産業医を選任したものの「スケジュールが合わない」「面談が形だけになってしまっている」「企業が行う施策に協力的でない」など、その対応への不満から変更や解任を考えている人事担当者の方も少なくありません。
しかし、そもそも産業医の変更・解任は契約中にも可能なのでしょうか。
また、次こそ親切な産業医を選任するにはどうすればよいのでしょうか。
この記事では、産業医の変更・解任の手続きや親切な産業医を選ぶ方法を解説します。
併せて、2026年8月1日から義務化された、産業医の辞任・解任時の労働基準監督署への報告についても触れていきます。
目次
産業医は契約期間の途中でも変更できる
結論として産業医の契約期間の途中でも変更・解任は可能です。
ただし、産業医が勧告や助言をしたことを理由に解任するなど、不利益な取扱いをしてはならないと定められています(労働安全衛生規則第14条第4項)。
また、産業医契約は企業ごとに異なるため、契約書面を確認し、解約の予告期間など変更・解任時の取り決めを把握しておく必要があります。
産業医紹介サービスを利用している場合は、まずはサービスの担当者に相談してみましょう。
変更を考える企業に多い産業医のトラブル
産業医との間に起こるトラブルとしては以下のものがあります。
産業医の業務を行わず、いわゆる名義貸しのような状態になっている場合はすぐに変更や解任を検討すべきです。
労働安全衛生法では、事業者は産業医を選任するだけではなく、労働者の健康管理などの職務を行わせることを義務付けています。
つまり、名義貸しは事業者側の法令違反であり、労働基準監督署の是正勧告の対象です。
選任義務違反には50万円以下の罰金が定められているほか、是正勧告に従わず悪質だと判断された場合は送検され、厚生労働省のWebサイトで企業名が公表されるリスクがあります。
法令違反ではなくとも、ストレスチェックの実施者など、事業場の産業医が務めることが望ましいとされている業務を断るケースや、コミュニケーションがスムーズに取れないなどのトラブルに頭を悩ませる企業担当者の方も少なくありません。
また、単純に産業医の専門分野が事業場の特徴と合っておらず、力をうまく発揮できていない場合もあります。
企業が選任すべき「親切な産業医」とは
では、企業が選任すべき「親切な産業医」の条件にはどのようなものがあるでしょうか。
企業との連絡や相談、職場巡視などの法定業務といった、基本的な業務を行ってくれることが最も重要です。
連絡のやり取りのなかで、企業の事情をくみ取りながら、健康管理業務に前向きに取り組んでくれる産業医であれば、従業員が健康に働ける職場づくりを支え、生産性の向上や人材の定着にもつながるでしょう。
また、面談の際に従業員が安心して相談できる産業医であれば、面談を通して企業への信頼感を高めることにも役立ちます。
「会社の言いなり」は親切ではない
注意してほしいのは、会社の言いなりになる産業医が親切というわけではないということです。
産業医は中立の立場で、医学的な知見に基づき、従業員の健康保持増進に向けたアドバイスを事業者と従業員の双方に対して行います。
例えば、休職・復職の判断や就業上の措置について意見を述べる際に、企業側に合わせるだけでは、従業員の健康を損なう恐れがあり、場合によっては事業者が安全配慮義務違反に問われる可能性があります。
事業場ごとの事情を理解した上で、医学的な立場から率直に意見を示してくれる産業医こそが、企業にとって本当に親切な産業医と言えるでしょう。
産業医の立ち位置については以下の記事で詳しく解説しています。
産業医を変更する手続き
STEP1 現在の契約内容を確認する
解約の予告期間や解約時の条件など、変更・解任に関する取り決めを契約書で確認します。
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STEP2 後任の産業医を探す
現任の産業医との契約期間中に、後任の産業医を探します。
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STEP3 現任の産業医に変更を伝える
後任が決まってから、現任の産業医に変更を伝え、解約の手続きを進めます。産業医が不在の期間をつくらないためです。
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STEP4 新しい産業医を選任する
産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任する必要があります。
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STEP5 労働基準監督署に報告する
新しい産業医の選任報告を、遅滞なく所轄の労働基準監督署に提出します。2026年8月1日からは、前任の産業医の辞任・解任についても報告が必要になりました。選任報告の際にあわせて報告できます。報告は電子申請が原則ですが、当分の間は書面での提出も可能です。
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STEP6 衛生委員会に報告する
産業医が辞任したとき、または産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨と理由を衛生委員会に報告します。
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STEP7 引き継ぎと従業員への周知
