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パワーハラスメント6類型とは?具体例・見分け方・企業が整えるべき相談体制を解説

職場でのパワーハラスメントは、厚生労働省が定める3要素と6類型を理解することで、指導との違いや該当性の判断基準が整理しやすくなります。
本記事では、パワーハラスメント6類型の具体例・見分け方と、企業が整えるべき相談体制のポイントを解説します。

パワーハラスメントとは?まず押さえたい定義

労働施策総合推進法(パワハラ防止法)第30条の2第1項および厚生労働省の指針では、パワーハラスメントを以下の3要素をすべて満たすものと定義しています。
ここでいう優越的な関係とは、役職の上下だけでなく、業務に必要な知識や経験、職場内の人数関係などによって、相手が抵抗や拒絶をしにくい関係も含まれます。

パワハラとされる3つの要素

  1. 職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

3要素はすべてを満たす必要があるため、一つの要素だけを見て判断することは適切ではありません。

「厳しい指導」との違いはどこにあるか

指導とパワハラの境界線は、言動の内容・伝え方・継続性、そして業務上の必要性と相当性で判断されます。
人格を否定する発言や、周囲の前での見せしめ的な叱責、業務上の合理的な理由を欠く叱責は、たとえ指導の名目であっても問題になります。
「指導のつもりだった」という意図は、パワハラ該当性の判断において決定的な要素にはなりません。

たとえば、業務上のミスを具体的に指摘し、改善方法を伝えることは通常の指導にあたります。
一方で、人格を否定したり、必要以上に大勢の前で叱責したりする行為は、指導の範囲を超える可能性があります。

パワーハラスメント6類型一覧

厚生労働省のパワハラ指針では、パワーハラスメントの代表的な言動を6つの類型に整理しています。
ただし、個別の事案によって判断が異なる場合もあり、この6類型に含まれない言動であってもパワハラに該当し得ることに留意が必要です。

類型概要典型例
身体的な攻撃暴行・傷害殴る・蹴る
精神的な攻撃脅迫・侮辱・暴言人格否定の発言・公開叱責
人間関係からの切り離し隔離・仲間外し・無視長時間の無視・別室隔離
過大な要求不要・遂行困難な業務の強制到底対応できないノルマの強制
過小な要求能力とかけ離れた低い仕事のみ命じる管理職に単純作業のみ
個の侵害私的なことに過度に立ち入る私生活の監視・機微情報の暴露

パワーハラスメント6類型を具体例で解説

パワーハラスメント6類型を具体的に知っておくことで、相談内容を整理しやすくなります。
ただし、該当性は3要素や個別事情を踏まえて判断する必要があります。

1.身体的な攻撃

指針では、殴打や足蹴りなどの暴行行為が該当例として示されています。
誤ってぶつかったといった状況でない限り、職場内での暴力行為はパワハラに該当するだけでなく、暴行罪や傷害罪にあたる可能性もあります。
物を投げつける、叩くといった行為も同様です。冗談や指導の名目があっても許容されません。

2.精神的な攻撃

6類型の中で最も広範かつ見過ごされやすい類型です。
「お前は使えない」「存在価値がない」といった人格否定の発言は、業務指導の範囲を超えています。
複数の同僚の前での繰り返しの叱責や、メールやチャットでの侮辱的な発言も該当します。
言葉の強さだけでなく、継続性や周囲への見せしめがあったかが判断の要素になります。

3.人間関係からの切り離し

指針では別室隔離や自宅研修の強制などが該当例として示されています。
長期間にわたって会議や業務連絡から排除する、挨拶を無視し続けるといった行為も含まれます。
孤立させることによって就業環境が害される点がポイントです。

4.過大な要求

指針では、必要な教育を行わないまま新卒採用者に到底対応できない業績目標を課し、達成できなかったことを厳しく叱責する例が示されています。
また、長期間にわたる肉体的苦痛を伴う過酷な作業の命令や、業務とは関係のない私的な雑用の強制なども、過大な要求に該当し得ます。
「成長のため」という名目であっても、業務上の合理性と相当性が求められます。

5.過小な要求

管理職や専門職として採用した従業員に対し、その能力・経験とかけ離れた単純作業のみを命じる、あるいは仕事をほとんど与えないといった行為が該当します。
いわゆる「干し上げ」と呼ばれるケースです。
降格・配置転換は人事上の措置として認められる場合がありますが、合理的な理由を欠く役割剥奪は問題になります。

6.個の侵害

指針では、労働者を職場外でも継続的に監視したり私物の写真撮影をしたりすること、また労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露することが該当例として示されています。
交友関係や家族・恋愛といったプライベート情報の執拗な詮索も含まれます。
一方、労働者への配慮を目的としたヒアリングや、本人の了解を得た上での必要な範囲での情報共有は、パワハラには該当しないとされています。

パワハラかどうか判断が難しいケースの見分け方

グレーゾーンの判断では、次の視点が参考になります。

  • 業務上の必要性があるか
  • その言動は目的に対して相当な範囲にとどまっているか
  • 一時的なものか継続的なものか
  • 個人の人格を攻撃していないか
  • 受け手の就業環境が実際に害されているか

これらを総合的に見ることになります。
ただし、個別事情によって判断は変わります。「これはグレーかもしれない」という段階で相談できる体制があるかどうかが、実務上は極めて重要です。
問題が表面化してから対応するより、初期の違和感を拾える仕組みの方が、企業にとっても当事者にとっても負担が少なくなります。

