満了後の退職あるいは解雇は適法です。
休職期間は法律で定められているものではなく、会社ごとに就業規則で定めています。休職期間満了後に復職できなかった場合、自然退職扱いにするのが一般的であり、特殊な場合を除き、違法とされることはないでしょう。

では、不当解雇とされる場合はどんなときでしょうか。

・過重労働、セクハラ、パワハラ、退職強要などによって精神疾患を患い休職した場合
・医師が復職可能と診断しているのにも関わらず企業が復職を認めなかった場合

企業側の明確な過失で休職に追い込まれた場合、休職期間満了後の自然退職でも不当解雇にあたるケースがあるため、注意が必要です。

休職中の給料を求められた

休職中の労働者に対し、給料の支払い義務はありません
休職中は労働者が労務の提供をおこなっていないため、企業が給与やボーナスを支払う必要はないのです。
しかし、労働者から休職中の給料を求められるなどのトラブルを防ぐために、就業規則において、休職中の給与について明文化する必要があるでしょう。
また、傷病手当や労災保険が受給できる旨をしっかりと伝えておくのも重要です。
給料に代わって傷病手当金を受給するためには以下の条件をすべて満たしていなければいけません。

・業務外の病気やケガで療養中であること。
・療養のための労務不能であること。
・4日以上仕事を休んでいること。
・給与の支払いがないこと。

業務内の病気やケガについては労災保険を利用しましょう。

休職と復職を繰り返す

休職と復職を繰り返す労働者の対応は難しい問題です。
休職期間を満了しているわけではないので、自然退職にはできません。また、復職させても通常の業務には戻れず、再び欠勤しがちになり休職を繰り返してしまう場合もあります。

労働者が休職と復職を繰り返す原因として考えられるのは、復職のタイミングが早すぎることです。
特にメンタル不調による休職の場合、復職タイミングの判断について慎重になる必要があります。本人が復職を希望していて主治医も復職を許可していても、実際には労働に耐えられないことがあるためです。
復職判定には産業医の面談が必須です。

産業医が復職を認めないケースとは?5つの判断基準

休職と復職を繰り返す問題は、労働者の気質やモチベーションに依る部分も大きく、非常に難しい問題です。あらかじめ就業規則で、休職と復職を繰り返す場合には、解雇できるように定めておくのも有効な手段でしょう。

休職中の労働者の退職を防ぐために必要なこと

トラブルによる休職中の労働者の退職を防ぐには、企業の復職支援を充実させることや就業規則の整備が必要です。
では、具体的にどんな施策が、休職中の労働者の退職を防ぐために必要なのでしょうか。

就業規則で休職のルールを規定する

トラブルによる休職中の労働者の退職を防ぐには、事前に就業規則で休職のルールを規定しておくことが重要です。
従業員数が少なく、休職制度が適用されることが少ない企業では、休職のルールが整備されていないことがあります。

どんなに未然予防を徹底しても、労働者の休職リスクは常にあります。休職の際に慌てることのないよう、事前に細かく休職のルールを定めておきましょう。
就業規則内の休職のルールを決める際に重要な項目は以下のとおりです。

・休職の条件
・休職期間
・復職条件
・退職条件

休職中の従業員と定期的に連絡をとる

トラブルによる休職中の労働者の退職を防ぐために、休職中の労働者と定期的に連絡をとることは非常に重要です。
どうしても休職中は労働者のメンタル面が不安定になりがちです。しっかりとコミュニケーションをとり、労働者の状態を把握しましょう。定期的な面談は休職者の心を安定させます

休職者に対しての対応を怠ると、休職者は「自分は必要とされていないかもしれない…」と考えてしまうことが多いです。休職中の労働者との面談を定期的におこなうことで、休職中も会社から必要とされていると感じ、復帰に向けて前向きに治療に専念できます。
ただし、休職中の労働者との連絡は、メンタル面の負担を軽減するために、事前に決められた日時にだけ連絡をとるようにしましょう。行き違いがないように窓口をひとつに絞ることも重要です。

