厚生労働省はポータルサイトや助成金などを設け、テレワークを推奨しています。
しかし、コロナ禍の今、テレワークなどの新たな働き方によって労働環境や生活スタイルが変わることに、ストレスを感じる方も少なくないようです。
そのため、テレワークの急速な普及と合わせて、企業としてはテレワーク中の従業員に対するメンタルヘルス対策もしっかりと行っていくことが求められます。
今回は、テレワーク中のメンタル不調を懸念する企業の方に向けて、厚生労働省が推奨するメンタルヘルス対策の方法をわかりやすく解説します。
目次
テレワークは厚生労働省も推奨する働き方
テレワークとは本拠地を離れ、情報通信技術(ICT)を活用することで時間や場所を有効に使いながら勤務する働き方のことです。
厚生労働省がテレワークを推奨する理由は、新型コロナウイルス感染症の影響が大きく、人の移動や混雑を避けることで感染症の拡大防止が期待でき、労働者の移動・通勤時間が縮小されることで身体的な負荷を減らすことができるというメリットがあるからです。
テレワークには、主として次の3種類があります。
テレワークの種類 | 概要 |
在宅勤務 | テレワークでは最も広く認知されている形態であり、自宅で勤務することです。週1~2日の頻度で在宅勤務のテレワークを実施する企業が多いようです。 |
モバイル勤務 | 移動中の交通機関やカフェ、ホテルなどで勤務をすることです。隙間時間を活用して仕事ができるため、出張が多い企業で導入されているテレワークの種類です。 |
サテライトオフィス勤務 | サテライトオフィスとは、本拠地ではない場所に設けられたオフィスのことです。コロナ禍で本拠地から離れた場所にサテライトオフィスを設ける企業も増えており、自宅や出張先の周辺で就労できるほか、ワーケーションにも活用できます。 |
参考:厚生労働省「テレワーク総合ポータルサイト」
厚生労働省が推奨するテレワーク中のメンタルヘルス対策
テレワークは新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止や労働者の移動や通勤にかかる負担を軽減できるという点でメリットのある働き方です。
しかし、これまでとは働く環境が大きく変わることになるため、従業員のメンタルヘルス不調には十分に注意したいものです。
人は、環境の変化によってメンタルヘルス不調を来たすことが珍しくありません。
そのため、厚生労働省でも労働者のメンタルヘルス対策に配慮するよう指標やチェックリストが公表されています。
テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト
「テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト」とは、労働者にテレワークを実施させる事業者が安全衛生上、留意すべき事項を確認しやすいよう、厚生労働省がまとめたものです。
テレワークが急速に広まったため、企業側としても整備が追い付かなかったり、新たな働き方に戸惑うことも多いのではないでしょうか。
そのような時は、厚生労働省が推奨するチェックリストを用いながら就労環境の見直しを進めることが有効です。
こちらでは、テレワークを進めるに当たっての安全管理や教育、メンタルヘルス対策の状況などを確認することができます。
このような指標を用いることで、公平なテレワーク環境づくりが期待できるでしょう。
職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~
厚生労働省は他にも「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」を公表しています。心の健康づくりは、事業者が「心の健康づくり計画」やストレスチェック制度の実施方法などを策定するときの指針となるもので、企業におけるメンタルヘルス対策を取りまとめた資料です。
「職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~」を参考にすることで、テレワークにおける以下のようなメンタルヘルス対策を講じることができます。
・ セルフケアやラインケアの具体的な取り組み方法
・ メンタルヘルス不調を来たしたときの対処方法
テレワークの推進は、従業員の働く環境を大きく変えるものです。
そのため、企業としてはこのような指針を活かしてメンタルヘルス不調を未然に防ぐ対策を行うことが大切です。
テレワークのメンタルヘルス対策を推進するための体制
企業がテレワーク中のメンタルヘルス対策を遂行する際は、人事労務担当をはじめ、管理監督者や従業員、産業保健スタッフなどが、それぞれの役割を果たすことが理想的です。
相談体制
テレワーク中のメンタルヘルス対策では、相談窓口の設置など、気軽に悩みやストレスを相談しやすい環境整備を行いましょう。
ストレスやメンタル不調に関する相談は、身近な者同士、従業員間で取り組むこともできますが、弊社の外部相談窓口では、「相談できる人が周りにいないため相談した」という話をよく伺います。
人が人に相談する際は信頼関係が欠かせませんが、素っ気ない振る舞いなどが組織の中で常態化していると、人に相談することを躊躇してしまうのです。
アサーティブな関わり方や良好なコミュニケーション文化を職場内に醸成することで、困りごとがあった際に早急に対応し合える環境づくりができるようになりますが、社内の文化を急に変えるのは難しいでしょう
テレワーク中の従業員の不安やストレスを溜めさせないためには、社内にテレワーク専用の相談窓口を設置したり、外部の相談窓口を利用して、テレワーク中従業員が気軽に相談しやすい体制を作る必要があるでしょう。
教育・研修および情報提供
テレワーク中の従業員に対するメンタルヘルス対策を推進するには、産業保健スタッフからの健康教育や研修、メンタルヘルスに関する情報提供を随時行うことも必要です。
メンタルヘルス対策に関する基本的な情報や、セルフケアの具体的なやり方、メンタルヘルス不調を感じたときはどうすれば良いのかなど、事前に教育・研修および情報提供をしっかりと行っておくことが、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことにつながるでしょう。
ストレス対策
テレワーク中のメンタルヘルス対策としては、テレワーク中のストレスを解消するような福利厚生の導入も有効です。
例えば、テレワークによる運動不足を解消するための福利厚生として、スポーツジムなどの割引サービスを導入したり、気分転換を目的としたワーケーションを導入したりする企業も多いようです。
マニュアル作成・周知
テレワーク中のメンタルヘルス対策に関するマニュアルを作成し、従業員に周知することも有効です。
産業保健スタッフの助言を交えながら、企業担当者はメンタルヘルス対策に関するマニュアルを策定してみましょう。なお、策定後は、従業員がいつでも思い出せるように繰り返し周知することが大切です。
プライバシー、個人情報への配慮
メンタルヘルス対策においては、個人情報の扱いに関して細心の注意を払います。
日常的な雑談をはじめ、社内使用をしているイントラやクラウド共有のカレンダー、メールやSNSのツールなど、個人情報が漏れてしまう場面は無数に存在します。
産業保健スタッフなどの専門職は専門教育を受ける過程で倫理観を学びますので、その認識を他の従業員へ広く共有するなどしながら、適切な行動が取れるよう環境を整えましょう。
まとめ
テレワークにおけるメンタルヘルス対策はそれまでの対応と同様に、産業医や産業保健スタッフの助言を大いに活かすことが欠かせません。不明点は積極的に専門職へ確認し、前向きに取り組みたいものです。
「さんぽみち」を運営するドクタートラストでは産業医をはじめ、保健師の派遣も行っています。
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