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産業医面談を受けなくてはいけないと言われると「どんな人と何を話すのだろう」と不安になる人が少なくありません。
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今回は、産業医がどのような資格を持っていて、どのような役割を果たす人なのか、わかりやすく解説します。
目次
産業医ってどんな人?産業医に必要な資格要件
まずは産業医が何をする人か、どのような資格を持てば産業医になることができるのかを解説します。
産業医とは
産業医とは、医学的な立場から労働者の健康保持増進や職場環境の改善などについて助言する医師のことで、従業員数50名以上の事業場では選任が義務づけられています。
労働安全衛生法
13条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
医師との違いについて
医師との大きな違いは治療行為ができるかどうかです。
病院などの医療施設に勤務する医師は、来院した患者に対して治療施すのが仕事です。
しかし、産業医は企業で働く労働者の健康管理が主な業務であり、治療行為を行うことができません。
つまり、通常の医師はすでに体調を崩している人へ治療や検査を実施するのに対して、産業医が行うのは未然防止であり、健康な人に対してもアプローチしていく必要があるという点が医師との大きな違いです。
産業医に必要な資格要件
産業医は医師であれば誰でもなれるわけではなく、労働安全衛生法13条に定めがあるとおり、必要な医学的知識を備えるなど、一定の資格要件が必要です。
労働安全衛生法
13条
2 労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識について厚生労働省令で定める要件を備えた者でなければならない。
具体的には、産業医は以下のどれかを満たした医師でなくてはなりません。
② 労働衛生コンサルタント試験(保健衛生)に合格した者
③ 大学において労働衛生を担当する教授、助教授、常勤講師職にある者(または、あった者)
④ 産業医科大学を卒業
以下では特に①、②についてもう少し詳しくみていきます。
日本医師会の研修とは
日本医師会の「産業医学基礎研修」は、産業医になるために必要な資格要件のうち「厚生労働大臣が定める研修」の一つで、所定のカリキュラムに基づく産業医学基礎研修50単位以上を修了した医師などに日本医師会認定産業医の称号を付与し、認定証を交付しています。
認定証の有効期間5年間で、産業医学生涯研修20単位以上を修了することで更新できます。1時間の研修が1単位とされています。
詳しい研修内容は、日本医師会のサイトを参照ください。
日本医師会 全国医師会産業医部会連絡協議会「日本医師会認定産業医制度」
産業医科大学の産業医学基本講座とは
産業医科大学の「産業医学基礎研修会」とは、産業医になるために必要な資格要件のうち「厚生労働大臣が定める研修」の一つで、産業医科大学が実施しています。
産業医科大学の位置する北九州で、毎年夏に短期集中型で行われます。
このほかに、東京都内で産業医科大学と日本医師会が主催する同様の研修が実施されています。
なお、産業医科大学は産業医の要請を目的としている大学で、医学部卒業生は医師免許取得と同時に、産業医資格を取得しています。
詳しい内容は、学校法人産業医科大学のサイトを参照ください。
労働衛生コンサルタントとは
労働衛生コンサルタントは、労働者の安全衛生水準の向上のため事業場の診断・指導を行う国家資格(士業)です。
試験は「保健衛生」と「労働衛生工学」の2区分に分かれています。
ただし、業務の実施に当っては特に制限されるものではなく、保健衛生は健康管理面から、衛生工学は環境管理面からのアプローチを得意分野としています。
また保健衛生区分で労働衛生コンサルタントの資格を取得した医師は産業医になることができます。
産業医は必要?産業医の重要性
「産業医なんて本当に必要なの?」と考える事業者の方もいらっしゃるでしょう。
しかし、最近ではメンタルヘルス対策の観点などから、特に産業医の重要性が増しています。
産業医の職務は、労働安全衛生規則14条1項で定められており、以下に携わります。
① 健康診断の実施、および結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
大企業では産業医自身が健康診断を実施する場合もあるのですが、外部の健診機関を利用することがほとんどでしょう。
そのため、産業医は健康診断の事後措置のみ行うのが一般的です。
具体的には、健診機関の受診勧奨や、大きな疾患がみつかった労働者と面談し業務上の措置などについての提案を行います。
② 面接指導、必要な措置の実施、結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
③ 心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)の実施、面接指導の実施、結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
④ 作業環境の維持管理に関すること。
⑤ 作業の管理に関すること
⑥ 労働者の健康管理に関すること。
①②③ともに健康管理ではあるのですが、それ以外の労働者の健康管理にかかわる業務もすべて産業医の業務です。
近年は新型コロナウイルスの流行に伴い、感染症対策も産業医の重要な業務のひとつになりました。
また、健康管理にはメンタルヘルスケアも含まれます。
⑦ 健康教育、健康相談、その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること
自身の健康に不安を感じている労働者へ健康相談や健康教育を実施するのも産業医の仕事です。
たとえば、生活習慣病予防や感染症予防などのセミナーを実施して、労働者の健康に対する意識の向上を図ります。
また、喫煙に関する指導も産業医の重要な業務のひとつです。
⑧ 衛生教育に関すること
産業医は労働衛生教育に関することも行います。
衛生教育とは、職業病を防ぐため、または心身を健康な状態に保つための知識や方法を伝えることです。
具体的には、ストレスや自殺、ハラスメントに関するセミナーなどを行い、労働者が自分自身の健康を守れるように教育していきます。
⑨ 労働者の健康障害の原因の調査および再発防止のための措置に関すること
労働者がなんらかの健康障害を発症した場合、その原因を調査し再発防止を行うのも産業医の業務です。
たとえば、うつなどの精神障害を発症し、休職した労働者がいた場合は、ハラスメントや職場環境の問題の有無を調査し、必要があれば改善のための意見を事業者に行います。
また、労働者に対しても配置換えや時短勤務の提案、定期的な面談などの再発防止策を実施します。
常時雇用する従業員数50人以上の事業場では産業医の選任が義務付けられています。
また、従業員数1,000人以上(有害業務を行っている場合は500人以上)の事業場では専属の産業医1人、3,000人以上の事業場では専属の産業医2人が必要です。
産業医には、従業員の身体的・精神的な健康を保持増進するために、健康教育や健康相談などの予防から面接指導や意見といった措置まで、従業員の健康を幅広く支援する役割を持っています。
産業医の役割については以下の記事も参考にしてください。
ストレスチェックの産業医面談では何を話せばいい?
ストレスチェックの産業医面談とは、産業医と高ストレスと判定された労働者と産業医が1対1で面談を行い、産業医が実際の仕事の状況などを聞き取りながら、高ストレス者にアドバイスをするものです。
ストレスの持続期間(ストレスを感じるか否か、感じたときはどれくらい続くか)、ストレスによる症状の程度、仕事上の悩みや苦痛、仕事や生活への支障、さらには健康状況や生活状況(アルコール、たばこ、運動、食習慣、睡眠など)について変化はなかったかなど、産業医から質問がありますので、ありのままを答えましょう。
また、産業医面談で相談した内容は、本人の同意なく、産業医が会社側に伝えることはありません。
そのため、ストレスの原因について思い当たることがある場合は、産業医面談で相談するとよいでしょう。
産業医は、面談内容などをもとに、就業上の措置の必要性の有無などを会社側に意見します。
ストレスチェックの産業医面談については以下の記事も参考にしてください。
まとめ
今回は産業医がどんな人か、産業医になるための資格要件などについてわかりやすく解説しました。
「さんぽみち」を運営するドクタートラストでは、企業ごとのご要望の沿った経験豊かな産業医を紹介できます。
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