近年、職場におけるメンタルヘルス対策への関心が高まっています。
長時間労働や人間関係、働き方の変化などを背景に、メンタルヘルス不調を抱える労働者は少なくありません。
しかし、「どこまで会社が対応するべきなのか」「社員の不調にどう気づけばよいのか」と悩む担当者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、職場で起こるメンタルヘルス不調の原因やサイン、社員の変化に気づいたときの初期対応について解説します。
目次
職場のメンタルヘルスとは
メンタルヘルスとは、「こころの健康状態」を指す言葉です。
WHO(世界保健機関)では、メンタルヘルスについて以下のように述べています。
「人々が日々のストレスに対処し、自分の能力を発揮し、よく学び、よく働き、自身の所属するコミュニティに貢献することができる、精神的なウェルビーイングが保たれている状態」
世界保健機関(WHO)「世界保健機関(WHO)職場のメンタルヘルス対策ガイドライン」
近年は、働き方の変化や業務の複雑化などにより、職場で強いストレスを抱える人が増えています。
また、精神障害による労災申請件数も増加傾向にあり、企業にとってメンタルヘルス対策は重要な課題となっています。
従業員の不調を放置すると、休職や離職、生産性低下などにつながる可能性もあります。
そのため、企業には従業員が安心して働ける環境づくりが求められています。
メンタルヘルス不調は誰にでも起こりうる
メンタルヘルス不調は、特別な人だけがなるものではありません。
責任感が強い人、真面目な人、周囲に相談することが苦手な人ほど、不調を抱え込みやすい場合もあります。
また、異動や昇進、家庭環境の変化など、誰にでも起こりうるライフステージの変化や、一般的にはめでたいとされる出来事がきっかけになることもあります。
そのため、「自分の職場には関係ない」と考えるのではなく、どの企業でも起こりうる問題として向き合うことが大切です。
職場でメンタルヘルス不調が起こる主な原因
職場で社員がメンタルヘルス不調に陥る原因としては以下のものが考えられます。
長時間労働や業務負荷
長時間労働や過度な業務負荷は、メンタルヘルス不調の大きな要因です。
十分な休息が取れない状態が続くと、疲労が蓄積し、心身に大きな負担がかかります。
また、「仕事量に対して人手が足りない」「常に時間に追われている」といった状態も、強いストレスにつながります。特に、厚生労働省示す時間外労働の上限である「月45時間」を超える状態が常態化すると、睡眠時間が減少してしまい、疲労の蓄積を招き、さらには、心疾患や脳血管疾患、うつ病といったリスクも高まります。
職場の人間関係
上司や同僚との関係性に悩みを抱える人も少なくありません。
職場内に相談しにくい雰囲気がある、孤立感がある、いじめやハラスメントが起きているなど、人間関係のストレスはメンタルヘルス不調につながります。
特に、周囲に相談できる相手がいない場合は、不調を一人で抱え込みやすくなり、メンタルヘルス不調のリスクが高まる可能性があります。
異動・昇進など環境の変化
異動や昇進、配置転換などの環境変化も、メンタルヘルスに影響を与える場合があります。
新しい環境に適応するためにかかる期間は、一般的に3~6ヵ月ほどはかかると言われており、特に最初の1ヵ月は、新しい業務への不安や責任の増加、人間関係の変化などが重なることで、大きなストレスを感じることがあります。
一見前向きな変化であっても、本人にとっては負担になる場合があるため注意が必要です。
また、新入社員も環境変化の負荷を大きく受けるため、入社直後はその様子を注意深く観察する必要があります。
テレワークによる孤立感
テレワークの普及により、コミュニケーション不足や孤立感を抱える人も増えています。
雑談や相談の機会が減ることで、小さな不安を抱え込んでしまうケースもあります。
また、仕事と私生活の切り替えが難しくなり、業務時間外にも家でパソコンを開いたりメールをチェックしたりしてしまう方も多く、長時間労働につながる場合もあります。
職場のメンタルヘルス不調に見られるサイン
メンタルヘルス不調者に見られるサインを知っておけば、早期発見につながります。
遅刻・欠勤・ミスが増える
メンタルヘルス不調では、集中力や判断力が低下しやすくなります。
その結果、仕事上のミスが増えたり、遅刻や欠勤などの勤怠面での変化が目立つようになったりします。
これまで問題なくできていた業務に時間がかかるようになるなどの兆候が見られたら、話を聞いてみるなどの働きかけが必要かもしれません。
表情やコミュニケーションの変化
表情が暗くなる、会話が減る、イライラしやすくなるなど、周囲との関わり方に変化が見られることもあります。また、身だしなみが乱れる、業務中に涙が出てくるのを隠すために離席が増えるといったことも生じます。
こうした変化は本人も自覚していない場合があるため、周囲が早めに気づくことが大切です。
また、急に飲み会や雑談を避けるようになる、一人でいる時間が増えるなど、孤立傾向が見られる場合もあります。
睡眠不足や体調不良
メンタルヘルス不調は、身体症状としてあらわれることもあります。
たとえば、「眠れない」「食欲がない(逆に食欲が過度に増える)」「頭痛や腹痛が続く」といった状態です。