パワハラを放置するリスク

パワハラの問題は、発生そのものよりも「相談しにくいため表面化が遅れること」に大きなリスクがあります。
初期段階で違和感を拾えないと、休職・離職や職場全体への不信感の拡大につながるおそれがあります。
対応が遅れるほど事案は複雑化し、当事者への対処や再発防止策の設計、管理職や人事担当者の負担なども重くなります。

パワハラ防止措置義務に直接の罰則はありません。
ただし、必要な措置を講じていない事業主に対しては、厚生労働大臣による助言・指導・勧告が行われる場合があり、勧告に従わない場合には企業名が公表される可能性があります。

企業に求められる相談体制整備とは

厚生労働省は、事業主に対して以下を義務として求めています。

  • 事業主の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に対してその方針を周知・啓発すること
  • 相談・苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備すること
  • 相談があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者および行為者に対して適正に対処するとともに、再発防止に向けた措置を講ずること
  • 相談者や行為者等のプライバシーを保護し、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いをしない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

相談窓口は「設置しただけ」では不十分です。
担当者が適切に対応できる状態にあること、グレーな段階でも相談しやすい雰囲気や仕組みがあること、プライバシーが守られることが周知されていることなどが揃って初めて機能する窓口になります。

社内窓口と外部相談窓口をどう使い分けるか

社内窓口には、社内事情を踏まえて迅速に動けるという強みがあります。
一方で、「顔見知りには話しにくい」「評価や処遇に影響しそうで怖い」という心理的ハードルが生じやすく、担当者への負荷集中や属人化のリスクも指摘されています。
窓口が存在していても、利用されなければ意味をなしません。
社内窓口と外部相談窓口の特徴を整理すると以下のようになります。

項目社内窓口外部相談窓口
相談のしやすさ顔見知りだと話しにくい場合がある第三者性があり相談しやすい
評価への不安処遇への影響を懸念されやすい利害関係が薄く安心感を持たれやすい
対応品質担当者によって差が出やすい一定の品質を担保しやすい
実務連携社内で動きやすい社内連携設計が必要
担当者負荷集中しやすい分散しやすい  

社内窓口と外部相談窓口を役割分担し、相談できる入口を複線化する考え方が、実効性のある体制につながります。
初期の違和感を外部窓口で受け止め、社内での対応が必要な段階で社内窓口と連携する設計が一つの有効なモデルです。

外部相談窓口を選ぶときのチェックポイント

外部相談窓口は「相談を受ける場所」であればよいわけではありません。契約前に以下の観点を確認しておくことで、導入後に機能しない窓口になるリスクを減らせます。

Checkpoint

・匿名での相談に対応しているか

・ハラスメント相談の知見を持つ担当者が対応するか

・相談後の報告フローが明確になっているか

・緊急性の判断や初期整理ができる体制があるか

・社内窓口との連携設計に対応しているか

・プライバシー保護の体制が整っているか

こんな企業は外部相談窓口の導入を検討すべき

社内窓口を設置しているものの利用率が低い、あるいは特定の担当者に相談が集中しているという状況は、窓口が機能していないサインである可能性があります。
多拠点・多店舗で運用を統一しにくい企業や、相談しやすさの確保に課題があると感じている企業にも、外部相談窓口は有効な選択肢になります。
初動対応の品質を安定させたい場合も同様です。
外部窓口を活用することで相談の入口を広げ、問題の早期把握につながりやすくなります。

パワハラ対策は「相談しやすい仕組み」があって初めて機能する

パワーハラスメントは、3要素と6類型を軸に整理することで、指導との違いや該当性の判断基準が明確になります。
ただし、個別の状況によって判断が異なるグレーゾーンも多く、「何かあってから対応する」体制では対応が遅れがちです。
企業に求められているのは、相談窓口の設置だけでなく、担当者の対応力の担保、プライバシー保護の周知、不利益取扱い禁止の明示という一連の体制整備です。
社内窓口と外部相談窓口を組み合わせ、初期の相談が届きやすい仕組みをつくることが、パワハラ防止の実効性を高める第一歩になります。

よくある質問(Q&A)

Q1. パワハラ6類型は法律で決まっているのですか?

厚生労働省のパワハラ指針において、代表的な言動類型として6つが示されています。ただし、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合があり、6類型に含まれない言動であってもパワハラに該当し得ます。

Q2. 厳しい指導とパワハラの違いは何ですか?

業務上の必要性・相当性があるか、人格否定や見せしめになっていないか、就業環境が害されているかなどで総合的に判断されます。意図ではなく、言動の内容・態様・継続性が判断の中心になります。

Q3. 社内窓口があれば外部相談窓口は不要ですか?

社内窓口には実行力の強みがありますが、相談しやすさや第三者性の面では外部相談窓口に利点があります。両者を役割分担し、相談の入口を複線化する考え方が有効です。

Q4. 外部相談窓口にはどんなメリットがありますか?

第三者に相談できる安心感、初動対応の品質の安定、問題の早期把握、社内担当者の負担軽減などが挙げられます。社内窓口では拾いにくい初期の違和感を受け止めやすい点が特に有効です。

Q5. パワハラ防止措置を講じなかった場合、罰則はありますか?

パワーハラスメント防止措置義務には直接の罰則はありませんが、対応に大きな問題がある企業には厚生労働大臣による助言・指導・勧告が行われる場合があり、改善されない場合は企業名が公表される可能性があります。

また、パワハラの内容によっては行為者や企業に損害賠償責任が生じる場合もあります。

<参考>
労働施策総合推進法
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」
厚生労働省 あかるい職場応援団「パワーハラスメントとは」
厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」