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衛生委員会を初めて立ち上げる事業場の場合、最初に立ちはだかる課題は「衛生委員会のメンバーの人数は何人がいいのか、誰をメンバーにしたらいいのか?」です。
衛生委員会には、少なくとも5人の参加が必要で、それぞれに求められる役割は異なります。
今回は、従業員数が50名を超え、初めて衛生委員会を立ち上げる方に向けて、衛生委員会の構成メンバーなどをわかりやすくご説明します。
目次
衛生委員会を構成するメンバー、最小は5人
衛生委員会については、労働安全衛生法18条に定めが置かれています。
気になる「メンバーの構成」も以下のとおり労働安全衛生法18条2項に明記されています。
<衛生委員会>
第18条
(中略)
2 衛生委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員は、一人とする。
一 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者
二 衛生管理者のうちから事業者が指名した者
三 産業医のうちから事業者が指名した者
四 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者
出所:労働安全衛生法
つまり、衛生委員会には以下4つの役割を担う人が最低限必要ということです。
<衛生委員会を構成する役割> |
① 統括安全管理者、または事業場を統括管理する人、またはそれに準じる人 |
② 衛生管理者 |
③ 産業医 |
④ 労働者のうち、衛生に関して経験を持っている人 |
①の「統括安全管理者、または事業場を管理する人、またはそれに準じる人」は衛生委員会の議長となり、中立な立場で労働者側と事業者側の意見をまとめていきます。
④の「労働者のうち、衛生に関して経験を持っている人」は労働組合からの推薦などで選ばれ、労働者側として衛生委員会に参加します。
また、②は、「衛生管理者」の資格を持っている人になります。
ただ「衛生管理者」には、第一種衛生管理者と第二種衛生管理者の2種類があるのでご注意を。
第一種衛生管理者であれば、どのような業種でも企業の「衛生管理者」を担うことができる一方、第二種衛生管理者の場合は、一部の業種で衛生管理者になることができません。
詳しくは、以下の記事を参照ください。
これで①から④についておおむね理解できたことでしょう。
しかしここまでだと、「衛生委員会は4人でいいのかな」と思う方もいることでしょう。
忘れてはいないのは、企業側の人数≦労働者側の人数
実は労働安全衛生法には、求められる役割以外に、以下のように、構成の定めが置かれています。
<安全委員会>
第17条
(中略)
3 安全委員会の議長は、第1号の委員がなるものとする。
4 事業者は、第1号の委員以外の委員の半数については、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときにおいてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときにおいては労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならない。
5 前2項の規定は、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合との間における労働協約に別段の定めがあるときは、その限度において適用しない。
<衛生委員会>
第18条
(中略)
4 前条第3項から第5項までの規定は、衛生委員会について準用する。
出所:労働安全衛生法
つまり、「①統括安全管理者、または事業場を統括管理する人、またはそれに準じる人」以外の半数については、労働組合などの推薦に基づき選ばなくてはいけないということです。
「②衛生管理者」と「③産業医」については、事業者が選任します。
ということは、必然的に労働組合から推薦を受けた「④労働者のうち、衛生に関して経験を持っている人」を2名以上選ばなければこの条件を満たすことができません。
したがって、衛生委員会の最少人数は①~③を1名ずつ、④を2名の計5名です。
衛生委員会についてより詳しく知りたい方は、「さんぽみち」運営元のドクタートラストが作成している衛生委員会資料「衛生委員会について」を参照ください。
衛生委員会資料「衛生委員会について」(PDF)
よくある質問
ここで衛生委員会のメンバー構成について、企業からいただく質問を紹介します。
Q:衛生委員会は、産業医と衛生管理者、人事担当者の3人で行っていますが、問題ないでしょうか
A:問題、あります!
「④ 労働者の代表」が抜けてしまっています。
そもそも、衛生委員会は、職場の衛生に関する事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるための場でもあります。
労働者の代表が参加なくしては成り立ちません。
Q:産業医の先生はスケジュールが合わず、いつも不参加です。でも、しょうがないですよね。
A:しょうがないで済ませてはいけません!
産業医は、医学的な見地から必要があると認めるときは、事業者に対し労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができます。
そんな重要な役割を担った産業医が衛生委員会に参加しないことは、職場環境に関しての衛生対策を話し合う場としては不十分です。
「衛生委員会は法令で定められているから実施している」という形式主義になるのでなく、衛生委員会をきちんと運営することで、「職場の衛生環境の整備に役立てる。元気な社員を増やしていく」という考えで、衛生委員会を実施されてはいかがでしょうか。
おススメの衛生委員会のメンバー構成ベスト3!
冒頭にも書いたように、衛生委員会の最低人数は5人です。
しかしだからと言ってそれがベストメンバーとは限りません。
ここでは、おススメのメンバー構成をご紹介します。
事業場の規模に合わせて選びましょう。
1: 一般的な衛生委員会のメンバー構成(人数:9名)
議長(議決権なし:人事部長)
<使用者側> 人事課長(1名)、人事担当者(1名)、衛生管理者(1名)、産業医(1名)
<労働者側> 衛生管理などの経験がある労働者(4名)
2: 少人数の衛生委員会のメンバー構成(人数:7名)
議長(議決権なし:人事部長)
<使用者側> 人事課長(1名)、人事担当者(1名)、衛生管理者(1名)、産業医(1名)
<労働者側> 衛生管理などの経験がある労働者(4名)
3: 最小規模の衛生委員会のメンバー構成(人数:5名)
議長(議決権なし:支店長)
<使用者側> 衛生管理者(1名) 産業医(1名)
<労働者側> 衛生管理などの経験がある労働者(2名)
衛生委員会メンバー構成の注意点
<衛生委員会のメンバー構成で気を付けたいこと> |
メンバー構成は、労使同数の原則を守る必要があります。両方の人数が同じになるようにしましょう。 |
産業医は、原則、使用者側としてカウントします。 |
議長には、原則、議決権がありません。労使同数で対立した議案などの最終決定権があります。 |
議長には、責任者としての最終責任が生じます。 |
衛生委員会は人事部門内に設置しましょう
衛生委員会で付議した事項については、人事的な措置を機動的に発令できないと意味をなさないことが多いことから、人事権のある人事部内に設置することが望ましいと思います。
総務部が所管する場合、残業禁止や休業・復職などの辞令発令が遅滞し、問題となるケースが時折見られます。
また、労災の裁判では、「人事的な措置」が適切なタイミングで発令されていれば、「自殺を避けられた可能性がある」という言葉を頻繁に聞きます。
衛生委員会は、「人事的な措置」がとれる部門が所轄することが大切です。
初めて衛生委員会を立ち上げるとき、頼ってください
ドクタートラストでは、「衛生管理体制アドバイザリーサービス」として、初めて衛生委員会を立ち上げる事業場向けのサービスを提供しています。
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