働き方・産業保健

職場巡視って何をする?誰がする?

職場巡視って何をする?誰がする?

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職場巡視とは、実際の作業環境を実際に見て回り、安全衛生上の問題点を見つけ、改善していくためのものです。
今回は、職場巡視についてわかりやすく解説します。

衛生管理者と産業医の職場巡視

法令上は、労働安全衛生規則で「衛生管理者の定期巡視」「産業医の定期巡視」が定められています。

衛生管理者の職場巡視の法令根拠

(衛生管理者の定期巡視及び権限の付与)
第11条 衛生管理者は、少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
2 事業者は、衛生管理者に対し、衛生に関する措置をなし得る権限を与えなければならない。
出所:労働安全衛生規則

産業医の職場巡視の法令根拠

(産業医の定期巡視)
第15条 産業医は、少なくとも毎月1回(産業医が、事業者から、毎月1回以上、次に掲げる情報の提供を受けている場合であつて、事業者の同意を得ているときは、少なくとも2月に1回)作業場等を巡視し、作業方法又は衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない。
一 第11条第1項の規定により衛生管理者が行う巡視の結果
二 前号に掲げるもののほか、労働者の健康障害を防止し、又は労働者の健康を保持するために必要な情報であつて、衛生委員会又は安全衛生委員会における調査審議を経て事業者が産業医に提供することとしたもの
出所:労働安全衛生規則

上記の労働安全衛生規則にあるとおり、衛生管理者は週に1回、そして産業医は月に1回、職場巡視をしなくてはなりません。
衛生管理者、産業医は、それぞれ以下の記事を参照ください。

・ 衛生管理者

従業員数50名を超えた事業場が産業医選任前にすべき5つのこと

・ 産業医

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職場巡視では具体的にどこを見る?

職場巡視については、オフィスワーク中心の企業から「うちもやらなくてはいけないの?」と質問をいただくことがあります。
工場や建設現場と違って危険な場所がないから、というのが質問の理由です。
むしろ、そういう思いを抱いておられる企業こそ、積極的に職場巡視を行ってください!
以下では、オフィスワーク中心の企業が、どういったところを中心に職場巡視するかご紹介します。

事務室

・ 照明・採光
室内の明るさは十分か、蛍光灯の切れはないか、室内照明の取付けは適切か、など
ブラインド等の遮光設備も適正かどうかを確認します。
・ 温度・湿度
室内の温度、湿度は適正に保たれているか
・ 換気
室内にて異臭気の発生はないか、タバコの煙やホコリが充満していないか、換気設備等は備えられているかなどを確認
・ 整理・整頓
室内の整理・整頓はできているか、ロッカー・書庫の上などに不安定な物品を載せていないか、通路の幅は十分に確保されているかなど
・ 清掃:室内の清掃は行っているか
ゴキブリ、ダニなど衛生昆虫対策は行っているか
・ 電気配線
配線、コンセント等電気器具は安全に管理されているか(タコ足配線など)
・ 救急箱
救急箱は設置されているか、その中身は十分か、労働者はその所在と使用方法を熟知しているか?

VDT(Visual Display Terminal)作業環境(パソコン画面をみる作業)

・ 作業環境
グレア(反射・まぶしさ等)防止のための対策をしているか
・ 作業管理
作業時間は適切か、休止時間を設けているか、作業台の高さやイスの高さは適切か

付帯設備

・ 床・階段・通路:階段や通路に妨げとなる物品は置かれていないか? 照明は十分か?
・ トイレ・洗面所:清潔に保たれているか? 照明は十分か? 窓の開閉や換気装置は正常に作動するか?
・ 給湯室・シャワー:清潔に保たれているか? 湯沸器の設置場所、給排気設備は適正か? 窓の開閉や換気装置は正常に機能するか?
・ 更衣室・休憩室:清潔に保たれているか? 照明は十分か?
・ 非常口:表示は見つけやすいところに取り付けられているか? 非常口周辺に妨げとなるような物品は置かれていないか?

安全・防火管理

・ 消火器等:所定の位置に備えられているか? 期限切れになっていないか?
・ 危険物等:灯油、劇薬等の管理、保存は安全か? 取扱い上の注意事項は厳守されているか?

職場巡視チェックリストを作成しよう

以外に巡視箇所が多いですよね。
上記項目はあくまで一例ですので、企業ごと、事業場ごとに巡視箇所をさだめ、「チェックリスト」を作成することをおすすめします。
最近は長時間パソコンを使うことにより起こるVDT症候群が増加しています。
オフィスワークであるなら、VDT作業環境は細かくチェックしてください!

VDT作業環境チェックポイント

・ 背もたれがあり、傾きを調整できる椅子を使用する。作業姿勢は椅子に深く腰掛け、背中をのばす
・ ディスプレイとは40cm以上の視距離を確保する。画面の上端は角度10度で見下ろすポジション
・ 照明を明るくする。キーボード上は300ルクス以上、モニター画面上は500ルクス以下の明るさにする
・ デスクトップの背景色は、モニターからの刺激を抑える効果のあるブラックやグレーに変え、画面の反射をさえぎるフィルターを利用する
・ 目に直接空調の風があたらないようにする
・ 正しい視力矯正をおこなう(自分に合ったメガネ・コンタクトの使用)