定期的に連絡をとるうえで以下の点をよく観察しましょう。

・就業の意欲
・生活リズム
・体力や集中力の状態

休職中の労働者が復職しやすい環境を作る

休職した労働者の退職を防ぐためには、労働環境の整備も必要です。
労働環境の見直しがないまま復職させれば、再び休職するリスクや退職するリスクが高まるだけでなく、ほかにも休職者が増えていく危険性もあります。

人間関係も含めた職場環境の改善は、産業医による職場巡回をおこない、産業医からの助言を基に職場改善を実施するのが有効です。
労働者の健康や安全を守ることは事業者の義務であり、休職者がでる前に職場環境や過重労働に対して気を配っておきましょう。

休職中の従業員と復職に向けた相談をする

休職中の労働者の退職を防ぐために、より重要なのが休職者と相談しながら職場復帰を進めていくことです。
労働者によっては職場環境の改善ではなく、業務形態などを変更する必要があります。例えば、精神障害で満員電車に乗ることが難しい労働者に対しては、出社時間を変更するなどの対応が求められます。
職場復帰支援プログラムどおりに進めていくことも大事ですが、1人ひとりにあったサポートをしていくことが最も重要です。

退職を防ぐには休職期間の延長を検討する

休職中の労働者の復職を急ぐと、再び休職する可能性が高く、退職へとつながってしまいます。
休職中の労働者は仕事を休むことに対して負い目を感じる場合が多く、完治していないのに、企業側に復職の意思を伝えてしまうことがあります。
企業も労働者側が復帰の意思を示していることで、ついつい復職を許可。復職後、病状が悪化し再び休職してしまうという悪循環に陥ります。
特にメンタル不調は完治が判断しにくいため、再び休職するリスクが高く、復職の判断をする際は産業医面談が必須です。
必要であれば休職期間の延長を検討しましょう。

休職中の給与・賞与について就業規則で規定しておく

前述のとおり、休職中の給与や賞与は基本的にはありません。ただし、労働者とのトラブルを防ぐために、休職中の給与や賞与についてもあらかじめ就業規則で規定しておきましょう。
また、就業規則で給与やボーナスの支給が記載されている場合は、支払いの義務が生じます。規則に沿って支払いを迅速に済ませましょう。

雇用保険の手続きを速やかにおこなう

休職中の労働者が退職することになった場合、退職時には雇用保険の手続きを迅速におこなうことも重要です。
雇用保険の手続きが遅れると、失業給付金の受け取りの遅れにつながります。失業給付金が受け取れないと企業の不信感につながり、不要な争いを招きかねません。
また、退職理由の記載などが問題になることも多いため、事前に退職理由などの確認をとりましょう。

退職金を社内規定に従い迅速に支払う

休職期間の満了による退職でも、退職金について就業規則内での規定がある場合、規則に従って退職金を支払う義務があります。

退職金の支払いの際に注意すべきなのが以下の点です。

・休職期間を勤続年数に数えるか
・自己都合か会社都合か
・いつまでに払うか

すべて事前に就業規則で規定しておかなければ、後々のトラブルの種になりかねません。退職金は金額が大きいので、支払いの遅れや金額の誤りがあった場合、大きなトラブルに発展しやすいため注意が必要です。

休職や退職・復職判定は産業医にアドバイスをもらう

休職や復職時のトラブルを防ぐためには、休職が必要と思われる労働者や休職中の労働者に対して産業医面談をおこない、医師の助言をもらいましょう。
メンタルヘルス不調の場合、労働者の多くが自身の不調について無自覚です。医学的な知見を持った産業医が、面談をおこなうことで、不調の早期発見や未然予防につながります。

復職判定の際も、業務内容や職場環境を把握した産業医の面談が重要です。
業務に従事可能なのかという視点で、総合的に復職の判断を下します。必要に応じて、業務形態や職種の変更をおこない、再びの離職リスクを回避することが可能です。

まとめ

今回は、休職や休職期間満了時の退職トラブルとその防止法についてわかりやすく解説しました。
休職や退職時のトラブルは大きな問題につながる場合が多く、最悪の場合、訴訟問題に発展してしまうケースも考えられます。企業の信用が失墜してしまう前に、適切な対応をしておくことが必要です。
ドクタートラストは、休職や復職時に面談をおこなう産業医の選任をお手伝いします。
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