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妊娠中は疲れやすく、仕事に対するストレスもたまりやすい状況です。妊娠により体調を崩し休職を希望した場合、企業はどう対応すれば良いのでしょうか。
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この記事では、妊娠中に休職を希望する従業員の対応や診断書の必要性について解説します。
目次
妊娠を理由とする不利益な扱いやハラスメントは禁止
大前提として、妊娠を理由に不利益な扱いやハラスメントをすることは男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法にて禁止されています。
母体と胎児を保護する観点から、企業に対して妊娠中の従業員に対する配慮が義務づけられており、休業についても体や心に負担をかけない措置をとらなくてはいけません。
妊娠前の休業については母性保護規定により出産予定日の6週間前には取得できると定められていますが、妊娠中の労働は体力的にも精神的にも負担が大きく、6週間よりも前に休職を申し出る従業員もいるでしょう。
その際、企業は適切な配慮と措置を講じる必要があります。
妊娠中の従業員から休職の申し出を受けたらどうする?診断書は必要?
妊娠中の従業員から休職の申し出を受けた場合、出産6週間以前であれば診断書が必要です。しかし、母性健康管理指導事項連絡カード(母性連絡カード)があれば、従業員は診断書を提出せずに休職できます。
母性連絡カードの利用は、厚生労働省が発表した「妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」内で示されている、企業が講ずべき女性従業員への措置のひとつです。
医師からの勤務時間の短縮や休憩、休職などの指示を的確に事業者へ伝えるために用いられるツールで、母性連絡カードが提出された管理監督者や事業者はカードの情報をもとに適切な措置をとる必要があります。
母性連絡カードの提出がある場合の対応
従業員から母性連絡カードの提出があった場合、その記載内容に応じた措置を講じなくてはいけません。
適切な措置をしなければ20万以下の過料や企業名の公表といった罰則に加えて、もし労働者の体調が悪化してしまった場合、安全配慮義務違反に問われ、訴訟に発展する場合も考えられます。
具体的な措置については産業医と相談して決定し、不明点があれば主治医へ直接確認しましょう。
母健連絡カード利用に当たっての注意事項については、以下のサイトを参照してください。
厚生労働省「『母健連絡カード』の活用に当たって事業主の皆さまへ(PDF)」
母性連絡カードや診断書の提出がない場合の対応
従業員から母性連絡カードの提出がない場合、まずは母子連絡カードの存在を周知し、提出をするように促しましょう。
しかし、提出がない場合でも本人から申し出があり、主治医からの指示内容が明確であれば、就業上必要な措置を講じなくてはいけません。
具体的な措置については産業医の意見を参考にして決定し、必要があれば従業員を介して主治医の判断を求めましょう。
ただし、診断書や母子連絡カードなしでの自宅療養は欠勤扱いになってしまい、傷病手当が受け取れない点について周知しておく必要があります。
法改正などに素早く対応することが重要
こうした妊娠中の従業員の対応は、法令や厚生労働省の指針によって定められています。
しかし、働き方改革が叫ばれる現代において、こうした法令はめまぐるしく変わっていくため、知らず知らずのうちに法令違反を犯してしまっているケースもすくなくありません。
こうした事態を防ぐためにも、常に労働安全衛生関連の法令にはアンテナを張っておく必要があります。
ドクタートラストでは、メルマガを登録していただいた方へ向けて、厚生労働省からの重要な発表や法改正があったタイミングでお知らせを行っています。
産業保健関連の最新情報をお届けしているので、いち早く対応が可能です。
妊娠中の従業員に対して休職以外で配慮すべき措置とは?
妊娠中の従業員に対しての措置は休職だけではありません。業務を続けるために必要な通勤や業務時間に関する配慮も、男女雇用機会均等法にて義務づけられています。
第13条 事業主は、その雇用する女性労働者が前条の保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするため、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない。
出所:雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
こうした措置については産業医や産業保健師による専門的な意見が重要であり、産業保健スタッフとの連携が重要になってくるでしょう。
では、具体的にはどのような措置がもとめられるのでしょうか
通勤緩和の措置
妊娠中の満員電車はつわりの悪化や胎児への悪影響の可能性があるため、従業員が通勤時の混雑を避けられるように配慮しなくてはいけません。
具体的には以下の措置が考えられます。
・フレックスタイム制度の利用
・勤務時間の短縮
・混雑の少ない経路への変更
休憩に関する必要な措置
妊娠中は急な体調の変化も多いため、通常のまとまった休憩だけでは対応できない場合がほとんどであり、休憩に関する配慮が必要です。
主な休憩措置としては以下のものがあります。
・こまめな休憩
・休憩時間帯の変更
業務の制限措置
体や精神に負担の大きい作業は母体と胎児に悪影響を及ぼしかねないため配慮が必要です。
負担の大きい作業としては以下の業務があります。
・階段の昇り降りや連続した歩行が頻繁にある業務
・全身の運動をともなう業務
・つらい体制を強制させる業務
こうした業務内容における配慮については、出産後1年間は継続して対象になります。
妊娠中の従業員をサポートするために
今回は、妊娠中の休職対応ついてわかりやすく解説しました。
女性が安心して働きながら妊娠や出産、育児できる環境の整備は、少子高齢化が止まらない日本にとって、非常に重要な取り組みのひとつです。また、企業にとっても労働力の確保というメリットがあります。
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<参考>
・ 厚生労働省「妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」
・ 厚生労働省「母性健康管理指導事項連絡カード(PDF)」
・ 厚生労働省 妊娠・出産をサポートする女性に優しい職場づくりナビ「母性健康管理指導事項連絡カードについて」
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