チェックリストは保存しよう

職場巡視の際に使ったチェックリストについて、保存、保管をする義務はありません。
しかし、事業場で労災等が起こった際に、事業場施設等の安全の確認を怠っていなかったかなどの判断基準のひとつになる可能性がありますので、一定期間、巡視記録を保存することが望ましいと思います。
労働安全衛生規則では、衛生委員会の議事録について3年間の保存が義務づけられています。

(委員会の会議)
第23条 事業者は、安全委員会、衛生委員会又は安全衛生委員会(以下「委員会」という。)を毎月一回以上開催するようにしなければならない。
(中略)
4 事業者は、委員会の開催の都度、次に掲げる事項を記録し、これを3年間保存しなければならない。
一 委員会の意見及び当該意見を踏まえて講じた措置の内容
二 前号に掲げるもののほか、委員会における議事で重要なもの
労働安全衛生法では、衛生委員会は労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関することや、労働災害の原因や再発防止対策を討議し、事業者に意見を述べるためのものとされています。
出所元:労働安全衛生規則

職場巡視の結果については、衛生委員会で毎回報告、議論することになりますので、議事録とあわせて保存しておきましょう。

職場巡視は誰がする?

職場巡視は、衛生管理者が週に1回、産業医が月に1回行うものですので、産業医が職場巡視をする際にも、企業の衛生管理者さんと一緒に巡視をすることが多いです。
産業医は、作業方法や衛生状態に問題点を見出したときには、それを指摘し従業員の健康を守るためのアドバイスをします。
企業はアドバイスに基づいて職場環境の改善を図る必要があります。
しかし、実際には職場巡視で危険個所を指摘しても、なかなか改善しないことも多くあります。
原因は以下をはじめ、さまざまです。

・ 産業医の指摘が、関係者に周知されていない。
・ 人事・労務(総務)担当の衛生管理者の判断で、改善することが困難。
・ 作業内容や動線の問題で、改善が難しい。

では、これらの問題を解決するためには、どのようにしたら良いのでしょうか?
職場巡視の結果を、職場環境の改善に上手くつなげられている企業には、共通点があります。
それは、産業医と衛生管理者の職場巡視に、とある立場の人が同行しているのです。

クイズ:職場巡視の成功事業場には○○が同行している。

誰を連れて巡視しているかわかりますか?

<選択肢>
①社長
②人事・労務部長
③建物の管理責任者
④対象職場・現場の管理者

それぞれが同行した場合、を想定してみます。
①の社長は、経費が必要な改修などの際には、決断が早いかもしれませんが、あまり現実的ではありません。
②の人事・労務部長は、部長命令で改善を指示することはできるかもしれませんが、一方的です。
③の建物の管理責任者は、大きな設備改修には重要ですが、作業方法や従業員の動きまでは対応が難しいです。
では④の対象職場・現場の管理者ならどうでしょうか。
従業員の実際の業務内容や作業方法などはもちろんのこと、施設の設備や備品に関してもある程度把握をしています。
備品の配置を変更したり、簡単な修繕などは、現場の管理者レベルで対応が可能です。
また、実際の従業員の意見の聞き取りもしやすく、職場環境を改善するには適任ともいえます。
産業医の職場巡視には、できるだけ対象職場・現場の管理者に同行してもらい、説明や案内を依頼するようにしましょう。
もし産業医にアドバイスを受けた改善策が、対応困難だと感じた場合には、素直にそのことを伝えましょう。
産業医は、企業と従業員の安全確保のため、代替案を提案してくれます。
「わかってはいるけど、できない」が、一番危険です。

職場巡視で社内の人間関係までわかる?

最後に、職場巡視で判明するのが「安全衛生上の課題」だけではない!という例を紹介します。

なぜこんなところにこんな汚れが?傷が?

産業医は、職場巡視時に、照度は足りているか、換気は十分か、高所に不安定な物を乗せていないかなどを中心に確認していきます。
しかし、産業医のA先生はこれらと合わせて「通常の使用では考えられないような傷・汚れ」の有無を確認するそうです。

・会議室の壁に靴の跡、傷(蹴飛ばしたであろう汚れ)
・キャビネットや更衣室ロッカーの凹み
・机の裏など、目につかない所への落書き

上記のような傷や汚れを目にした場合、その企業がとても心配になりますね。
実際にA先生の経験上、表面的には問題がないように思えても、パワハラが存在していたり、メンタル不調を抱えていたりする従業員が潜在している可能性が非常に高いとのこと。

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会社の雰囲気づくりはトイレから

「すでにメンタル不調者や企業に問題があると思われる場合、まずトイレをきれいにすることから始めるのが良い」とA先生。
トイレが汚れていたり、傷んでいると、会社全体が暗い雰囲気になりがちで、すべてにおいて大雑把になりがちだからです。
予算が許すのであれば、便器を入れ替えたり、照明器具を一新したり、鏡を入れ替えることで社内の雰囲気に変化がでてきます。
もし予算を確保できないのであれば、社員持ち回りでトイレ清掃をするというのも一つの案とのこと。
トイレをきれいに保つことで、汚れた場合は各自で掃除するようになり、不思議と社内が明るくなるそうです。
少なくともトイレがきれいになったせいで、不具合が出ることは一切なく、取っ掛かりとしてはうってつけですね。

この記事を書いた人

さんぽみち編集部

さんぽみち編集部

産業保健業界トップクラスの株式会社ドクタートラストが運営中。
衛生委員会や産業保健について、初めての人にもわかりやすく、ていねいにを心掛けて最新情報をお届けします!