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健康診断に産業医はなぜ必要?健康診断の事後措置や産業医による就業判定の流れ

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従業員の健康を守るために実施する健康診断。事業者は年に1回の健康診断を実施するだけでなく、健康診断を実施した後には、産業医(医師)の医学的知見を踏まえた就業判定をもとに、事業者は適切な措置を講じる義務があります。

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今回の記事では、健康診断後に事業者が取るべき事後措置をご説明いたします。

健康診断の目的とは?産業医は必要?

労働安全衛生法により、事業者には従業員の人数にかかわらず1年以内に1回の健康診断の実施が定められています。
これは、事業者が健康診断結果により労働省の健康状態を適切に把握し、医学的知見を踏まえて労働者の健康管理を行うためですが、この「医学的知見を踏まえて」という点において、産業医は必要となってきます。
まずは、労働安全衛生法の中でも、健康診断について詳しく定められている部分を細かく紐解いていきましょう。

健康診断の目的

健康診断は、事業者が労働者の健康状態を適切に把握するために、労働時間の短縮、作業転換等の事後措置を行い、脳・心臓疾患の発症の防止、生活習慣病等の増悪防止を図ることを目的としています。
これは、労働契約法5条に定められた安全配慮義務の観点からも重要です。

労働契約法
(労働者の安全への配慮)
第5条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

健康診断は事業者の義務(労働安全衛生法66条1項)

定期健康診断を実施する義務は事業者に課せられており、実施しない場合は処罰されることもあります。
事業者は、労働者の受診率が向上するよう周知や指導に努める必要があるとされています。
一方、労働者側にも健康診断を受ける義務があります。(自己保健義務)
事業者が指定した健診機関を希望しない場合は、他の医療機関で受診しても構いませんが、その結果を事業者に提出する必要があります。

労働安全衛生法
(健康診断)第66条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第66条の10第1項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。るものとする。

健康診断実施後の措置(労働安全衛生法66条の5、66条の6)

労働者の健康診断結果を受理した事業者は、健康診断の結果の内容にかかわらず、結果を本人に通知する義務があります。
異常所見を診断された労働者については、これまでと同様の条件で働くことができるか、産業医の意見を聞かなければなりません。
厚生労働省の『健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針』には、下記のように記されています。

産業医の選任義務のある事業場においては、産業医が労働者個人ごとの健康状態や作業内容、作業環境についてより詳細に把握しうる立場にあることから、産業医から意見を聴くことが適当である。
厚生労働省『健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針』

従業員が50人未満で産業医を選任していない場合は、労働者の健康管理を行うにあたり必要な医学に関する知識を有する医師から意見を聴くことが適当とされています。
実際には単発で産業医に依頼するほか、地域の産業保健センターを活用する方法もあります。

労働安全衛生法
(健康診断実施後の措置)
第66条の5 事業者は、前条の規定による医師又は歯科医師の意見を勘案し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講ずるほか、作業環境測定の実施、施設又は設備の設置又は整備、当該医師又は歯科医師の意見の衛生委員会若しくは安全衛生委員会又は労働時間等設定改善委員会(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(平成4年法律第90号)第7条に規定する労働時間等設定改善委員会をいう。以下同じ。)への報告その他の適切な措置を講じなければならない。
2 厚生労働大臣は、前項の規定により事業者が講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
3 厚生労働大臣は、前項の指針を公表した場合において必要があると認めるときは、事業者又はその団体に対し、当該指針に関し必要な指導等を行うことができる。
(健康診断の結果の通知)
第66条の6 事業者は、第66条第1項から第4項までの規定により行う健康診断を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該健康診断の結果を通知しなければならない。

保健指導・受診勧奨の実施(労働安全衛生法66条の7)

健康診断結果から、特に健康の保持に努める必要がある労働者には、医師または保健師による保健指導を実施するよう、努力義務として定められています。
努力義務ということもあり、実施していない企業もありますが、保健指導では健診項目の個々の結果だけではなく、総合的な健康状態をもとに指導を行うことができます。
悪化すると後述する産業医による就業判定で要休業となるリスクも高まるため、ぜひ実施しましょう。

労働安全衛生法
(保健指導等)
第66条の7 事業者は、第66条第1項の規定による健康診断若しくは当該健康診断に係る同条第5項ただし書の規定による健康診断又は第66条の2の規定による健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師又は保健師による保健指導を行うように努めなければならない。
2 労働者は、前条の規定により通知された健康診断の結果及び前項の規定による保健指導を利用して、その健康の保持に努めるものとする。

健康診断結果を産業医に提出するのはなぜ?

以前は、従業員50名以上の事業者が労働基準監督署に提出する「健康診断結果報告書」には、産業医の押印もしくは電子署名が必要でした。
しかし、健康診断にかかる情報の電子化促進ため、2020年8月より不要となりました。
現在は、産業医の氏名記入欄は、企業の担当者による代筆が認められています。
ただし、健康診断の結果に対し産業医の意見聴取を行う等、事業者に課せられた義務自体に変更はありません。
そのため、健康診断結果は産業医に提出し、就業判定などの意見を聴取する必要があります。

産業医による就業判定の流れ

就業判定とは、労働者の健康を守るため、異常所見があった労働者に就業制限や休業の措置が必要かどうか、産業医の意見を仰ぐことです。
これは、事業者に課せられる安全配慮義務(労働契約法5条)、病者の就業禁止(労働安全衛生法68条)が法的根拠となっています。
産業医は、労働者の作業環境、労働時間、過去の健診結果などを判断材料として、大きく下記の3つの区分で就業判定を行います。

【産業医の就業判定区分】
1. 通常就業可
2. 条件付き就業可(労働時間の短縮、作業の転換など)
3. 要休業(療養のため、休暇・休職などにより一定期間勤務させない)

産業医の就業判定をもとに、労働者からの意見を聴取したうえで、最終的な就業上の措置は事業者が決定します。

健康診断事後措置の流れ

では、ここまで解説してきた健康診断後の流れを整理しましょう。

【健康診断後の流れ】
① 健康診断結果の受領・異常所見チェック
② 健診結果の労働者への通知
③ (異常所見ありの場合)産業医による保健指導・受診勧奨の実施(努力義務)
④ (異常所見ありの場合)産業医の意見聴取・就業判定
⑤ (異常所見ありの場合)就業上の措置の決定

就業上の措置を取る場合、条件付き就業や要休業となる際は、労働者のキャリアや収入にも大きな影響を与えることがあります。
一方的に就業上の措置を労働者に言い渡すのではなく、労働者と産業医で面談を実施し、本人の理解を得られるようにすることが重要です。

まとめ

今回は、健康診断後の事後措置と産業医の役割について解説しました。
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