現在では50人以上の事業場でストレスチェックの実施が義務となっています。
では、事業場の人数が50人に満たない場合はストレスチェックを実施する必要はないのでしょうか。
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この記事では、50人未満の事業場でストレスチェックをする必要性やそのメリットを解説します。
目次
50人未満の事業場は「義務」ではなく「努力義務」
50人未満の事業場においてストレスチェックの実施は「努力義務」です。
これは、厚生労働省が配布しているストレスチェックに関する資料にも記載されています。
※従業員50人未満の事業場については当分の間、努力義務です。
出所:厚生労働省「事業者ならびに産業保健スタッフの皆様へ」
努力義務とは、法令上で「するように努めなければならない」「努めるものとする」などと規定されている行為です。
義務ではないため、もし違反したとしても罰則はなく、当事者の取り組みを促すために定められています。
つまり、法的な拘束力もなく、「努力していないこと」に対する罰則もありません。
そのため、50人未満の事業場ではストレスチェックを実施していない場合がほとんどです。
厚生労働省による2021年の労働安全衛生調査(実態調査)から、独自に50人未満の事業場でのストレスチェック実施率を算出したところ以下の結果がでました。
事業場の人数 | 10~29人 | 30~49人 | 50人以上 |
ストレスチェックを実施している事業場の割合 | 約26.6% | 約44.8% | 約90.2% |
50人以上の事業場での9割を超えるストレスチェック実施率と比べて、50人未満の事業場では5割を下回っており、ストレスチェックが社会全体に浸透しているとは言い難い状況をあらわしています。
50人未満の事業場でもストレスチェックを実施したほうがいい?
結論から言えば、50人未満の事業場でもストレスチェックの効果は十分にあるため、実施することをおすすめします。
そもそもストレスチェックは、メンタルヘルス不調の防止を目的としています。
ストレスチェック制度は、労働者のストレスの程度を把握し、労働者自身のストレスへの気づきを促すとともに、職場環境改善につなげ、働きやすい職場づくりを進めることによって、労働者がメンタルヘルス不調となることを未然に防止する一次予防を主な目的としています。
出所:厚生労働省「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」
そして、メンタルヘルス不調の予防は精神疾患による労災の防止につながります。
精神疾患による労災は現在まで、右肩上がりで増加を続けており、社会全体で解決すべき問題です。
事業場の規模にかかわらずメンタルヘルス不調は起こります。
そして、50人未満の事業場では一人ひとりの業務の負担が重い場合が多く、メンタルヘルス不調に陥っているにもかかわらず、無理をして働いてしまうことが多いのです。
その結果、メンタルヘルス不調が悪化し、適応障害やうつを発症してしまう可能性があります。
精神疾患は完治が難しく、労働者のライフプランに大きく影響します。
また、長期の休職や退職につながるケースが非常に多いため、企業運営へのダメージは避けられません。
労働者の健康を守り、企業の健康的な運営を目指すなら、企業の規模にかかわらず、ストレスチェックが大きな効果を発揮するでしょう。
50人未満でもストレスチェックを実施するメリットは?
では、50人未満の事業場でストレスチェックを実施するメリットにはどんなものがあるのでしょうか。
ストレスチェックの具体的なメリットについて解説します。
自身のストレスへの気づきを促してセルフケアにつながる
ストレスチェックの大きな目的は、自身のストレスへの気づきを促す点にあります。
ストレスは目に見えないため、自分が今どれだけストレスを抱えているかを測る手段がありません。
そのため、気がつかないうちにストレスがたまってしまい、症状があらわれたときには専門機関の診療や休職、退職を含めた就業上の措置が必要な状態になっている場合も少なくありません。
ストレスチェックによって自分のストレスに気がつくことで、自分自身でのケアを行うことができます。
自分でストレスに気がつきコントロールができれば、メンタルヘルス不調の予防が可能です。
そのために、併せてセルフケアの方法を学ぶためのセミナーを実施すると、より効果が期待できるでしょう。
高ストレス者を見つけて対応ができる
ストレスチェックによって高ストレス者をみつけることができれば、精神疾患を発症する前に対応することができます。
ストレスは自分で気がつきにくく、他人が発見するのも困難です。
ストレスチェックを実施すれば、事業場で高いストレスを抱えている、またはストレスを感じやすい状況に晒されている労働者を浮き彫りにすることができます。
こうした労働者に産業医面談などの対応を実施すれば、精神疾患の発症を抑制できるでしょう。
注意点として、「高ストレス者となったからといって産業医面談を強制できるわけではない」ということを覚えておきましょう。
あくまで、高ストレス者へ産業医面談を実施するのは本人の希望があった場合です。
職場改善につながる
ストレスチェックの結果から集団分析を実施すれば、ストレス傾向などが明らかになり、効果的な職場改善が可能になるでしょう。
50人未満の事業場でのストレスチェックと同じく努力義務にとどまっていますが、集団分析の実施は非常に効果的です。
集団分析では、事業場のある一定の集団(性別、年齢層、職場など)ごとにストレスチェック結果を分析し、集団ごとのストレス傾向を明らかにします。
これにより、事業場内でストレスを感じている集団が明らかになるため、的確で効果的な職場環境改善が実施可能です。
50人未満の事業場がストレスチェックを導入する場合の流れ
ストレスチェックを実施するのであれば、産業医の選任が必要です。
事前準備から検査後の事後措置まで、ストレスチェックにおいて産業医の担う役割は非常に大きいため、まずは企業にあった産業医を選任する必要があります。
産業医の選任後のストレスチェック導入の流れは以下のとおりです。
↓
ストレスチェックの社内周知
↓
ストレスチェック実施
↓
産業医面談の実施
↓
集団分析と職場環境改善
↓
結果報告と改善
実際にストレスチェックの受検にかかる時間は数分です。
しかし、事前準備から高ストレス者への対応、集団分析からの職場環境改善までを含めると数ヶ月必要であり、計画的な実施が欠かせません。
また、導入には専門的な知識が必要な場合が多く、ほとんどの企業では外部サービスを利用しています。
詳しいストレスチェック導入の流れについては以下の記事で解説しています。
まとめ
今回は、50人未満の事業場でのストレスチェックについてわかりやすく解説しました。
ストレスチェックは事業場の規模にかかわらず、労働者の心の健康を守るうえで非常に重要な役割を担います。
現在は50人未満の事業場でのストレスチェックは努力義務にとどまっていますが、今後義務となる可能性も十分にあるため、導入を検討してみてはいかがでしょう。
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