面談記録などを新しい産業医に引き継ぎ、産業医が変わったことを従業員に周知します。健康情報を含む記録は、取り扱いに注意しましょう。
注意点として、新たな産業医は、現任の産業医との契約期間中に探しましょう。
産業医は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任する必要があります。
先に解任してから慌てて探し始めると、産業医を見極める時間が足りません。
余裕をもって産業医選びは始めておくべきでしょう。
産業医の辞任・解任時の労働基準監督署への報告義務化
これまで、労働基準監督署への報告が必要なのは産業医を選任したときだけで、辞任・解任したときの報告義務はありませんでした。
しかし、労働安全衛生規則の改正により、2026年8月1日からは、常時50人以上の事業場で産業医が辞任・解任・退任した場合にも、労働基準監督署への報告が義務付けられました。
報告は、新しい産業医の選任報告とあわせて行えば、別途の報告は不要です。
選任報告の様式には、前任の産業医の氏名や、辞任・解任などの年月日も記載します。
なお、報告は電子申請が原則ですが、当分の間は書面での提出も認められています。
すぐに変更できない場合の対処法
もし、解約予告期間などによって、すぐに変更できない場合には、新たな産業医を追加で選任する方法があります。
コストはかかりますが、名義貸し状態に陥っている事業場の場合は、実際に業務を行う産業医をいち早く選任しなくてはいけません。
面接指導などの業務のみであれば、産業医へスポット契約で依頼することも可能です。
また、ストレスチェックの実施者などが必要な場合は産業保健師を利用するとよいでしょう。
ただし、高ストレス者の面接指導などは医師が行う必要があるため注意が必要です。
探した方法で「変更のしやすさ」は違う
産業医を選任する際には、産業医紹介サービスの利用や、地域の医師会への相談などいくつかの方法が存在します。
どの選任方法にもメリットがありますが、産業医を変更するのであれば、それぞれ「変更のしやすさ」が異なります。
依頼先ごとの特徴は、以下の記事で詳しく解説しています。
次は産業医選びで失敗しないために
新たな産業医を探すのであれば、選任前に必ず面談を行いましょう。
プロフィールを見るだけではなく、実際に会ってみることで、その人の持つ雰囲気や人柄が初めてわかります。
面談では、連絡の取りやすさや説明の丁寧さなど、先に挙げた「親切な産業医」の条件を満たしているかを確認しましょう。
その上で、自社に合うか、企業の抱える課題にマッチしているかを精査することが、産業医の選任には必要です。
再び産業医変更をしなければいけない事態を避けるためにも、慎重に検討しましょう。
産業医を選ぶ際の基準は、以下の記事で詳しく解説しています。
ドクタートラストは、3,100人以上の産業医登録数を誇り、企業ごとの事情に合わせた産業医を提案しています。
また、選任前の事前面談の実施を徹底しているので、実際の人柄を確認してからの契約が可能です。
企業の要望に応じて、交代や再提案にも対応しています。
万が一トラブルが起こった際も、産業医との間にスタッフが入って対応するので、言いにくい要望も直接伝えずに済みます。
お見積りは無料で行っておりますので、お気軽にお問合せください。
よくある質問
Q1. 契約期間の途中でも産業医を変更できますか?
契約期間の途中でも、産業医の変更・解任は可能です。ただし、産業医が勧告や助言をしたことを理由に解任するなど、不利益な取扱いをしてはならないと定められています(労働安全衛生規則第14条第4項)。解約の予告期間などの取り決めは契約ごとに異なるため、事前に契約書を確認しましょう。
Q2. 今の産業医に変更を伝えるのが気まずいのですが、どうすればよいですか?
後任の産業医を決めてから、契約書に定められた手続きに沿って伝えるのが基本です。産業医紹介サービスを利用している場合は、サービスの担当者を通じて伝えられることもあるため、まずは担当者に相談してみましょう。
Q3. 新しい産業医はいつまでに選任する必要がありますか?
産業医は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任する必要があります。先に解任してから探し始めると、産業医を見極める時間が足りなくなるため、現任の産業医との契約期間中に後任を探しておきましょう。
Q4. 産業医を変更したら、どこに報告が必要ですか?
新しい産業医を選任したら、遅滞なく所轄の労働基準監督署に選任報告を提出します。2026年8月1日からは、前任の産業医の辞任・解任についても労働基準監督署への報告が必要になりましたが、選任報告とあわせて行えば別途の報告は不要です。また、産業医が辞任したときや産業医を解任したときは、その旨と理由を遅滞なく衛生委員会に報告しなければなりません。
Q5. 紹介サービスで選んだ産業医が合わなかった場合はどうなりますか?
産業医紹介サービスの多くは、産業医の交代や再提案に対応しています。ただし、対応の範囲や条件はサービスごとに異なるため、契約前に確認しておきましょう。ドクタートラストでは、企業の要望に応じて交代や再提案に対応しています。
<参考>
厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案の概要について(産業医関係)」
鳥取労働局「産業医の辞任・解任等の報告について」
厚生労働省「労働基準関係法令違反に係る公表事案のホームページ掲載について」



