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企業内のメンタルヘルス対策を考える際には、労働安全衛生法に基づいて進めることが重要です。
労働者のメンタルヘルスケアは企業の義務であり、厚生労働省が発表した「労働者の心の健康の保持増進のための指針」内では、その具体的な取り組みが示されています。
この記事では労働安全衛生法に基づいた具体的なメンタルヘルス対策について紹介します。
目次
労働安全衛生法に基づくメンタルヘルス対策とは
労働安全衛生法は労働者の心身の安全を守る法律です。企業は労働安全衛生法を順守し、メンタルヘルスケアを進めていく必要があります。
労働安全衛生法に基づく主なメンタルヘルス対策としては以下のものがあります。
・産業医や産業保健師による面談・指導
・ストレスチェックの実施
安全衛生教育労働安全衛生法により50人以上の事業場には産業医の選任義務が課されています。
ストレスチェックも50人以上の事業場では必ずおこなわなければいけません。
50人未満の事業場では努力義務にとどまっているものの、ストレスチェックはメンタルヘルス対策において非常に重要であり、50人未満の事業場でも実施することが望ましいでしょう。
労働安全衛生法に基づくメンタルヘルス対策の進め方
労働安全衛生法に基づくメンタルヘルス対策を進めていく際は、産業医や産業保健師と相談しながら進めていきましょう。
メンタルヘルス対策と一口に言っても、おこなうべき取り組みは多岐にわたります。
労働者の心の健康の保持増進のための指針
労働者の心の健康の保持増進のための指針は、労働安全衛生法に基づいて厚生労働省が示したメンタルヘルス対策の指針です。
本指針は、労働安全衛生法第70条の 2 第 1 項の規定に基づき、同法第69条第1項の措置の適切かつ有効な実施を図るための指針として、事業場において事業者が講ずるように努めるべき労働者の心の健康の保持増進のための措置(以下「メンタルヘルスケア」という。)が適切かつ有効に実施されるよう、メンタルヘルスケアの原則的な実施方法について定めるものです。
出所:労働者の心の健康の保持増進のための指針
労働者の心の健康の保持増進のための指針では、メンタルヘルスケアの考え方や実施方法、具体的な事例が紹介されています。
企業がおこなうべきメンタルヘルス対策が網羅されており、メンタルヘルス対策を進める際には労働者の心の健康の保持増進のための指針を基に進めていくことが望ましいでしょう。
メンタルヘルスケアの基本的な考え方
メンタルヘルスケアには「3つの予防」という重要な考え方があります。
・メンタルヘルスの不調を未然防止するための1次予防
・労働者のメンタルヘルス不調を早期発見し、適切な対応をする2次予防
・休職者の職場復帰支援を含めて、再発を防ぐ3次予防
3つの予防はメンタルヘルスケアにおいて基本となる考え方であり、3つのフェーズで適切なケアをおこなうことで、労災が起こるリスクを最小限に抑えることができます。
この3つの予防の考え方を基に「心の健康づくり計画」を策定し、継続的かつ計画的にメンタルヘルス対策を進めていくことが重要です。
また、事業者がメンタルヘルスケアを積極的に進めていくことを社内で表明することも大切です。
4つのケアとは
4つのケアとはメンタルヘルスを効果的に進めていくために必要なメンタルヘルスケアの種類です。厚生労働省の労働者の心の健康の保持増進のための指針内で示されています。
・セルフケア
・ラインによるケア
・事業場内産業保健スタッフ等によるケア
・事業場外資源によるケア
あらゆる方向からケアをおこなうことで、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことができます。また、メンタル不調がおこなってしまった際もスムーズな復職支援を可能にします。
メンタルヘルスケアを個人の問題ではなく、企業全体の問題としてとらえていくことが重要です。
教育研修および情報提供
メンタルヘルス対策を効果的に実施するために、労働者や管理監督者、産業保健スタッフに対して教育研修や情報提供をする必要があります。
労働安全衛生法において教育研修について規定されています。
(健康教育等)
第69条 事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるように努めなければならない。
2 労働者は、前項の事業者が講ずる措置を利用して、その健康の保持増進に努めるものとする。
出所:労働安全衛生法
労働者に対して教育研修をおこなうことで、労働者一人ひとりのメンタルヘルスへの理解を深め、効果的なセルフケアが可能になります。
また、管理監督者は労働者からの相談を受ける機会も多いので、管理監督者向けの教育研修を実施してラインケアを充実させる必要があります。
産業医や産業保健師にも事業場外資源からの情報提供や教育研修が必要です。産業保健スタッフの知識が深まることで、労働者への教育研修の質の向上が望めます。
職場環境の把握と改善
メンタルヘルス不調を起こす最大の要因は人間関係を含めた職場環境です。職場環境の改善は労働者の心の健康の保持増進に直結します。
職場環境を把握するためにおこなえる取り組みは以下のものがあります。
・産業医による職場巡視
・ストレスチェックによる集団分析
メンタルヘルス対策において、職場環境の改善は必須です。また、職場環境だけでなく、勤務形態や職場組織の見直しが必要な場合もあります。
職場環境を改善していく際にも、産業医と管理監督者が連携して、労働者の意見を聴収しながら進めていくことが重要です。
メンタル不調への気づきと対策
メンタルヘルス不調が起こってしまった際は早期発見と適切な対応が大切です。そのためには、相談窓口を整理し、相談しやすい環境をつくることが必要になってきます。
相談窓口が整理されることで、労働者の自発的な相談が増え、メンタルヘルス不調の早期発見につながります。
また、管理監督者は労働者からの相談に加えて、過重労働や過度のストレスがみられる労働者に対しても適切な対応をおこなう必要があります。必要に応じて産業保健スタッフへの相談を勧めることも重要です。
相談を受ける際にはプライバシーに注意しましょう。メンタルヘルス対策ではストレスチェックの結果などの個人情報を扱うことが多いため、社内規定の整備が必要になる場合があります。
職場復帰支援
休職してしまった労働者への職場復帰支援もメンタルヘルス対策では重要です。
衛生委員会などで職場復帰支援プログラムを策定。プログラムを休職者や社内へ周知し、産業医や管理監督者、主治医と連携しながら職場復帰支援プログラムを実施していきます。
大切なのは組織的かつ計画的に取り組むことです。
休職者に対する支援だけでなく、職場環境の改善もおこなう必要があります。過重労働や人間関係の問題をチェックし、問題があった場合は改善。必要に応じて配置換えや勤務形態の変更をおこないます。
メンタルヘルス対策における産業医の役割
メンタルヘルス対策において産業医は非常に大きい役割を担います。
労働安全衛生法において50人以上の事業場では産業医の選任が義務付けられています。
(産業医等)
第13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
出所:労働安全衛生法
主な産業医の役割は以下のものがあります。
・衛生委員会への参加
・健康診断
・面接指導
・ストレスチェックの実施
産業医は医学の専門的な知識を持ち、メンタルヘルス対策をするうえで助言をおこないます。心の健康づくり計画を策定する際も産業医の意見・助言が必要です。
労働安全衛生法においても産業医が必要になる行為は多く、メンタルヘルス対策を進めていくのであれば産業医の選任が必須です。
まとめ
今回は、労働安全衛生法に基づくメンタルヘルス対策についてわかりやすく解説しました。
メンタルヘルス対策は労働安全衛生法で定められた義務であり、怠った場合は罰則もあります。
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