身体の不調が続いている場合は、メンタルヘルスの問題が背景にある可能性も考えられます。
社員のメンタルヘルス不調に気づいたら
社員の遅刻や欠勤、ミスの増加、表情の変化などに気づいた場合は、まずは本人の状況を確認することが大切です。
声をかける際は本人が話しやすい雰囲気づくりを意識しましょう。デスク周りや廊下・階段などは避け、落ち着いて話せる場所をセッティングすることも重要です。
この際に責めるような言い方をしないことが大切です。
本人から話を聞いたうえで、業務量や人間関係など職場側で調整できる要因がある場合は、必要に応じて産業医や産業保健スタッフへ相談しながら必要な配慮を検討します。
不調が続いている場合や、業務への影響が大きい場合は、産業医面談や医療機関への相談につなげることも検討しましょう。
メンタルヘルス対応は専門的な判断が必要になることもあるため、管理職が一人で抱え込まないことが重要です。
社内の相談窓口や外部相談窓口なども活用しながら、組織として対応できる体制を整えておきましょう。

メンタルヘルス不調のサインに気付いた後の流れ
- 不調のサインに気づく
- 遅刻や欠勤の増加、ミス、表情や会話の変化など、普段と違う様子がないか確認します。
- 本人への声かけを行う
- 責めるのではなく、体調や困りごとを確認する姿勢で声をかけます。本人が話しやすい雰囲気をつくることが大切です。
- 産業医面談や医療機関につなげる
- 不調が続いている場合や業務への影響が大きい場合は、産業医面談や医療機関への相談を検討します。
- 必要に応じて業務調整や休職・復職支援を検討する
- 本人の状態や産業医の意見を踏まえ、業務量の調整や休職・復職に向けた支援を行います。
メンタルヘルス不調のサインを見逃さず、必要な相談先や支援につなげることが大切です。
社員のメンタルヘルス対応でつまずきやすい点
社員のメンタルヘルス不調に対応する際には、いくつか注意したい点があります。
たとえば、相談窓口を設置していても、相談すると評価に影響するのではないかという不安から、利用につながらないケースは少なくありません。
また、遅刻やミスの増加などの変化を、単なる勤務態度の問題として捉えてしまう場合もあります。
背景にメンタルヘルス不調がある可能性も考え、まずは本人の状況を確認する姿勢が大切です。
特に注意すべきは、不調者対応を特定の担当者だけが抱え込んでしまうことです。
人事担当者や管理職が一人で対応を続けていると、対応する側が追い込まれてしまうことも多く、企業としても注意が必要です。
担当者だけでは対応が難しいことも多いので、その場合は、不調の本人に「〇〇のことについて、△△さんに相談させて欲しい」と、本人の同意を得てから必要な相手に相談し、検討できると良いでしょう。
社員のメンタルヘルス不調に早く気づくことが大切
メンタルヘルス不調は、どの職場でも起こりうるものです。
大切なのは、不調が深刻化する前に小さな変化へ気づき、適切な相談先や専門職につなげることです。
産業医や外部相談窓口などを活用することで、社員が安心して相談できる体制を整えやすくなります。

社員の不調に早く気づき、適切な支援につなげるためには、日頃から職場全体の体制を整えておくことも大切です。
ストレスチェックや教育研修、相談窓口の整備など、企業としての具体的な取り組み方については、以下の記事もあわせてご覧ください。
社員の変化に早めに気づき、必要な支援につなげることが、安心して働ける職場づくりにつながります。
よくある質問(Q&A)
Q1. 職場のメンタルヘルスとは何ですか?
職場のメンタルヘルスとは、従業員が心身の健康を保ち、日々のストレスに対処しながら働ける状態を指します。単に不調がない状態だけでなく、安心して働ける環境づくりも含めて考えることが大切です。
Q2. 職場でメンタルヘルス不調が起こる原因は何ですか?
職場でメンタルヘルス不調が起こる原因には、長時間労働や業務負荷、職場の人間関係、異動・昇進などの環境変化、テレワークによる孤立感などがあります。複数の要因が重なって不調につながる場合もあります。
Q3. 社員のメンタルヘルス不調にはどのようなサインがありますか?
遅刻や欠勤の増加、ミスの増加、表情が暗くなる、会話が減る、イライラしやすくなる、睡眠不足や体調不良を訴えるなどの変化が見られることがあります。普段と違う様子が続く場合は注意が必要です。
Q4. 社員のメンタルヘルス不調に気づいたら、企業はまず何をすべきですか?
まずは本人の状況を確認し、責めるのではなく、体調や困りごとを聞く姿勢で声をかけることが大切です。必要に応じて産業医や産業保健スタッフへ相談し、産業医面談や医療機関への相談につなげます。
Q5. 管理職がメンタルヘルス対応で注意すべきことは何ですか?
管理職が一人で対応を抱え込まないことが重要です。メンタルヘルス対応には専門的な判断が必要になることもあるため、人事担当者や産業医、外部相談窓口などと連携し、組織として対応する体制を整えましょう。
<参考>
世界保健機関(WHO)「世界保健機関(WHO)職場のメンタルヘルス対策ガイドライン」
厚生労働省「令和6年度『過労死等の労災補償状況」を公表します」
厚生労働省「時間外労働の上限規制」




